『さよならマエストロ』石田ゆり子が妻の本音を激白 西島秀俊、玉山鉄二と三角関係に

2月4日放送の『さよならマエストロ~父と私のアパッシオナート~』(TBS系)第4話では、恋のさや当てがオーケストラの屋台骨を揺るがせた。

第2話の「ウィリアム・テル序曲」に続いてロッシーニの「セヴィリアの理髪師」を取り上げたことで、夏目俊平(西島秀俊)が名指揮者クラウディオ・アバドのようにロッシーニ好きである可能性が浮上した第4楽章。「セヴィリアの理髪師」はボーマルシェによる「フィガロ三部作」の一つで、理髪師のフィガロが恋する男女の仲を取り持つ。

『さよならマエストロ』で、男女の三角関係は俊平と妻の志帆(石田ゆり子)、晴見フィル団長でファゴット奏者の古谷(玉山鉄二)が奏でる。5年間、夫と会っていない妻に恋心を抱いてしまった中年独身の市役所職員は、妻の指図で夫を市民オーケストラに招いたまでは良かったが、海外にいるはずの妻が身バレしてしまったからさあ大変。間男と復縁を迫る夫が、妻を挟んで右往左往する。

大人の恋と聞くと上品で落ち着いた紳士淑女のたしなみと思いきや、実際は地獄絵図であることをスキャンダルを見慣れた私たちは知っている。巻き込まれた当人は必死だが、周囲から見るとこっけいでその様子は喜劇そのものだ。妻の相手を知りたい俊平、志帆との仲を隠したい古谷、あわてる男たちをよそに夫に三行半を突き付ける志帆。フルートの瑠李(新木優子)も加わって事態は錯綜する。

話がしたいと呼び出された志帆は、家族をやり直そうという俊平に「あなたって人は周りの人をマネージャーにする」「あなたの本質には自分の芸術のためなら他を犠牲にしてもかまわないっていう傲慢さがある」と辛らつな言葉を浴びせた。妻として母として家族を支えた年月、志帆は画家のキャリアを棒に振り、5年前の出来事で夫婦のすれ違いは決定的となった。

志帆の言葉は強烈だが同じように感じている人は多いと思われる。世の夫・父なら襟を正して日頃の言動を振り返らずにいられないはずだ。音楽と自由にたわむれる俊平が、家族とコミュニケーションを取れていなかったこと。響(芦田愛菜)の事故以来、自分の殻に閉じこもって向き合おうとしなかった。時すでに遅く、志帆に俊平とやり直す気はなかった。

望みが絶たれた夫は狂おしいほど心が乱れ、すぐさま不調を来たすところは素直でかわいらしい。そんな母性本能をくすぐる無防備さが志帆の悩みの種だったわけだが。二朗(西田敏行)から志帆の相手が晴見フィルのメンバーと聞かされた俊平は、疑心暗鬼になって指揮棒を振る手にも余計な力が入る。そこでくだんの「セヴィリアの理髪師」となる。

「音に乱れが出てたら、そいつがカミさんの間男だよ」

演奏そっちのけで団員の顔を見入るマエストロ俊平と、言葉は伝わらなくても視線を交わす団員たちのやり取りがおもしろいのなんの。目は口ほどにものを言うが、最後の最後に自白してしまった古谷は、まんまと二朗の嘘発見器に引っかかったことになる。晴見フィルの救世主である俊平の顔を立てつつ志帆とうまく行くことを望む古谷は、悪びれないのに誠実でいたいと願い、なおかつ体面を保とうとする姿がリアルだ。大人同士の色恋沙汰は分別があるから余計みっともなく、味わい深いことを伝えていた。

今作を面白くしているキャストの一人が玉山鉄二で、既視感のある地方公務員になりきっている。実家の床屋「フィガロ」で俊平と出くわした際のずっこける動作など芸の細かさはさすがだ。『さよならマエストロ』第4楽章は俊平を知る新キャラの登場もあり、喧騒の中で幕を閉じた。二朗は古谷と志帆の関係を知って渦中の男女を集めたわけで、策士二朗の狙いが的中するか注目である。

(文=石河コウヘイ)

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