【きさらぎ賞回顧】ビザンチンドリームが魅せた展開と真逆の競馬 3着シヴァースらも今春の活躍に期待

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シヴァース、ウォーターリヒトの競馬

京都の芝は年明けから競馬ファンを悩ませつづける。掘れやすい馬場は見た目にも荒れており、瞬発力を封じ、パワー型の台頭を許してきた。一方で、良馬場であれば時計はそれなりに出る。バランスをとりにくい馬場であっても、時計が出る。適性をつかみにくい。

一方で、外差しのようで、そうでもない。京都外回りは改善されたとはいえ、下りながら急なカーブを曲がり直線に出る。下りで勢いをつけ外を通って進出すると、かなり外を回らされる。馬場がよくてもロスが大きければスタミナを削ぐ馬場だと伸びきれない。理想は4コーナーまで馬場の真ん中から内に潜み、直線に入ってから外側へ持ち出す作戦だろうが、ライバルと一緒に走る以上、そう思惑通りにいかない。

きさらぎ賞では2着に敗れたウォーターリヒトが理想に近い競馬だった。京都外回りはインから攻める。定石通り、4コーナーで内へ入り抜けてきた。それをハナ差とらえたのが大外強襲を決めたビザンチンドリームだ。

キャリア1戦1勝、もっとも難しい2戦目は新馬同様、スタートから前へ進まず、後方からの競馬を余儀なくされる。R.ピーヒュレク騎手も日本での騎乗スタイルはスタートから前に行くというより、後ろに控えて末脚にかける競馬が目立つ。基本は溜めるヨーロピアンスタイルを崩さない。今回は結果的にこれが功を奏した。

レースの流れは前半1000m通過1:00.2。ペースが上がったのは下り坂を通過した残り400mから。残り600mは12.0-11.1-11.3の上がり勝負になった。同じ1戦1勝でも日本を知り尽くすM.デムーロ騎手が積極策をとったシヴァースやジャスティンアースら好位勢が伸びきれず、その後ろにいたウォーターリヒトに展開が向いたはずだった。

皐月賞も力のいる馬場になれば

これを差し切ったビザンチンドリームは、展開とは真逆の大外強襲を決めた。まさに馬の能力が決め手になったといえる。遅れ差しの形が届くあたり、京都の馬場の難しさを物語る。父エピファネイア、母父ジャングルポケット、母系は母父父トニービンと母母父フレンチデピュティに母母母父サンデーサイレンスという組み合わせで、持続力勝負に強い。上がり勝負になっても持続力型に向いた。難しい馬場だ。

キャリア2戦目で展開利もなく、勝ったビザンチンドリームは前途有望ながら、次走以降の反動も気になるところだ。クラシックは消耗せずに賞金を加算できるかもポイントのひとつ。とはいえ、皐月賞まではじっくり進められる。クラシック第一冠の舞台は開催後半の中山。力のいる馬場になれば、出番はある。

可能性を感じさせるシヴァース

2着ウォーターリヒトは距離短縮のシンザン記念で後方から追い込んで3着。今回は適距離に戻して、さらに一歩前進した。中距離の方が流れに乗りやすそうだ。理想的なレース運びだっただけに、ハナ差2着は痛い。賞金加算はできたが、やはり1着でダービーまでの道を作りたかった。上がり33秒台も記録し、着実にレース内容は濃くなってきた。

3着は先行したシヴァースが粘った。今週復帰したデムーロ騎手は遅めの流れを積極的にインから攻め、ペースを上げるための仕掛けも絶妙だった。直線も先に先頭へ立ち、馬場の真ん中をとるなど完璧に近かった。まだキャリア2戦目だったため、体力がつききっておらず振り切れなかったか。だが、この競馬ができるなら2勝目は近いだろう。母はヴィブロス。ハルーワソングの牝系は豊富な成長力が武器だ。完成度も高く、今春、結果を残せるのではないか。

4着インザモーメントは内枠から早々に外目のポジションをとった。馬場を読んだ好判断だったが、外を回ったロスが最後に響いた。こちらは大味な競馬で結果を出せるだけの体力がついていないようだ。ポテンシャルは感じる。2番人気ファーヴェントは2、3着馬が併せ馬の形になる場面で進路をカットされた。間を割れるだけの脚いろがなかったようだ。クラシックへ向け、敗退は遠回りを意味するので痛かった。

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。新刊『キタサンブラック伝説 王道を駆け抜けたみんなの愛馬』(星海社新書)に寄稿。



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