大地とともに(2月5日)

 映画「ゴールデンカムイ」が県内をはじめ全国で上映され、話題を呼んでいる。明治時代の北海道を舞台に、元兵士とアイヌの少女らが謎の金塊を探して旅する。人気漫画が原作だ▼手に汗握る冒険や人間模様に加え、厳しく豊かな自然と民俗、文化の丁寧な描写が支持される。「天から役目なしに降ろされたものはひとつもない」。さまざまなアイヌの言葉や教えが作中にちりばめられている。アイヌの伝承では、こびとの「コロポックル」も知られる。「蕗[ふき]の下の人」を意味する。大きな葉の下で動き回る姿を想像するとほほ笑ましい。先住民を指すとの説もある▼二本松市岳温泉の旅館に新施設「Dake Peak(ダケ・ピーク)」がオープンした。足湯暖炉、レストラン、酒蔵などがそろう。とんがり帽子の石の人形を売店で見つけた。北欧の森や家に住む妖精で「トントゥ」という。人間を手伝い、幸せを運ぶ。愛らしい姿はコロポックルを思わせる▼洋の東西を問わず、古来の言い伝えには自然を敬い、大地と生きる祈りがにじむ。万物への感謝を忘れていまいか。安達太良山から湧き立つ湯に身を浸し、コロポックルやトントゥの問いかけに耳を澄ます。<2024.2・5>

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