能登半島地震/東京都が断水解消へ、水道管の現状調査と復旧を支援

能登半島地震により深刻な断水状態となった石川県輪島市で、東京都水道局の職員が水道管の損傷状況の調査と復旧に当たっている。個々の職員は派遣期間が1週間ほどと限られる。このため期間内で何とか復旧のめどを付けようと漏水箇所の迅速な発見と補修に全力を注ぐ。損傷具合を予測し、事前に水道業者を手配するなどイレギュラーな対応も必要で、経験やノウハウが求められている。
都水道局の酒井富雄管路設計課長は輪島市南部にある洲衛地区を担当した。派遣期間は1月15~21日。移動日を除くと活動期間は実質5日間となる。
洲衛地区は浄水場の水を送水管で一度配水池に上げ、そこから配水管による自然流下で各住宅に水を配るシステムになっている。酒井氏が確認した限り、同地区には約10世帯が自宅に残っていた。「高齢の住民が沢に水をくみに行き、トイレの水などに使っている状況だった」。
現地ではまず漏水箇所を突き止める調査を行った。配水管は配水池から数百メートル下った地点で三つに分かれている。分岐点近く、ルートごとにバルブが設置してあった。三つあるバルブのうち、2カ所を閉め、残り1カ所を通水することでルート内の漏水の有無を確認しようとした。
だが計画通りにはいかない。1カ所のバルブがさびており、栓を閉めても水が通った。バルブがきちんと機能しなければ先に進めない。派遣期間も限られる中、酒井氏は調査前、「バルブがもう駄目かもしれないという予測を立てて、東京から業者を呼んでもらった」。
水道業者が現場に到着したのは19日。地面を掘削し、バルブの交換作業に取りかかったがまたトラブルが発生。水道管が塩化ビニール製で、持参したダクタイル鋳鉄管用のパーツでは対応できないことが判明した。復旧作業がここでストップしてしまう。
酒井氏は急いで輪島市役所の担当者に電話で現状を知らせ、市役所に必要な材料がないか問い合わせた。担当者の回答は「(材料は)ある」。酒井氏はこの瞬間が「一番うれしかったし、ほっとした」と振り返る。
20日にバルブの修復が完了。通水テストを実施したところ、どこかで漏水しながらも、管路のルート上にある住宅の蛇口から水が出ることを確認した。派遣期間が終了となるため、漏水箇所の調査は都の後発隊が引き継ぐこととなった。
酒井氏が地元住民とのやりとりで印象に残っているのは、「風呂に入りたい」という人が多かったこと。漏水が完全に止まるまで待つのではなく、風呂用として時間を区切り水を配るなど、被災者の要望に応じて対応することが行政の役割だと強く感じた。
首都圏では今後、首都直下地震の発生が予想される。都には震災時の対応マニュアルはあるが、想定外の漏水や業者が被災するなど不測の事態も予想される。「顧客が今一番何を望んでいるのかをくみ取り、完全に復旧していなくても、とりあえず通水するなど、バランス良くやっていく必要がある」。そのためにも、都の職員として今後も土木知識と経験を積み重ねていく考えだ。

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