スギ花粉が福島県内で本格的に飛散し始める時期は、暖冬の影響で例年より10日ほど早い今月中旬の見通しとなっている。昨年より少ないが、夏の猛暑の影響を受けて例年よりやや多いとみられる。医師は早めの対策を呼びかけるとともに、新型コロナウイルスの5類移行でマスクを着けない人が増えていることから、発症者が昨年より増える可能性があると注意を促している。
スギの雄花は冬の寒さで休眠から目覚め、暖かい日が増えると花粉を飛ばし始める。昨年11月ごろから平年より気温が高い日が続き、福島市では1月29日にスギ花粉が初観測された。日本気象協会は今後、まとまった量が放出され、3月上旬から下旬にかけ、飛散のピークを予想している。
伊達市のだて耳鼻科パオパオには、昨年12月20日ごろから、花粉症の症状を訴える患者が訪れ始めた。1月の花粉症患者数は昨年が約50人だったのに対し、今年は約90人に上った。
福島市の福島赤十字病院耳鼻咽喉科の多田靖宏医師は「例年より早めに対策してほしい」と呼びかける。発症前から薬を服用すれば、飛散ピーク時の症状緩和が期待できると訴える。
さらに、マスク着用の有無が発症に大きく関わると指摘している。コロナ禍で多くの人がマスクを着用していた近年、花粉症患者の鼻の症状は軽く、新たな発症を比較的、抑え込めたという。多田医師は「マスクをしなければ大量の花粉が体内に入り、発症する可能性がある」と説明している。
郡山市の団体役員鈴木隆将さん(51)は1月下旬から、花粉症による肌荒れに悩まされている。例年2~3月ごろに症状が出ている。「薬を飲んで今は落ち着いているが、今年は早過ぎる。悪化するようなら病院に行かなければならない」と頭を抱えていた。
◇ ◇
県内の今季の飛散量は過去10年間の平均値より多くなる見込みだ。スギ花粉の量は前年夏(6~8月)の気象条件が影響する。昨年は夏の気温が高く、日照時間が長かったため、雄花の生育が促進され、着花量が増加した。
福島県は面積が広く、いわき市や塙町などに杉林が多いため、スギ花粉の飛散が多い傾向にある。飛散量を予測する上で花芽の数が目安となる。2023(令和5)年度の花芽は、福島県が1平方メートル当たり7643個。環境省が調査した35都府県の中で岩手県の9097個、神奈川県の7793個、新潟県の7679個に次いで4番目に多い。
■県内のドラッグストア 関連商品の棚設置
県内のドラッグストアはすでに花粉症関連商品の棚を設けている。
いわき市のくすりのマルトパワードラッグ君ケ塚店では、例年より2週間ほど早い1月末に特設コーナーを設置した。花粉症シーズンの長期化を見込んだ客が、大容量の飲み薬をよく手に取っているという。
福島市のハシドラッグ信陵店も、先月末にレジ横に花粉症コーナーを用意した。漢方薬など、副作用を抑えられる商品などを薦めている。