パートでも取れる介護休業!29万人超の「介護&育児ダブルケアラー」が破綻する前に知っておくべき公的制度&民間サービス

(写真:buritora/PIXTA)

子育てと家族の介護が重なる「ダブルケア」に直面する人が、全国に少なくとも29万3千700人いることが、1月22日、毎日新聞の調査でわかった。社会変化による日本の女性たちの苦しい現状が浮き彫りに!

首都圏に住むA子さん(50代)もその一人。40代半ばで不妊治療を経てやっと子どもを授かった。子どもはまだ5歳で、子育てと仕事の両立に忙しい日々を過ごすなか、地方に住む両親の介護に直面することに。

「母は認知症で、父が世話をしていたところ、父にがんが見つかって入院することになってしまったのです。A子さんは一人っ子で、『全部自分で親の面倒を見なければならない』と思い込み、会社を辞めたうえで子どもを連れて実家に帰ろうとしたのです」

そう語るのは、A子さんから相談を受けたNPO法人「となりのかいご」代表の川内潤さん。

「私のところに相談に来る介護者は、全部ひとりで背負い込もうとしています。しかし、よく話を聞くと、デイサービスやホームヘルプなど、介護保険のサービスを使っていないケースが多く、うまくサービスを利用すれば、生活が成り立つケースがほとんどなのです」(川内さん、以下同)

A子さんの母は要介護1で、介護サービスはまだ未利用。そこで、ケアマネジャーにケアプランの作成を依頼し、週3回デイサービスに通い、週1回ホームヘルプを受けるというプランを立ててもらい、見守りを兼ねたお弁当の宅配を利用した。父も母につきっきりで介護をする必要がなくなり、自分の病気の治療に専念できたという。

「たいていは親の介護の体制を整えることで解決しますので、育児を優先してお子さんとの時間を大切にしてほしいと伝えています。また仕事も辞めるのではなく、身近にある公的支援、民間支援をおおいに活用してほしいですね」

一人で背負って、金銭的、精神的に破綻する前に、使える制度を見てみよう。

■介護と仕事を両立するために使える公的制度が充実 パートもバイトも申請可

「介護休業」は要介護状態にある家族1人につき3回を上限として、通算93日まで、介護による休業を申請することができる制度。

「介護休暇」は、介護する家族が1人であれば年に5日まで(2人以上は年10日まで)、1日または時間単位で取得でき、ほかにも、短時間勤務や残業免除などもある。

なかでも知らない人が多いのは、パートやアルバイトでも申請できるということ(雇用形態にもよる)。パートやアルバイトであっても職場の「就業規則」を確認して、人事や総務などに相談してみよう。

都内に住むB子さん(40代)はかつて、末期がんの父(当時70代)の世話をするために、介護離職をしようとした。上司に「会社を辞めます」と告げると、「うちの会社は介護や育児の期間中に利用できる制度がたくさんあるから何か使ってみたら?」と勧められたそう。

「家族会議をするため、ひとまず介護休業を取得して、当時保育園に通う娘を休ませて、2人で実家に帰りましたが、家族でよく話し合った結果、母と姉たちがいるので、私はそばにいなくてもいいという結論に達しました。父は退院後、通院しながら抗がん剤治療を受けることになり、介護サービスを使いました。身の回りのことは最期まで自分でできたので、当初の予定より早めに復職しました。あのとき会社を辞めなくてよかったです」(B子さん)

だが、要介護認定を受けても介護サービスを受けない人が案外多いと川内さんは言う。ケアマネジャーにつながると、親の体調の変化や要介護度に応じて必要な支援を提供してくれるので、家族でケアをしようなどと思わないことだ。

「遠距離介護のA子さんは介護休業を取得しなくても、仕事と介護が両立できるようになりました。じつは新型コロナの影響で、ケアマネジャーと家族との会議もオンラインで済ませられるようになったんです。頻繁に帰省するのは金銭的にも負担が大きいので、航空会社の介護割引を活用するなど、民間支援も上手に利用してみてください」

■遠距離介護で役に立つ民間サービスも増加「病院の付き添い」「宅食」

たとえば、家族の代わりに看護師が病院を受診する際の付き添いを行ってくれるサービスもある。費用は全額自己負担で事業者によって金額は異なるが、帰省の旅費と比べると低コストで済む。このほかにも、ビデオ通話でいつでも実家とつながれる便利なツールも。

「今回の毎日新聞の調査は、子どもは未就学児が対象だったので、実際のダブルケア人口はもっと多いことが推測されます。特に晩婚、晩産化が進み、40代半ばでの出産も珍しくなくなってきました。50代以降のダブルケアは今後も増えることが予想されます。子育てはお金がかかるので、仕事は絶対に辞めてはいけません」

一人で抱え込まず、介護者同士の口コミや「地域包括支援センター」などで情報収集しながら、介護を乗り越えよう。

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