【2024年F1全チーム展望:ハース】小松代表ならではの組織改革。アップデート効率化のための体制構築で再生目指す

 2024年F1シーズンに向けて、各チームが新車発表会を行う時期を迎えた。プレシーズンテスト前のため、ニューマシンのカラーリング披露にとどまる場合もあるが、発表会において明かされる事実、首脳陣のビジョンなどから、見えてくるものは多い。この連載では、各チームの2024年発表会で披露されたニューマシンとチーム体制についてまとめる。今回はハースとその新車『VF-24』を特集する。

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 2024年シーズンも、10チームの先陣を切って新車をお披露目したのは昨年同様、ハースだった。ただし、これは2024年の実車ではなく、レンダリング画像による新カラーリングの公開だった。

 ハースは昨年の新車発表でもまずカラーリングのデジタル画像をリリースし、ファクトリーがあるイギリス(シルバーストン・サーキット)でシェイクダウンを行い、プレシーズンテストの地であるバーレーンへ向かった。

 今年もすでに2月11日にシルバーストンで新車を走行させることを明らかにしており、2024年の新車『VF-24』がどのようなものになるのかは、現時点ではベールに包まれたままだ。

ハースF1の2024年型マシン『VF-24』のカラーリング(フロント)

 その一方で、昨年までチーム代表を務めていたギュンター・シュタイナーに代わって、新たにチーム代表となった小松礼雄体制については少しずつ明らかになっている。

 まず、テクニカルディレクターだ。2021年にフェラーリからハースに移籍し、昨年までテクニカルディレクターを務めていたシモーネ・レスタが去り、アンドレア・デ・ゾルドが後任を務めることとなった。

 デ・ゾルドは、レスタと共に2021年にフェラーリからハースに加わり、昨年までチーフデザイナーを務めていた人物。つまり、チーム創設以来続けているフェラーリとの技術的な提携を活用したマシン開発は今後も継続するようだ。

ハースF1チームの新テクニカルディレクター、アンドレア・デ・ゾルド(ハースF1)

 今回の組織改革の目的はマシン開発の方向性を変えるためではなく、スタッフの能力を最大限活用するためだと思われる。フェラーリで要職を務めたこともあるレスタが入ったことで、開発部門は強化された一方で、ここ数年のハースは開発部門と現場のコミュニケーションが必ずしも良好ではなかった可能性がある。

 そのことが如実に現れていたのが、シーズン中のアップデートだ。ハースはシーズン序盤と中盤にアップデートを予定していたが、風洞実験で期待どおりの改善が見られなかったためにアップデートの投入を見送った。

 ここでハースは誤った判断を下す。それはマシンコンセプトを継続するか、あるいは見直すかだ。すでにフェラーリら多くのチームがシーズン序盤後からマシンコンセプトを変更していく中、ハースはコンセプトの変更になかなか踏み出せなかった。

 この判断の遅れによって、ハースは2023年シーズンをほぼ棒に振っただけでなく、コンセプトを変更したマシンをシーズン終盤に投入するために、2024年の開発を一時中断しなければならなくなってしまった。

ニコ・ヒュルケンベルグ(ハースVF-23)

 こうした反省を元に、小松代表は2024年からの開発は、ファクトリーの開発部門だけで行うのではなく、現場ともコミュニケーションをとって、現場で感じている問題や改善点を反映しながらアップデートできる体制を構築。ファクトリーと現場をつなぐ役職として新たにパフォーマンスディレクターを設け、ビークルパフォーマンス・グループの責任者を務めていたダミアン・ブレイショーを抜擢し、アップデートの方向性を関係スタッフたちと協議しながら推進させることにした。

 シュタイナーとレスタという大物2人が去り、その2人の穴をチーム内のスタッフを昇格させることで埋めた2024年のハース。一見すると、駒不足のように見えるが、将棋でも飛車という重要な駒を可愛がりしすぎて、ほかの駒を有効に使えず、戦局を自ら不利にしてしまうケースがある。

 叩き上げのエンジニアからチーム代表になった小松代表は、大物ではないエンジニアにも優秀なエンジニアがおり、彼らが適材適所で活用すれば、トップチームにも劣らない素晴らしい仕事ができることを身をもって知っている。今いるエンジニアたちでチームを再生させ、F1界に革命を起こしてほしい。

ハースF1チーム代表に就任した小松礼雄

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