企業・公務員の定年延長が影響か…民生委員のなり手不足深刻 鹿児島市は欠員が33人も

 鹿児島市で、民生委員・児童委員の定員割れが続いている。2023年12月時点では定数1068人に対して1035人で、欠員は33人となっている。市によると、同委員の確保は全国的な課題。企業や公務員の定年延長によるなり手不足や、地域コミュニティーの希薄化で候補者の把握が難しくなっているのが背景にある。

 同委員は、住民の生活状態の把握や相談援助、児童の健全育成といった役割を担う。市民生委員児童委員協議会によると、最近は訪問が必要な独居老人宅が増えたり、80代の親と50代の子が困窮する「8050問題」など相談内容が複雑化したりしている。個人情報保護の観点から「自治体などからの住民情報も入手しにくくなってきている」という。

 定数は、国の基準を踏まえて市が条例で定めている。市内の50地区で現在欠員が出ているのは中郡や原良、玉江地区など18地区。地区内のほかの委員が補っており、負担の増加が課題となっている。

 同委員は、各地区の選考会が候補者を挙げ、最終的には厚生労働大臣が委嘱する。報酬はなく、市から支給されるのは年間15万5000円の活動費のみだ。

 22年12月時点の市の定員に対する充足率は96.5%で、全国62中核市の平均(94.4%)よりは高くなっている。出雲信明会長(74)は「地域生活に悩みを抱える人が増える中、行政支援とのつなぎ役となる委員の重要性は増している。委員活動の広報や周知に力を入れ、充足率の向上に努めていきたい」と話した。

民生委員・児童委員の活動を紹介するチラシなどを持つ鹿児島市の職員=同市役所

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