温暖化の副産物「どか雪」で都市交通まひ 兵庫南部でも立ち往生リスク、問われる積雪対策

積雪で激しい渋滞となった国道2号=2023年1月、神戸市須磨区

 地球温暖化の影響で年間の積雪量は減っているものの、一度に異例の雪が降るリスクは逆に高まっている。

 昨年1月下旬、強烈な寒波が日本列島を襲った。兵庫県南部でも雪が積もり、交通網が大混乱。加古川市以西の国道2号などを管轄する国土交通省姫路河川国道事務所の担当者は「想定外が重なった」と振り返る。

 予報は1時間で1センチの積雪だったが、国道2号の岡山との県境部ではわずか10分で1センチを超え、交通規制の判断が遅れた。兵庫県上郡町と赤穂市の境界にある峠でチェーン未装着の大型車が立ち往生したのを機に大渋滞が発生。多くのドライバーが車中泊を強いられた。

 さらに、積雪対策が手薄な都市部のバイパスで除雪作業が難航した。「溶かしてもすぐに再凍結、の繰り返し」(同事務所)だった上、ノーマルタイヤの車が多いため、氷が薄く残っているだけでもスリップ事故や立ち往生につながりかねない。不眠不休で対応に当たり、全面通行止め解除まで46時間半を要した。

 同事務所は対策強化を進め、建設業者らの知見も取り入れながら都市部での効率的な融雪技術や機材を研究する。同事務所道路管理第2課の田尻尚登課長は「近年は都市部でも雪対策を軽視できなくなっている」と危機感を募らせる。

海水温上昇が一因か、日本海の雪雲増大化

 大量の雪が降る「どか雪」が増える一因として、気象庁の研究は「海水温の上昇」を挙げる。水蒸気量が増え、増大した雪雲は日本海で冬に大雪を降らせる「日本海寒帯気団収束帯」(JPCZ)にも影響し、大雪を引き起こすという。

 国や企業も対策に乗り出した。国交省は2021年、「なるべく通行止めにしない」との従来の方針を転換し、予防的通行規制を積極的に導入。やむを得ず通行する場合はチェーン装着などを呼びかける。

 JR西日本も昨年11月末までに、関西の融雪設備を遠隔操作や長時間稼働が可能なタイプに切り替えた。その稼働も、降雪と気温を踏まえて、駅長らの判断を優先させることにした。

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 一方、雪に慣れている地域でも、どか雪対策に頭を悩ませる。

 丹波市北部の青垣地区。豪雪地帯に指定され、市道は除雪されるが、近年の想定外の積雪や住民の高齢化などで「雪かきができず、家から出られない」との声が上がるようになった。

 同市は昨年、初めて小型除雪機を同地区の四つの自治会組織に無償貸与する制度を始めた。ただ、近年は南部でもどか雪に見舞われる年があり、同市の担当者は「今後、他の地域でも需要が増えていくかもしれない」とする。

 貸与制度を利用する遠阪自治協議会地域コミュニティ活動推進員の安田英樹さん(66)は「雪は災害と同じ。『もし救急車が入れなかったら』などと考えると、まだ足りない。購入補助の制度などで、数を増やす方法も検討してほしい」と話す。(石沢菜々子、杉山雅崇、横田良平)

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