【解説・前橋市長選】 独自色発揮し変革を

 市政刷新を掲げ「初の女性市長」の誕生を訴えた新人の小川晶氏(41)が激戦を制し、初当選を果たした。選挙戦を通じてアピールした若さや行動力に、市民が期待を託した結果と言えるだろう。

 ただ、選挙戦は互いの公約に共通点が多く明確な争点が乏しかった。小川氏の主張も「しがらみのないクリーンな市政」「多選の禁止」といった現職を意識したイメージ戦略が目立ち、政策や市の将来像を巡る論戦が繰り広げられたとは言い難い。

 また、小川氏は進行中の中心市街地再開発やデジタル化、交通弱者向け移動支援などを踏襲し、一部を拡充する考えを示している。山本市政の事業を引き継ぎつつ、いかに独自色を発揮して変革を進め、停滞感を払拭してほしいと一票を託した有権者の思いに応えるのか手腕が問われる。

 市議36人中26人が相手陣営を支援しただけに、市議会との丁寧な意思疎通も求められる。禍根を残していては安定した市政運営は見通せないだろう。

 市人口の減少や高齢化に伴う活力低下などに歯止めをかけるには、子育て支援や若者の流出抑制、魅力ある産業創出、移動支援といった複合的な政策が欠かせない。女性や若者を含めた幅広い層の声に耳を傾け、県都に新たな風を吹き込んでほしい。

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