10年で全国の4分の1が閉店…苦境の「百貨店」 人口14万人、同じ商圏内で2店舗ともに生き残る「鳥取県米子市」の場合

1月14日、島根県唯一のデパート・一畑百貨店が、惜しまれつつも閉店しました。
全国的に百貨店業界が苦境に立たされるなか、今回取材班は鳥取県米子市で営業を続ける2つの百貨店の生き残りをかけた戦略に迫りました。

「一畑百貨店、閉店致します。長い間、有難うございました」

1月14日。
島根県松江市で営業を続けてきた「一畑百貨店」が、65年の歴史に幕を下ろしました。
ピーク時の2002年には108億円の売上高を記録しましたが、大型ショッピングモールの出店やネット通販の台頭、コロナ禍による影響などで業績が悪化。
閉店を余儀なくされました。

百貨店の閉店は全国で相次いでいて、2013年に242あった店舗数は、2023年には180まで減少しています。

そんな苦境の中・・・

小林健和 キャスター
「厳しい状況にある百貨店業界ですが、実は米子市では今でも2つの百貨店が存続しています。人口10万人台の自治体で百貨店が2店舗あるというのは、全国でもかなり珍しいんです」

現在、鳥取県米子市には「米子天満屋」と「JU米子高島屋」があります。
日本百貨店協会によると、人口10万人台の自治体に百貨店が2店舗存在しているのは、米子市と東京・立川市のみ。
なぜ、同じ商圏内で2店舗ともに生き残ることができているのでしょうか?

まず訪れたのは、米子天満屋。

コロナ禍もあり売り上げ低迷が続いていましたが、アフターコロナで反転攻勢をかけます。

その1つが・・・

この年末年始に期間限定でオープンした「ポケモンセンター出張所」。
米子市初開催となるイベントで、若年層や親子3世代での来店を促そうと誘致しました。

米子天満屋 槙野博通 取締役店長
「ポケモンセンターをやっているときには、前年同月比10パーセント以上の入店増ということで、年末年始・クリスマスと、我々としては一番多くのお客様にご来店いただきたい時期だったので、すごくプラスになりました」

狙いはズバリ「客層の若返り」。
こうした単発のイベントだけでなく、新たな施設もオープンさせました。

米子天満屋 槙野博通 取締役店長
「ファミリーや3世代で来ていただいてより店の中の滞留時間を長くすることで、いろいろなプラス効果を生んでいきたいということで導入しました」

12月8日、2階フロアにオープンした室内遊園地「The Kids」。
子どもが楽しめるのはもちろん、保護者もゆったりくつろげるようにマッサージチェアを設置するなど、家族全員が楽しめる空間になっています。

利用した家族連れは
「大満足で、予想以上に楽しくて、ずっと1日いられる感じ」
「初めて来ました。楽しい!」
「食事とかもできたりするので、午前中から長く遊んでいます」

米子天満屋 槙野博通 取締役店長
「百貨店の良さを残しつつも進化をしていかないと、なかなか時代に対応できていかないと思うので、これまでと違う百貨店像を従業員一丸となって考えていき、実現していきたいです」

かわっては、今年開店60周年を迎えるJU米子高島屋。
角盤町という中心市街地に位置している「地の利」をいかした戦略で生き残りを図ります。

米子高島屋 森紳二郎 代表取締役社長
「百貨店という名前ではあるんですけれど、全体を“百”とすればうちだけでは半分くらいの品ぞろえしかないと思っています。その“ない部分”を、地域全体で補って“百”になるような地域にしたい、というのが大きな目的です」

掲げるのは、米子高島屋を中心とした半径2キロ圏内に、生活に必要なモノや機能が全て揃う「コンパクトシティ」構想。

高島屋の旧東館があった場所に2019年にオープンした複合施設「GOOD BLESS GARDEN」はじめ、商店街なども一体となりそれぞれにないものを補い合い、地域全体で売り上げアップを狙います。

さらに、近くにある駐車場で地ビールフェスタなど定期的なイベントを開催。
人が集まりやすい環境づくりを進めています。

米子高島屋 森紳二郎 代表取締役社長
「60年間この地域で商売させていただいているので、ここに来れば何か楽しいものがあるような場所に、地域にしていければと思っています」

苦しい状況ながら奮闘が続く、山陰地方の百貨店。

鳥取大丸から生まれ変わり1年以上経った、鳥取市の「丸由百貨店」では、去年若者に人気の「ロフト」が
オープン。
こちらも客層の若返りをはかって試行錯誤を重ねています。

苦境が続く百貨店業界。
それぞれの地域を盛り上げていくためにも、生き残りをかけた模索が続いていきます。

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