公務員の退職金って民間より多いの? 気になる平均支給額を比較!

退職金は会社員だけのものではない。公務員も労働の対価として退職金が支給される。全体の奉仕者として長く社会に貢献した分、ひそかに退職金に期待する職員は多いだろう。

民間企業と同じく、公務員の退職金は収入が大きいほど、また勤続年数が長いほど大きくなる。また退職事由も退職金の水準に影響を与える。

公務員は退職金をどれくらい受け取れるのだろうか。計算方法と実際の支給額の平均を紹介する。また公務員の年金制度についても紹介したい。

公務員の退職金の計算方法

国家公務員の退職金は以下のように計算される。なお地方公務員は地方自治体が定めるものの、国家公務員に準じるとされている。

【国家公務員の退職金の計算式(特例を除く)】

基本額+調整額
※基本額:退職日の俸給月額×退職理由別・勤続期間別支給割合
※調整額:区分(第1号区分~第11号区分)に応じて定める額(調整月額)のうち、額が多いものから60月分の合計

出所:人事院 退職手当制度の概要

基本額は退職日の収入(俸給月額)と退職理由別・勤続期間別支給割合の積だ。退職理由別・勤続期間別支給割合は、主に勤続年数と退職事由で決定される。

勤続年数は長いほど退職金を増額させる。退職事由は定年や応募認定による早期退職などで退職金が増える傾向にある。自己都合の退職は退職金が低い傾向だ。

【退職理由別・勤続期間別支給割合の早見表(一部抜粋)】

※2018年1月以降の退職(調整率を乗じたもの)

出所:内閣官房 国家公務員退職手当支給率早見表

調整額は在職中の貢献度に応じた加算額だ。在職中の各月の調整月額のうち、多い順に60ヵ月分を合計した額が加算される。

ただし勤続9年以下の自己都合退職者には調整額の支給はない。また勤続4年以下の自己都合以外の退職者、勤続10年以上~24年以下の自己都合退職者は調整額が半額になる。

【国家公務員の退職金の計算例(勤続38年)】
・退職日の俸給月額:38万7400円
・退職理由別・勤続期間別支給割合:47.709
・調整額:182万0400円
・退職金:38万7400円×47.709+182万0400円=2030万2866円
※1円未満切り捨て

出所:人事院 退職手当制度の概要(退職手当の計算例)

公務員の退職金の相場

公務員は退職金をどれくらい受け取っているのだろうか。国家公務員と地方公務員に分け確認する。

国家公務員(常勤職員)は以下の通り。勤続25年~29年で1663万円、勤続30年~34年で1991万となっている。比較できる勤続34年までは民間企業の大卒・大学院卒より多くの額を受け取っているようだ。

【国家公務員の1人あたり退職金(常勤職員)】

※退職事由:定年

出所:内閣官房 退職手当の支給状況(2022年度)

【民間企業の1人あたり退職金(大学・大学院卒)】

※退職事由:定年、年齢:45歳以上(管理・事務・技術職)

出所:厚生労働省 就労条件総合調査(2023年)

地方公務員は以下の通り。一般行政職員と技能労務職員を除き2000万円以上の退職金が支給されている。

【地方公務員の1人あたり退職金(全国)】

※勤続年数:25年以上、退職事由:定年退職・その他、年齢:65歳以上
※1.警察官は60歳

出所:総務省 地方公務員給与の実態(2022年)

年金が会社員と一本化 公務員の年金はどうなる?

退職金に関連し、公務員の年金についても紹介したい。

公務員はかつて年金制度も民間企業と異なっていた。しかし現在は会社員と同様の制度となっている。

会社員と公務員の公的年金は2階建てだ。1階部分はいずれも国民年金だが、2階部分は会社員が厚生年金、公務員が共済年金と分けられていた。しかし2015年に年金制度の一元化が図られ、共済年金は厚生年金に統一された。

厚生年金に一本化されたことで職域部分の支給も廃止された。共済年金の職域部分とは、公的年金に上乗せする3階部分の年金だ。大企業などで導入される企業年金に相当する。職域部分の支給から、公務員の年金は一般企業より手厚い傾向にあった。

年金の一元化に伴い職域部分は廃止された。ただし公務員の年金が直ちに減少したわけではない。職域部分に相当する3階部分として「年金払い退職給付(退職等年金給付制度)」が新設されたためだ。厚生年金と別に収入から一定額が積み立てられ、退職後に年金または一時金として受け取れる(出所:地方公務員共済組合連合会 年金払い退職給付)。

また職域部分も支給が直ちに停止されたわけではない。2015年9月までに1年以上の共済年金の加入期間がある場合、その加入期間に応じ職域部分に相当する「経過的職域加算額」が支給される(出所:地方公務員共済組合連合会 経過的職域加算額)。

3階部分の支給があることを考えれば、公務員の年金は大企業並みに手厚いといえるだろう。

なお年金払い退職給付の積立率の上限は1.5%だ(労使合計)。18.3%の厚生年金と比べると積立率は低い。公的年金と比較し支給額は小さいため注意したい。

【年金払い退職給付のモデル年金(2018年財政再計算)】
・標準報酬月額:40.5万円
・加入期間:40年
・受取開始年齢:65歳
・給付算定基礎額:402万円
・支給月額:1万6007円
※積立総額の内訳:積立額384.4万円、利子17.6万円
※支給月額の内訳:終身年金部分7466円、有期年金(20年)部分8541円

出所:国家公務員共済組合連合会 退職等年金給付制度の平成30年財政再計算および財政検証(平成29年度末)の結果について

文/若山卓也(わかやまFPサービス)

若山 卓也/金融ライター/証券外務員1種

証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。


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