暖冬常態化で雪不足、瀬戸際のスキー場 豊岡・神鍋 最盛期11カ所、閉鎖相次ぎ3カ所に

大雪で営業が再開され、利用客でにぎわうゲレンデ=1月27日、兵庫県香美町村岡区中大谷、スカイバレイスキー場(撮影・長谷部崇)

 地球温暖化は雪を雨に変え、雪解けを早める。影響をまともに受けるのがスキー場だ。

 1月下旬、兵庫県北部・但馬地域のスキー場が相次ぎ再オープンした。今冬一番の寒波で、待望の雪がゲレンデを覆った。

 「ようやく降ってくれた。ここからどれだけ営業できるか」と、奥神鍋スキー場(豊岡市)の井上博夫社長(68)。昨年12月に3日間営業したが、雪不足で1カ月間休止していた。

 祖父が70年以上前に開場し、標高約400~900メートルにコースを構える。かつては麓付近まで雪が積もり、12月から翌3月まで通しで営業した。近年は雪量が少ない上、日中にすぐ解けてしまうという。

 人工造雪機を備えるが、雪不足が続いた2019年度に稼働して赤字に。電気代の高騰もあり、現在は自然雪が頼りだ。売り上げはピーク時の約5分の1に落ち込んだ。

 「やめて逃げ出したい思いもある」と井上さん。だが、周辺は民宿や飲食店が並び、スキー場が雇用や暮らしを支える。「ここがなくなれば地域が崩壊してしまう」と歯を食いしばる。

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 気象庁によると、豊岡市の年間降雪量(10年平均)は1980年代から90年代で一気に約140センチも減り、その後も減少傾向が続く。レジャーの多様化も重なり、但馬のスキー客数は近年、最多だった95年度の3割程度に減った。

 スキー場の閉鎖も相次ぐ。豊岡市の神鍋高原では、最盛期に11カ所あったスキー場は3カ所、宿泊施設は約350軒から約80軒に。暖冬の年が多い中、残るスキー場もキャンプ場などとして活用し、四季を通した集客に力を入れる。

 スキー客数と温暖化の関係などを研究する名城大の森杉雅史教授は「標高の低い場所では雪の確保がますます難しくなる」と予測する。「観光資源としてスキー場を維持する場合、国レベルの支援が鍵。グランピングなど雪に頼らない冬山レジャーの推進も一手だろう」と指摘する。

 雪不足の一方、温暖化がもたらす降雪の「極端化」も、無視できない課題になりつつある。(横田良平、杉山雅崇)

兵庫北部の降雪量、減少傾向か 「最深積雪」は記録的な年も

 兵庫県北部の但馬地域は、近畿の豪雪地帯として知られる。先月末には北日本から西日本の日本海側を寒波が襲い、豊岡市では48センチの積雪が確認されたが、年単位の降雪量は減少傾向が続いている。

 但馬地域で気象庁が降雪量を観測しているのは、豊岡、和田山(朝来市)、香住(香美町)、兎和野高原(同)の4カ所。年ごとの降雪量の10年平均を比べたところ、豊岡、和田山、香住で減少傾向がみられた。

 豊岡では、1961~70年の平均は356.5センチ。71~80年も323.3センチだったが、91~2000年には212.8センチに。11~20年には193.8センチとなっていた。

 和田山と香住でも、両地で降雪量の観測が始まった82年から10年間の平均と比べて、12~21年の平均はいずれも減少していた。

 だが、積雪の深さの最大値を示す「最深積雪」は、豊岡では12年に100センチ、17年も80センチなど記録的だった。降雪量が減少傾向でも、一定以上の雪が降る日や時間帯がある。

 気象庁応用気象研究部の川瀬宏明・主任研究官が行った21~22年冬の気象分析によると、西日本や東日本の海沿いで降雪量の減少が大きかった。一方、日本海側の海面水温が上昇して水蒸気量が増加したことで、気温が低い内陸の山沿いで大雪になりやすくなっていたという。

 川瀬主任研究官は「短期間に降る大雪は社会に大きな影響を及ぼすので、雪への備えは引き続き必要だ」と話している。 (杉山雅崇)

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