ありのままの自分、認めて 長崎出身の映画監督・草場さん 長編デビュー作が今秋公開へ

バスの車内で撮影した映像をチェックする草場監督=同市内

 長崎市出身の映画監督、草場尚也(32)の商業映画長編デビュー作となる「雪子 a.k.a.」(仮題)の製作が進んでいる。本音を言うことが苦手な小学校の女性教諭が趣味であるヒップホップのラップを通して自分と向き合う人間ドラマで、今秋の全国公開を目指している。昨年12月には長崎市内でロケも行っており、草場監督は「長崎に生きる人の温かさを感じ、そういう街を魅力的に映したいとの思いが強くなった」としている。
 草場監督は県立長崎北高、大分大教育学部卒。在学中に自主映画を撮り始め、映画美学校(東京)に進んで脚本を学んだ。映像制作会社に入社し、テレビドラマの助監督なども務めた。主人公が女優になる夢を追いかける自主制作映画「スーパーミキンコリニスタ」が第41回ぴあフィルムフェスティバルのコンペティション部門「PFFアワード2019」で、ホリプロ賞と日活賞をダブル受賞した。

 文化庁が助成

 「雪子-」は、東京の映画会社「パル企画」などでつくる製作委員会が企画。文化庁から文化芸術振興費の助成を受け、昨年11月にクランクインした。
 物語の主人公、雪子(山下リオ)はもうすぐ30歳。東京の小学校で働いているが、不登校児童とはうまくコミュニケーションが取れない。付き合っている彼との結婚にも前向きになれない。そんな彼女が唯一、夢中になれるのがラップ。マイクを手に本心をさらけ出す時だけ、自分らしくいられると感じ、漠然とした不安から解放される。「ありのままの自分を受け止め、それを認めて生きていく」ことが主題という。

 長崎でも撮影

 撮影は東京を中心に行われ、長崎ロケは12月12~14日の3日間実施。雪子が年末に実家に帰省し、久しぶりに顔を合わせた父と墓参りをし、ラップバトルに出場するシーンなどを撮影した。雪子がバスに乗って実家に戻るシーンでは車窓から見える市内の風景にこだわり、長崎バスが協力。草場監督の祖父や、高校時代の同級生がエキストラを務め、長崎名物の差し入れもしてくれたという。
 山下は草場監督について「とにかく優しくて寄り添ってくれるタイプ。良い意味で監督らしくない。監督が描きたいものに向かって支え合い、チームの結束力が高まった」。作品について「人は本当に楽しいものに出合えた時に新しい自分を見つける。そんな姿を草場監督が繊細に描いた。注目してほしい」と話す。

 ラッパー描く

 草場監督は「4、5年前からラップに夢中になり、『女性ラッパーを描きたい』が出発点。自分が小学校の先生になりたいと思っていたのでリアルに物語が膨らんだ」と振り返る。完成に向けて「映画を見た人が『今の自分でもいいのかもしれない、今のままで悪くない』と前向きな気持ちになってもらえる作品にしたい」と意気込みを語った。
 現在、撮影した映像の編集作業などを進めており、2月末には完成させる予定。

作品に込めた思いを語る草場監督=長崎市内

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