【今週のサンモニ】伝家の宝刀【言葉の切り取り】炸裂!|藤原かずえ 『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。麻生発言を伝家の宝刀「言葉の切り取り」で言葉狩り!

番組お得意の「言葉狩り」

2024年2月4日の『サンデーモーニング』は、番組の伝家の宝刀とも言える【言葉の切り取り quoting selectivity】による【言葉狩り Kotobagari】を自民党麻生太郎副総裁に対して展開しました。

言葉の切り取り

『サンデーモーニング』は、編集映像で1月28日の福岡県遠賀郡芦屋町での国政報告会での麻生氏の発言を次のように紹介しました(太字部分は映像内の字幕で赤く強調されて表示)。

麻生太郎氏(VTR):ほ~、このオバサンやるね」と思いながら…少なくとも、そんなに美しい方とは言わんけれども

アナウンサー:先週日曜、物議を醸したのは上川外務大臣をめぐる麻生副総裁の発言

麻生太郎氏(VTR):今の外務大臣はカミムラヨウコ…女性が日本の外務大臣になった例は過去にないと思います。

アナウンサー:容姿を揶揄した上に、名前を言い間違え、これまで2人の女性外務大臣(田中真紀子氏・川口順子氏)がいたことも忘れていたようです。

仕事を高く評価した発言なのに

『サンデーモーニング』が問題視したのは上記4点です。このうち、上川陽子(カミカワヨウコ)大臣の名前を「カミムラヨウコ」としたことと「女性が日本の外務大臣になった例は過去にない」というのは明確な誤りですが、この手の間違いは『サンデーモーニング』でも日常茶飯事のことです。

ここで、実際の麻生氏の発言は次の通りです。

麻生太郎氏:昔より単純じゃなくなりました。国際関係はものすごく複雑になっております。それが今の世の中なんであって、政治はその中にあって、外交としていろいろな問題に対応させていただいております。その中で例えば今、女性というものであれば、今の外務大臣はカミムラヨウコ。女性ですよ。女性が日本の外務大臣になった例は過去にないと思います。

しかし、このカミムラヨウコは大したもんだぜ。これは。俺たちから見てても「ほ~、このオバサンやるね」と思いながら。こないだニューヨークであったけれども、少なくとも、そんなに美しい方とは言わんけれども、間違いなく堂々と話をして、英語も勿論きちっと話をし、自分で予約から何から外交官の手を借りながら「ああ、私がやるからいい」、自分でどんどん会うべき人たちを自分で予約を取っちゃう。そして会うべき人と、ぱっと1週間の間に、ニューヨークの国連の総会の後、バタバタバタっとやってのけたのを見て「は~、これは大したもんだ」とつくづく思いました。あんなことできた外務大臣、今までいません。

是非そういった意味で、新しいスターが新しい人がそこそこ育ちつつあるんだと思いますね。ぜひ女性、若い人、こういった人たちを、我々は育てねばならなん。そういう義務と責任があるんだと思っております。

麻生氏の発言内容は、上村大臣の仕事ぶりを高く評価するものであり、『サンデーモーニング』が容姿を揶揄したとする「オバサン」「美しい方とは言わん」は、本旨とは無関係なものです。

「オバサン」が性差別なら……

この発言に対し、番組コメンテーターの浜田敬子氏は、次のようにヒステリックに麻生氏の人格を非難しました。

浜田敬子氏:麻生氏の上川大臣に対する発言というのが、まさにこういう人が政治の中枢にいていいのかと。何重にも麻生氏の発言は女性差別的だ。容姿について言及したこともそうであるし、上川氏に対して「やるね~」という評価それ自体が、女性が外交なんかとてもできないという前提で非常に女性の能力を見下している。

国語辞書によれば「オバサン」には「よその年配の女性を親しんでいう語」とあります。「オバサン」は素直に考えればポジティヴな表現です。

おばさんとは? 意味・読み方・使い方をわかりやすく解説 - goo国語辞書

例えば、『サンデーモーニング』の元コメンテーターの谷口真由美氏は「大阪のおばちゃん」を自称し、「おばちゃんたちの底上げとオッサン社会に愛とシャレでツッコミをいれること」を目的にして「全日本おばちゃん党」を過去に立ち上げました。『サンデーモーニング』も谷口氏が「全日本おばちゃん党」の一員であることを紹介していました。

「オバサン」表現が女性差別的であるのなら、「おばちゃん」「オッサン」表現の谷口氏は性差別者、谷口氏を何度も起用した『サンデーモーニング』は性差別番組、谷口氏の所属タレント事務所である株式会社三桂は、性差別事務所というレッテルを貼られても仕方がないと言えます。もしそうでないのであれば、谷口氏も『サンデーモーニング』も三桂の関口宏社長も、浜田氏に抗議することが必要でしょう。

谷口 真由美 | 株式会社 三桂

麻生発言は「照れ隠し」

また、麻生氏が、現在のテレビのバラエティ番組などで使われているネガティヴな意味での「オバサン」を使った可能性は高くないと推察されます。なぜなら浜田氏によれば、麻生氏は今の時代感覚を持っていないからです。

浜田敬子氏、「モーニングショー」で「美しい方とは言わない」発言の麻生太郎氏に憤慨…「人権意識に欠けている…今の時代、政治家になっていいのか」 : スポーツ報知

麻生氏は、国語辞典にあるような親しみをもった表現として上川大臣を「オバサン」と呼んだ蓋然性が高いと言えます。

なお、麻生氏が言ったとされる「美しい方とは言わん」という発言は、正確には「そんなに美しい方とは言わん」です。英語で言えば、”not beautiful”ではなく“not very beautiful”です。実際、ほとんどの人は”beautiful”である可能性はあっても”very beautiful”である可能性は高くないので、この言葉自体は必ずしも侮蔑表現ではありません。

