ジャンボ尾崎はジュニア世代に危機感 セレクションに“原石”はいたか?

尾崎将司は原石探しに目を光らせた(撮影/桂川洋一)

原英莉花、西郷真央らを輩出した尾崎将司のアカデミーの入門テストはシンプルだ。練習場の打席でスイングするジュニア選手をジャンボ自ら視察して選抜する。3日、4日に千葉市内で行われたことしの「ジャンボ尾崎ゴルフアカデミーセレクションsupported by ISPS HANDA」には中学3年から高校3年の男女計19人が参加した。

尾崎はテストの最後に羽根つきの素振り用スティックをジュニアに振らせていた(撮影/桂川洋一)

ジュニアは1人ずつ、尾崎の前でショットを放つ。ミドルアイアンで5球、1Wで3球、ウェッジで80ydを3球、30ydを1球。最後に先端に羽が4枚付いた棒を8回、素振りさせる。「自分の理想のスイングを3回、次の5回はマン振り(全力)で」というルールは、「人間は球がないと、『自分でこういうスイングをしたい』というのができる。マン振りは瞬発系、自分のヘッドスピードを上げる」狙いがあるからだ。

千葉市内の練習施設でジュニア選手に熱視線(撮影/桂川洋一)

セレクションを終え、日本ツアー通算94勝のレジェンドは参加ジュニアについて「ハッキリ言えば、少しずつレベルが下がってきている」と辛らつに語った。「今はパワーの時代。男の(ツアープロの)場合はキャリーで300yd飛ばないとダメ。女の子も230ydくらいキャリーしなくてはいけない。それに該当する人間は…2、3人だった」と振り返った。

原や西郷、これまでの門下生たちが当時、同様のメニューの出来がピカイチだったかと言えば、「いやいや、そんなことはない」という。「中学3年生とかであれば、鍛えられる。可能性がやっぱり見えるものでないと」。短い時間で潜在能力を見出そうと必死だ。

最近、気にかけているのが、今回の参加者に限らないジュニアの練習への取り組み方だという。体力トレーニングに始まり、地味な反復練習こそが上達への近道だと考えるだけに「球を打つことばかりが練習だと思っている」と警鐘を鳴らす。

「やる人間、続ける人間は、はっきりとした目的や目標がある。ただ、夢で終わる子が多い。目標は越えなければいけないものだと自分で考えないといけない。今の子どもはやっぱりスコア(重視)だからな。結果、(良い)スコアが出ないと手を上げてしまう。そこでひとつ、粘れるように。基本を、ひとつのことを続けることが成長には必要」。社会的な少子化問題もあり、尾崎にとっても“原石”の発掘は困難になっている。

15歳の香川友。憧れはフィル・ミケルソンと大谷翔平。世界のオータニさんにちょっと似てない?(撮影/桂川洋一)

苦言を多く呈したが、ことしはひとりの選手に目を奪われた。千葉県出身の香川友は今春の中学卒業とプロ転向を控えた15歳。すでに300yd近い豪快な1Wショットと、優れたウェッジワークの技術で注目されている。

尾崎とはこの日が初対面だった香川は、披露した実技について「50点くらい。ドライバーは30点くらいでした」と厳しく自己採点。「世界ランク1位を目指したい。海外には絶対に、アメリカツアーに行きたいです」という大器を、ジャンボは「まあ、今回のセレクションを受けた男子ではやっぱり一番良い」と高く評価していた。(編集部・桂川洋一)

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