「スポーツ界にとって素晴らしいこと」 ハミルトンのフェラーリ移籍にOBは好反応! 専門メディアが推測する「移籍を決断した4つの理由」とは?

7度の世界王者ルイス・ハミルトンが今季限りでメルセデスを離脱し、フェラーリに新天地を求めることを発表。世界を驚かせた40歳(来季開幕時)での新たな挑戦で、彼が何を成し遂げられるのかという期待とともに、F1ストーブリーグへの興味も増す一方である。

2013年にマクラーレンからメルセデスに移籍し、昨季までの11年間で82勝を挙げて6度の年間王座という輝かしいキャリアを築き上げたハミルトンは、自身のSNSで「人生の新たなチャプターを始める時が来た」「幼い頃に夢見ていたことをメルセデスで達成でき、そして今、真紅のフェラーリをドライブするという夢を実現するチャンスが訪れた。これは信じられない幸運だ」と移籍を報告するとともに、メルセデスへの感謝などを綴っている。

2021年にマックス・フェルスタッペン(レッドブル)との熾烈なチャンピオン争いを展開して以降、ハミルトンは直近の2シーズンは勝利なしに終わり、レッドブルやフェラーリらライバル、そしてチームメイトのジョージ・ラッセルの歓喜を眺めるという屈辱を強いられてきた。
そんな39歳がここにきてメルセデスとの強固なパートナーシップを解消する決断を下したことについて、彼の同胞であり、F1のOBでもあるジェンソン・バトンがスポーツ専門チャンネル『Sky Sports』で、「フェラーリにとって大きな変化であり、スポーツ界にとって素晴らしいこと。今後は誰もがF1、特にフェラーリとルイス(ハミルトン)に注目するだろう」と評価している。

また、元F1ドライバーのマーティン・ブランドルも「ルイスにとっても、F1にとっても、我々にとっても素晴らしいこと」と歓迎し、「メルセデスで見えているものが気に入らなくなったのか、キャリアの終盤に差し掛かり、最後に新たな挑戦をしたかったのかのどちらかだろう」と移籍の理由を推測。加えて、ハミルトンが2013年に懐疑的な見方をされながらもメルセデスに加入して大成功を収めたことを強調し、この再現に期待を寄せた。

イギリスのF1専門サイト『PLANETF1.COM』は、「ハミルトンがフェラーリに移籍した4つの大きな理由」を推測し、ひとつ目は「メルセデスに対して信頼を失ったのか?」と見出しを打ち、この2年間のドイツ籍チームの不調、「ゼロポッド」の失敗に代表される方向性の誤りなどから立ち直るのに時間がかかっていることを指摘。新レギュレーションが施行された2021年にフェラーリが最も上手くスタートを切ったことが、ハミルトンにとっても大きかったと見ている。 ふたつ目は「最後の賭け」ということで、41歳で迎える2026年、F1にまた新たなレギュレーションが導入されるタイミングでタイトル争いに参加する思惑があるという見方を示し、3つ目は「フレデリック・バスール(フェラーリ代表)と再び連係するチャンス」。下部カテゴリー時代にバスール率いるARTグランプリ(ASM)でF3、GP2を制し、F1昇格を勝ち取ったハミルトンにとって、この恩師は常に連絡を取り合う関係であり、実に19年ぶりの共闘となる。

そして4つ目は、「フェラーリの魅力とアイルトン・セナが達成できなかったこと」で、セナがフェラーリ入りを夢見るも1994年の事故死によって叶えられなかったため、彼を最大のアイドルとして崇めるハミルトンにとって、代わりにこれを成し遂げるのは大きな魅力だったと見られる。フェラーリ入りについて、同メディアは「2つのブランドの結びつきは、おそらくスポーツ史上、最もエキサイティングなパートナーシップであり、双方にさらなる利益をもたらすだろう」と綴った。

ジュゼッペ・ファリーナ(1952年)、ファン・マヌエル・ファンジオ(1956年)、アラン・プロスト(1990年)、ミハエル・シューマッハー(1996年)、フェルナンド・アロンソ(2010年)、セバスティアン・ヴェッテル(2015年)に次いで、フェラーリ入りした7人目の世界制覇経験者となるハミルトンが、チーム史上最高の黄金時代を創成したシューマッハーのような成功例となれるか興味深いところだが、同様に注目されているのが、ハミルトンが空けるメルセデスのシートを誰が手に入れるかだ。
前出の『PLANETF1.COM』は、ラッセルのチームメイト候補として可能性が高い順に、アレクサンダー・アルボン(ウィリアムズ)とフェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)、続いてカルロス・サインツ(フェラーリ)とエステバン・オコン(アルピーヌ)、大穴としてダニエル・リカルド(RB)、アンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス・ジュニアチーム所属のF2ドライバー)、ヴァルテリ・ボッタス(ザウバー)、ミック・シューマッハー(メルセデス・リザーブドライバー)、そしてなんとヴェッテルの名を挙げている。

F1は今月末に開幕する2024年シーズンに向けての準備に余念がないところだが、メルセデス代表トト・ヴォルフも驚いたというこの時期でのハミルトンの移籍発表が、この世界最高峰レースにより多くの話題と興味をもたらし、活性化させるのは間違いない。

構成●THE DIGEST編集部

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