麻生氏にとっては、上川氏に対する親しみを込めた「照れ隠し」として「そんなに美しい方とは言わん」と表現した可能性もあります。この可能性を無視し、悪意と断定して人格攻撃するのは、悪意に満ち溢れています。

『AERA』の杉田議員の容姿差別

加えて「こういう人が政治の中枢にいていいのか」というキャンセル・カルチャーは人権蹂躙の疑いがあります。このような他愛もない一言を言葉狩りして職業に対する個人の適性を否定するのはメディアの思い上がった驕りであり、公共の電波を悪用した恐ろしい脅しに他なりません。

そもそもかつて浜田敬子氏が編集長を務めていた『AERA』は、少し前に自民党・杉田水脈議員の顔を根拠にして幸せに縁はないと揶揄しました。

上川大臣を高く評価した麻生氏とは正反対に、個人を貶めるための根拠として個人の容姿を弄んだ『AERA』こそ、完全なる容姿差別であり、廃刊するに相応しい存在と考えます。

杉田水脈氏の顔が「幸せに縁がない」!? AERA編集部、「観相学」記事炎上で謝罪

実際に『AERA』はこんなにひどいことを書いていました。これでは杉田議員やご家族が不憫過ぎます。

朝日新聞出版『AERA dot.』2018/07/27

<杉田水脈氏の顔が「幸せに縁がない」>

杉田議員のお顔は、まず全体の印象として「幸せに縁のない」お顔。額は前頭葉に直結する部分、良い気も悪い気も、ここから取り込み、また放出する大切な場所。それが、長い前髪でおおわれてしまって、入る・出るが滞っている。また、額を出した写真を見ても、政治家としてあまり良い額をしているとは言えません。(中略)。

知性もある、頭もいい。けれど、人の情がわからない。多様な価値観が理解できない。人間という多様なものがわからない。この人は政治家になるべきではなかったかもしれません。頭がいいだけでよいなら評論家とか。政治家は公の立場に立って、あらゆる人の事情や感情をくみとって、最善を尽くすために努力するのが仕事のはず。愛情に乏しく、人の感情や情動にうとい人が上に立つと、理論的には間違っていなくても、人の役には立てないことになりますよね。

何よりも、麻生氏が女性議員を褒めたことを理由に、麻生氏は女性に能力がないと考えていると浜田氏が断罪したことは常軌を逸しています。こんな本末転倒な極論が通用するのであれば、「ジェンダー平等」という言葉自体、女性を見下すものと解釈することができます。

組織への女性リーダー増を国の目標義務化に 浜田敬子さん「ジェンダー平等」テーマに講演 - 琉球新報デジタル

上川批判で逆差別を助長

さらに浜田氏は続けます。

浜田敬子氏:麻生氏の発言に対する上川大臣の発言も「あらゆる発言も有難く受け止める」と言ったが、これも非常に問題がある発言だ。こういう差別的な発言を受けた時にやはり受け流さなければいけないと。女性は我慢して受け流さないと仕事に就けないという凄く誤ったメッセージを社会に与えてしまった。今職場とかでこういった差別をされている女性たちがなかなか声を上げられない状況にある。だからこそリーダーである上川氏に是非きちっと抗議して欲しかった。

この浜田氏の発言のうち、上川氏の価値観に基づく行動を非難するのは【モラリズム moralism】であり、自らの価値観に基づく行動を上川氏に強要するのは【パターナリズム paternalism】です。

このように自らの価値観を絶対視する【反リベラリズム anti-liberalism】の思想こそ、【多様性 diversity】を重要視する社会において、最も排除することが必要と言えます。

女性が反論しないことを根拠に「我慢して受け流した」と曲解した浜田氏の誤ったメッセージは、社会を萎縮させると同時に逆差別を助長するものです。また、上川大臣の仕事ぶりを高く評価した麻生発言を曲解し、無理やり被害者ポジションに立って【同情に訴える論証 appeal to pity】を展開するのは論理の飛躍に他なりません。

X(旧ツイッター)でも追い打ちを。

そもそも人間の容姿を根拠にして人間を揶揄する【ルッキズム lookism】は、テレビが社会の先頭に立って行ってきたものです。そのテレビが、麻生氏と上川氏を批判していること自体、国民を完全にバカにした偽善であると言えます。

以下は、その証拠のほんの一部です。

TBSテレビ『おデブが美女に大変身!ダイエット総選挙2017 夏の陣〜今年こそ水着になりたいSP!!〜』
https://www.tbs.co.jp/Diet-tbs/

TBSテレビ『池上彰が「イケメン貧乏とブサイク金持ち、結婚するならどっちが幸せ?」など女性の悩みや疑問に真っ向から答える!』
https://music-book.jp/book/news/news/193196

TBSテレビ『ドラゴン桜「バカとブスこそ東大に行け!」』
https://mi-mollet.com/articles/-/29869?layout=b

TBSテレビ『芸能人は見た目が命!?』
https://www.tbs.co.jp/geinoujin_mitame/

このような公然としたダブスタをTBSテレビはどう考えているのでしょうか。国民は、麻生氏に怒る暇があったら、日本のテレビ局に怒るのが先と考えます。

英有力紙も麻生氏発言伝える 「容姿や年齢を侮辱」“最も読まれた記事”に | TBS NEWS DIG藤原かずえ | Hanadaプラス

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