連載『lit!』第87回:僕が見たかった青空、高嶺のなでしこ、FES☆TIVE……2024年ブレイク必至のグループ

毎年のように新しいアイドルグループが誕生し、新陳代謝を繰り返しているアイドルシーン。昨年は2022年に結成されたFRUITS ZIPPERが『第65回輝く!日本レコード大賞』最優秀新人賞を受賞したことが大きなトピックとなったが、今年はどんなアイドルが台頭してくるのだろうか。本稿では2024年の注目アイドルとして5組を紹介したい。

■僕が見たかった青空「卒業まで」

昨年8月に“乃木坂46の公式ライバル”として1stシングル『青空について考える』で晴れやかなデビューを飾った僕が見たかった青空。デビュー曲はグループ名にある青空をイメージさせる爽やかな青春ソングだったが、今作表題曲は世界観を大幅に変えた切ない卒業ソングに。卒業式までの感情の変化を歌った秋元康らしい叙情的なリリックと感傷的なサウンドも合わさって感情を刺激する一曲で、この季節に聴くとなんとも味わい深い。それだけではなくMVではメンバーが切ない表情を見せており、前作の明るい彼女たちを知っている方からすると、その表情の変化に驚くかもしれない。また本作から選抜制も取り入れられている。表題曲を歌うのは“青空組”と呼ばれる12人の選抜メンバーで、選抜以外のメンバー11名は“雲組”として活動。『TOKYO IDOL FESTIVAL 2023』のステージではまだあどけなさが残るパフォーマンスだったが、本作では“乃木坂46の公式ライバル”というキャッチコピーに違わないパフォーマンス力の高さを見せている。2024年ブレイクの筆頭候補だろう。

■高嶺のなでしこ「美しく生きろ」

2024年2月21日に満を持してメジャーデビューを果たす高嶺のなでしこにも注目したい。2022年にJDOLオーディションで選抜された7人と、元ラストアイドルの3人で結成され、HoneyWorksサウンドプロデュースによる音楽性の高さとパフォーマンス力で存在感を発揮していた彼女たち。「アンチファン」(2022年)の強烈な歌詞も衝撃的だったが、一方でHoneyWorksのカバー曲「可愛くてごめん」のMVがバズるなど、幅広い世界観で楽しませてくれていた。メジャーデビューシングル曲「美しく生きろ」はアイドルとして生きていく決意を高らかに宣言した一曲。〈アイドルよ 全力見せろ アイドルよ 答え続けろ〉といった訴えかけるメッセージ性は、高嶺のなでしこの高い表現力がしっかりと担保されているからこそ強く響く。アイドルイベントでトリを務めることも発表されているように、すでに注目度は高い。メジャーデビュー前にしてここまで完成された世界観を作り上げられるとは見事である。

■FES☆TIVE「コズミック祭大革命」

昨年5月にI MY ME MINEメンバーだった本多しおりが加入し、新体制としてますます熱量を高めているのがFES☆TIVE。昨年もまたアイドルシーンをお祭りムードに染め上げてくれた彼女たちだが、新曲「コズミック祭大革命」はこれまでのFES☆TIVEらしさを踏襲しつつ、新しいお祭り感を届けてくれるアッパーチューン。ここ最近はIMAKISASAと玉屋2060%といったお馴染みの制作陣が続いていたが、本作では「色違いサンダル」や「アンダルサイトダンス」なども手掛けたMedansyが初めて表題曲を担当した。イントロの盛り上がりからすでにライブでは欠かせない楽曲になっていきそうな予感がする。〈終わらない祭りいつまでも 繋げ!繋げ!想いを〉といったグループの歴史を感じさせる歌詞にも注目だ。もはや2024年注目のアイドルグループと言うのが失礼なくらいであるが、2024年もまたFES☆TIVEの宴が始まろうとしている。

■わーすた「えいきゅーむちゅーでこうしんちゅっ!♡」

前作「メロメロ!ラヴロック」から一転して、王道アイドルソング「えいきゅーむちゅーでこうしんちゅっ!♡」をリリースするわーすた。昨年は生バンドライブ『The World Standard~史上最高の恋しよう?~』を始め、『わーすたワンマンライブin沖縄』や『わーしっぷ大感謝祭2023』といった恒例のライブイベントを開催してきた。今作は久しぶりのキュートな表題曲となっており、可愛らしいセリフパートでは一人ひとりの表情にも注目だ。4人体制となってから2年が経ち、すでに4人でのステージは見慣れてきたが、ライブを観る限りでは日に日にパフォーマンスに磨きがかかっており、どこまで進化し続けるのか考えるだけで末恐ろしい。かわいいもかっこいいも表現できるわーすたの表現力にはいつも驚かされる。3月には9周年ライブも控えており、10年目に向けて勢いづく彼女たちのパフォーマンスの真価をこの楽曲で確かめてほしい。

■ドラマチックレコード「君はソナチネ」

2022年、「心揺さぶるドラマチックポップカルチャー」をコンセプトに結成されたドラマチックレコード。結成時からのメンバーである白鷺あいらが卒業、金子いちかが加入し新体制となったドラマチックレコードは、昨年『TOKYO IDOL FESTIVAL 2023』に初出場を果たすなど、今ホットなアイドルグループと言っていい。そんな彼女たちの1stシングル曲「君はソナチネ」はステージに立つアイドルとファンの信頼関係を歌った楽曲。〈もしも 君が嬉しい時には 僕も同じ気持ちだよ 喜びはユニゾンして 共鳴してく周波数〉という歌詞はアイドルとファンの切っても切れない関係性をリアルに描いている。MVもまさにアイドルとファンの関係を描いており、アイドルファンならば共感できるはず。現在は大阪・福岡・神奈川・名古屋・仙台・東京・札幌の7都市を巡るツアーを開催中。2024年の夏を盛り上げてくれるのは彼女たちかもしれない。

(文=川崎龍也)

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