「エース格としての期待しかない」佐々木朗希のブルペン投球に脱帽の侍J井端監督。“気になる投手”の進化ぶりにも言及!【ロッテ】

ロッテの佐々木朗希(22)が4日、今キャンプ2度目のプルペン入り。視察に訪れた野球日本代表・侍ジャパンの井端弘和監督(48)の前で、変化球を交えながら52球を投げた。

美馬学(37)や益田直也(34)など、ベテラン組と入れ替わる形でブルペンに姿を見せた佐々木朗希。捕手を座らせてから少しずつ投じるボールに力を込めていく。ミットが気持ちよく鳴るたび、小池翔大ブルペン捕手が「いい球ぁー!」と声を返す。20球手前ではフォークを連投し「今のはどうですか?」と、その精度を確認する場面も見られた。

そして、ちょうど20球を数えたところで投球を中断。マウンド後方に設置してあったカメラのような機器を、真剣な眼差しで覗き込んでいた。

「あれは、基本的にスーパースローの映像を見ています。自分が投げているフォームだったり、リリースだったりを確認していますね」

そう教えてくれたのは、佐々木と一緒にその映像を見ていた黒木知宏一軍投手コーチ(50)。スーパースローですぐに投球映像を確認できるメリットも説明してくれた。

「自分の中で投げたいボールがあったとして、それをどういうふうにリリースしているのか。それを見ることができるので、頭で考えてイメージしていることがちゃんと体現できているのか。そこをチェックして、ズレがあったならばすぐに修正できる。すごく便利な時代になってるなって思います」

今年の佐々木は、キャンプ中の調整を吉井理人監督(58)から一任されている。この日の20球でインターバルを設けるブルペン投球も、佐々木が自らの考えで行なっているとのことだ。

「ちゃんと自分の中で考えての調整、取り組みをやっているという感じはありましたね」(黒木コーチ)

黒木コーチの言葉から、チームの佐々木への信頼を感じとることができた。映像を確認し終えると再び投球を再開。スライダー、フォークと変化球を投じるたび、小池ブルペン捕手にその精度を確認していた。
トータル30球を過ぎたあたりで、井端監督がブルペンに到着。一気に報道陣も増える中でも、佐々木は自分のペースを崩さない。高く足を上げる佐々木特有のフォームで、1球1球丁寧に投げ続けた。そして52球目、投じたストレートに深くうなずいたところで、今キャンプ2回目のブルペン投球を終えた。

「あの距離(捕手の後ろ)で見るのは新人の頃以来」だという井端監督の眼には、佐々木の投球はどのように映ったのか。
「まだ仕上がってはいないと思いますけど、十分いいボールを投げていましたし、この時期にしては素晴らしいと思います。『ひとりだけ(プレートより)前から投げているんじゃないか? 近いな』って思うくらいでした。日本を代表するピッチャーなのは間違いない。エース格としての期待しかないと思います」

3月の欧州代表戦は、強化試合ということもあり招集予定はないようだが、井端監督は11月に開催が予定されているプレミア12への参加を早くも依頼したことを明かした。

「秋(プレミア12)がありますので、オファーは出したいなと。よろしくお願いしますとは(佐々木本人に)伝えました。本人も『まずはシーズンを怪我なくやるだけです』と言っていました」

そのほかに、井端監督が“気になる投手”として名前を挙げていたのが、右サイドスローの速球派リリーバー・横山陸人(22)だ。躍動感のあるフォームから繰り出される力強いストレートで、昨シーズンはキャリアハイの38試合に登板。井端監督の初陣となった昨年11月のアジアチャンピオンシップでは、代表メンバーにも選出。佐々木朗希と同じ2019年ドラフト4位で入団した高卒5年目の投手だ。

佐々木が投げ終え、ブルペンが少し落ち着きを取り戻したところでの投球となった横山。ストレート、スライダー、シンカーに加え、今年試しているカットボールも交えながらの40球。順調な仕上がりぶりを見せた。

「自分としては出力も出ていましたし、変化球もしっかり投げられていたのでよかったのかなと思います。(井端監督を)意識し過ぎて、力んでしまったところもあったので、そういうところはしっかり修正して、自分の投球モーションで投げるようにしていければいいかなと思います」 昨年、一軍で38試合に登板した経験を踏まえ、オフには増量を決断。その効果をこのキャンプでは早くも実感しているという。

「去年までこの時期、トラックマンで球速を見たら、良くて145キロだったんですけど、今は147とか148くらいまでは出ていました。そういう部分では体重を増やしたことによって、上がっている部分もあるのかなと思っています」

以前より、その名称を聞く機会も増えてきた計測機器「トラックマン」。ロッテのブルペンには3台が設置され、全投手というわけではないが、投手たちは時折その数値を覗き込みながら投球し、アナリストやコーチ陣たちと言葉を交わしている。横山もそんな一人だが、球速以外のデータはどう活用しているのか。
「ホップ成分だったり、今年新しく試しているカットボールの変化の具合だったり、いろいろ確認しながら、実際に受けているキャッチャーの方と話をして(感覚を)照らし合わせていければいいかなという感じです。数値上にはなりますが、真っ直ぐとの差だったりとかを見たりもしています。スライダーは結構(変化量などの)数値を重点的に見ています。シンカーは回転軸を意識して自分は投げているので、球種によっていろんなところを見ながらやっています」

横山によれば、まだキャンプ2回目ということもあって、今回のブルペンでのストレートのホップ成分は、まだまだ横山が納得のいくものにはなっていないという。ちなみにホップ成分が多ければ多いほど、打者からはストレートが浮き上がってくるように見え、捉えづらいボールとなるわけだ。

横山自身はまだまだだと話すが、視察した井端監督には「去年の秋に見た時よりも下半身を含めて、全体的にパワーアップしているように見えました。まだ全力ではないと思いますが、相変わらずボールの強さというか、重そうなストレートっていうのは変わりなかったですね」と、その進化とボールの強さは十分に伝わっていた。

去年11月に代表入りしたことで、再びそのユニホームを着たいという気持ちを、横山は強く持っている。

「(代表入りは)やはり特別なことだと思いますので、選んでいただきたい気持ちはあります。そのためには、チームで1番登板数が多いとか、防御率がいいとか(シーズンで)何かずば抜けた数字を出さなきゃいけないと思うので、そういうところを目指してやっていければいいのかなと思います」

同期の佐々木と同じ、世界最高峰の舞台へ。チームスローガンにあるように、まずは今シーズン「自分を超えていく」ことから始める。

取材・文●岩国誠

【著者プロフィール】
岩国誠(いわくにまこと):1973年3月26日生まれ。32歳でプロ野球を取り扱うスポーツ情報番組のADとしてテレビ業界入り。Webコンテンツ制作会社を経て、フリーランスに転身。それを機に、フリーライターとしての活動を始め、現在も映像ディレクターとwebライターの二刀流でNPBや独立リーグの取材を行っている。

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