米上院、1180億ドルの国境警備・ウクライナ支援法案 成立不透明

Richard Cowan Costas Pitas

[ワシントン 4日 ロイター] - 米上院は4日、ウクライナとイスラエルへの支援を盛り込んだ1180億ドル規模の超党派国境警備法案を発表した。ただ、大統領選の共和党候補指名争いで独走するトランプ前大統領と共和党強硬派が反対する中、法案の先行きは不透明だ。

民主党の上院トップ、シューマー院内総務は、7日に初回採決を行うための措置を講じると述べた。法案が成立すれば、米国の移民制度と国境警備はここ数十年で最も大きく変わることになる。

無所属のキルステン・シネマ上院議員は記者団に対し、7日間で1日平均5000件以上の越境の試みがあった場合に国土安全保障省に国境閉鎖を義務付けるなど、法案は南部の国境を守るものだと語った。

ジョンソン下院議長は「この法案はわれわれの予想よりもさらに悪く、バイデン大統領が引き起こした国境の大惨事を終わらせるには程遠い」とX(旧ツイッター)に投稿。法案は下院に送られれば「到着した時点で死に体となる」との見方を示した。

パティ・マレー議員によると、法案には国境警備のための202億3000万ドルに加え、ウクライナを支援するための600億6000万ドル、イスラエルへの安全保障支援に141億ドル、米中央軍と紅海での紛争に24億4000万ドル、中国からの脅威に直面しているインド太平洋地域のパートナー支援に48億3000万ドルが含まれている。

さらに、パレスチナ自治区ガザ、ヨルダン川西岸、ウクライナの民間人に100億ドルの人道支援も行う。ただ国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)への資金拠出を禁止する条項が含まれている。

法案の主要な海外安全保障項目はバイデン大統領が昨年10月に議会に要求したものとほぼ一致している。

バイデン氏は「議会が一致団結し、この超党派合意を速やかに可決するよう求める」と述べたほか、法案に盛り込まれた移民対策を称賛した。

法案の支持者は「キャッチ・アンド・リリース」方式の措置を終わらせ裁判の迅速化につながるとしている。同措置は拘束した不法移民をすぐに釈放し、裁判が行われるまで数年間米国に滞在することを可能にするもので、大量の不法移民を招く原因となっていると批判されている。

上院共和党トップのマコネル院内総務は声明で、共和党候補が大統領になったら同党にとってより良い合意を得られなくなると指摘。「上院は目の前の機会を慎重に検討し、行動を起こす準備をしなければならない」と訴えた。

シューマー氏は記者会見で、この法案ほどマコネル氏と緊密に仕事をしたことはなかったと述べ、「交渉が決裂したと思ったことも何度もあった」と明かした。

<右派の反対>

下院共和党の有力議員スティーブ・スカリス氏はXに「(上院の法案は)下院で採決されることはないだろう」と投稿した。

「この法案を推し進める人々が明言していないのは1日に5000人の不法移民を受け入れ、亡命希望者に自動的に労働許可を与えるということだ。さらに不法移民を引き寄せる」と主張した。

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