「ゴースト血管」増やさない生活習慣とは? 京都市で心臓病や脳卒中などの非感染性疾患シンポ

毛細血管の大切さなどについて研究者が解説した非感染性疾患シンポジウム(京都市左京区・芝蘭会館)

     生活習慣の改善が予防につながる心臓病や脳卒中などの非感染性疾患(NCDs)をテーマとしたシンポジウム(アジア太平洋心臓病学会主催)が京都市で開かれ、働かなくなった毛細血管「ゴースト血管」と疾患、老化の関わりなど研究最前線が紹介された。

 同学会の松森昭理事長は、不健康な食事や運動不足、喫煙、過度の飲酒などが血管などの慢性炎症を引き起こし、NCDsをもたらす発症の機序を説明した。炎症マーカーのFLC(免疫グロブリン遊離軽鎖)の血液検査が有用であることを示すとともに、「運動や食事などの生活習慣の改善による健康長寿、アンチエイジングの効果を評価できる」と健康指導への活用に期待した。

 禁煙によって炎症レベルが低下し、心血管リスクの低下につながった研究も紹介された。

■重なる危険因子

 千葉大医学研究院の横手幸太郎教授は「老老介護」が増えている超高齢化社会の日本の状況を示した上で、「どの世代も生活習慣病対策は必要」と強調。若壮年期からの脳卒中と認知症の予防、高齢期における骨折や関節の病気などの予防を通じて介護を減らしていくことが必要とした。

 脳卒中や心筋梗塞などの原因となる動脈硬化について、高脂血症や糖尿病、高血圧、喫煙などが危険因子とし、「危険因子は同一患者に重なりやすい。危険因子が増えるほど心筋梗塞や脳卒中で死亡する危険が増す」と注意を求めた。危険因子をもたらす肥満と肥満症についても説明、保健指導プログラムを実施すると、体重減に応じて血糖値や脂質などが改善されるとの研究データを挙げ、生活習慣の改善による効果を示した。

 転倒による骨折予防についても説明。骨折を防ぐためにはサルコペニア(筋肉と筋力の低下)の予防が大切とし、タンパク質やロイシンをはじめとする必須アミノ酸などの摂取と筋肉トレーニングを勧めた。

■血流確保、運動と食

 大阪大の高倉伸幸教授(血液内科学)は、老化やがんについて毛細血管が深く関わっていることを説明した。人の血管は、総延長が10万キロもの長さがあるともいわれているが、95~99%が毛細血管という。加齢による毛細血管の劣化や減少によって、細胞に適切な養分と酸素の供給ができなくなる。毛細血管が機能しないと、薬剤が細胞に届かなくなったり、骨の形成更新が阻害されて骨粗しょう症を引き起こしたりすることを説明。血流の低下と認知症に関わりがあることも指摘した。

 このような「ゴースト血管(無機能血管)」にならないように血管構造を安定化する働きのある「Tie2活性化因子」を紹介。ヒハツ(インドナガコショウ)やシナモン、ルイボスに活性化物質が含まれているといい、研究が進んでいることを紹介した。

 最後に、血流を与える運動の大切さを示すとともに、「バランスの良い食事で生活習慣病の元凶を絶つ」と強調し、毛細血管老化を防ぐ生活習慣を提案した。

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 非感染性疾患(NCDs) 脳卒中や心筋梗塞などの心臓血管病、がん、ぜんそくや肺気腫などの慢性肺疾患、糖尿病など感染しない病気の総称。世界の死亡者の6割以上がNCDsによるものとされ、うち半数は心臓血管病による。高血圧や肥満、高血糖などをもたらす生活習慣の乱れ(不適切な食事、運動不足、肥満、ストレス、酒の飲み過ぎ、喫煙、睡眠不足)によって発症リスクが高まる。加齢や遺伝、体質も要因の一つとなる。

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