スペインの至宝ペドリ。挫折を味わいバルサで輝く逸材のストーリー

バルセロナ MFペドリ 写真:Getty Images

現在21歳のスペイン代表MFペドロ・ゴンサレス・ロペス(通称ペドリ)は、2020年に17歳という若さでスペイン1部バルセロナの中盤の座を勝ち取った逸材だ。

170cm、64kgと、決して体格に恵まれているとはいえないペドリ。昨今は度重なる負傷による戦線離脱も強いられているが、どのような経緯でバルサの象徴になったのか。ここではペドリの物語についてみていく。


バルセロナのロゴ 写真:Getty Images

イニエスタに憧れた幼少時代

ペドリは、スペインのカナリア諸島に位置するテグエステというサッカーの町に生まれた。家族はバルセロニスタ(バルサファン)で、祖父は地元ファンクラブの創設者であった。

両親の影響でバルサファンになったというペドリのアイドルは、レジェンドMFアンドレス・イニエスタ(現UAE1部エミレーツ・クラブ)だ。2002〜2018年にかけてバルサで黄金時代を築き、2010年にはスペイン代表をワールドカップ初優勝にも導いた。

過去のインタビューでは、イニエスタの髪型にしようとした過去を明かしているペドリ。父親と床屋に行ってイニエスタの髪型を頼むも、父親が「あれは、禿げているんだ。髪型ではないよ」と言ったという冗談を交えたエピソードが語られている。

髪型こそ真似することができなかったが、それでも気にしないとイニエスタを愛していたペドリ。地元のアマチュアクラブ、UDテゲステに所属していたが、9歳の時にはプレースタイルがイニエスタのようだと言われていたという。


MFペドリ(ラス・パルマス所属時)写真:Getty Images

プロ入り前の紆余曲折

ペドリは幼少期から、サッカーの戦術も技術も他の子供たちとは比較にならないレベルに達していた。順風満帆な道のように思えるかもしれないが、2020年にバルサに加入を果たすまでは紆余曲折があった。

まずはプロを本気で目指すようになった10代前半、地元の有名クラブであるCDテネリフェ(スペイン2部)の入団をあっさり拒否されてしまった過去がある。「身長が低くガリガリだから」という理由で、ペドリはかなりのショックを受けたという。

さらに2018年2月、15歳の時にはレアル・マドリードのセレクションを受けた。しかし当日、雪の影響で予定されていた日程が短縮され、また凍っていた悪条件のピッチが実力を妨げることに。体格で見劣りしていたペドリは、クラブのレベルに達していないという理由で不合格になった。

悔しさをバネに同年、予想以上の活躍をしたペドリ。過去に入団拒否されたテネリフェからオファーが届いたが「今も背が低くガリガリだから」と告げてオファーを断り、ライバルチームであるUDラス・パルマスのユースに加入したのである。

ユースチームで1年間プレーした後、2019年夏にトップチームのぺぺ・メル監督に才能を見出されたペドリは、16歳で4年契約を結びプロの道を歩むことに。スペイン2部リーグ2019/20シーズン開幕戦(2019年8月18日)SDウエスカ戦(1-0)にて先発出場を果たしてデビュー。同年9月19日、スポルティング・デ・ヒホン戦(1-0)にて、後半17分DFアルベルト・デ・ラ・ベジャのアシストを受け、右足のシュートでクラブ最年少記録となるプロ初ゴールを挙げた。

同2019/20シーズンは、チーム最多の36試合に出場したペドリ。このラス・パルマスでの活躍により、複数のクラブが獲得に動いたのだった。

バルセロナ MFペドリ 写真:Getty Images

バルセロナへの移籍と最年少記録

ペドリに転機が訪れたのは、2019/20シーズン開幕前のプレシーズン期間中だった。バルサで2年間スカウトをしていた人物が、ラス・パルマスにすごい選手がいるとユースチーム運営者に報告。バルサ側は、トップデビューをまだ果たしていなかった選手の大金を支払っての獲得に懐疑的だったという。

しかし2019年9月、ペドリの2020年7月からのバルサ入団が発表された。移籍金500万ユーロ(約6億円)、ボーナスを含めると最大で2500万ユーロ(約30億円)での契約。ラス・パルマスは、逸材であるペドリを売り込まなければいけないほど、財政難が深刻だった。それまでにペドリの人気は国内に留まらず、PSVアイントホーフェン(オランダ1部)やバイエルン・ミュンヘン(ドイツ1部)など複数の国外強豪クラブが興味を示していた。

2020/21シーズンはバルセロナB(スペイン3部)に合流予定だったペドリだが、当時のロナルド・クーマン監督(現オランダ代表監督)がその才能に惹かれトップチーム合流を果たす。想定していなかったバルサは、ペドリの乗用車の用意もしておらず、初めは友人のタクシーでスタジアムまで通っていたそうだ。

かくして2020/21シーズン、わずか17歳でラ・リーガ開幕戦(2020年9月28日)のビジャレアル戦(4-0)でバルサのトップチームデビューを果たしたペドリ。UEFAチャンピオンズリーグ(CL)フェレンツヴァーロシュ戦(5-1)では、クラブ史上3番目の若さでCL初得点を記録した。

最年少ながら卓越したプレー判断とオフ・ザ・ボールの質、ボールコントロールの巧みさでクーマン監督の信頼を掴み、不動のスタメンへと定着したのである。


バルサにとって欠かせない選手になっているペドリだが、決して順風満帆な道のりではなかった。そして2023/24シーズンは、度重なる筋肉系の負傷に苦しんでおり、肉体改造や食習慣の改善などに取り組んでいるものの長きに渡り戦線離脱を強いられている。

憧れのクラブでプレーする喜びは、どれだけ嬉しいものか。身体的な苦難と闘いながらレジェンド達が築き上げてきたバルサを今後どのようなクラブにするのか。今後のペドリにも引き続き注目だ。

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