ハミルトンの“考えの変化”を尊重するメルセデスF1代表。一方でフェラーリ移籍を決断したタイミングは「予想外」

 メルセデスF1のチーム代表を務めるトト・ウォルフは、ルイス・ハミルトンとメルセデスとの間にある契約解除条項を認めることのリスクを認識していたと述べているが、キャリアの最後にフェラーリに移籍するというハミルトンの決断は「少しの賭け」だと感じている。

 騒ぎは落ち着いたが、ハミルトンのフェラーリ移籍の衝撃はメルセデスに残っている。チームはスタードライバーの喪失に立ち向かっているが、ウォルフは最新の契約に解除条項を盛り込んだことからこのリスクは想定済みだったと認めている。

 2023年8月に締結された2年間の延長契約を覚えているだろうか? その契約はハミルトンの才能を確保しておくためだけのものではなかった。ある種の譲歩案が、二者に柔軟性を与えたと考えられている。メルセデスのパフォーマンスが低迷した場合、両者は他の選択肢を模索する可能性がある。また、彼らはハミルトンがタイトル獲得の夢が別の場所にあると感じた場合に、彼を失うリスクがあることを認識していた。

 時は2024年になった。フェラーリは、ハミルトンに子どもの頃からの夢を叶え、象徴的なスクーデリアで歴史を塗り替えるチャンスを与えた。魅力は大きなものだった。ハミルトンは先週の水曜日にオックスフォードのウォルフの自宅で行われた個人的なミーティングで彼にこのことを知らせ、解除条項を行使した。

 ウォルフは、ハミルトンの突然の心変わりのきっかけとなった理由について推測することしかできなかった。

「クリスマスの時期に入ったとき、我々はしっかりと団結していた」とウォルフは金曜日にメディアに語った。

「公の場でもチーム内でもそのように話してきた。なぜ気が変わったのか、ルイスに尋ねる必要がある」

「彼が私に話したことは、完全に理解できる。彼は新しい挑戦を必要とし、異なる環境を探していた。そしてこれが何か他のことをする最後の可能性だったのかもしれない」

「我々は大人だ。短期契約を結べば、双方にとってプラスになることは分かっていた」

「我々はこれ以上コミットすることはできなかった。彼は解除のオプションを行使することにした。我々は、考えを変えることを完全に尊重する。様々な状況があった」

「フェラーリに乗り換えて、彼のキャリアで最後の仕事をするのかもしれないし、少々の賭けに出るのかもしれない。私はその決断を理解できる」

2023年F1第23戦アブダビGP トト・ウォルフ代表&ルイス・ハミルトン(メルセデス)

 木曜日に発表された短い声明のなかでフェラーリは、ハミルトンが2025年に“複数年契約”の下でチームに加わると述べた。メルセデスがハミルトンにそのような条件を与えることを望まなかったことを考えると、ウォルフはその件がハミルトンの決定に大きく関わっていた可能性を示唆した。

「おそらく検討事項のひとつとして、フェラーリと長期契約を結び、キャリアの終わりに非常に大きな挑戦をする機会があったのだと思う」とウォルフは続けた。

「フェラーリでの機会がよりよいものだったのか、それとも我々と同じだったのかという話はしなかった。何とも言えないと思うからね」

「結局のところ、彼はもっとも成功しているドライバーだ。我々はセンセーショナルな期間にともに旅をしてきたし、それは歴史の本にも、メルセデスの歴史にも残るだろう」

2020年F1第14戦トルコGP ルイス・ハミルトン(メルセデス)が優勝、7度目のタイトルを獲得

 ハミルトンがフェラーリから誘われているといううわさは、何カ月も、もしかしたら何年も前からくすぶっていたが、ウォルフは最終的な決定がまったく予想外ではなかったことを認めている。結局のところ、ハミルトンのようなドライバーにとって、スクーデリアの魅力は強く引きつけられるものだった。

 しかしウォルフは、ハミルトンの決断のタイミングは完全に思いがけないものだったと告白した。

「驚いたのは、数日前にうわさを聞いていたのに、私は彼と予定していた朝食まで待ちたかったということだ。そして、彼がニュースを伝えたのは水曜日の朝だった」

「私に対してはとても率直になれる。私も率直だからだ。だから、これが自分がやろうとしていることだと彼が言ったら、それは事実だ。私は逆に彼を説得しようとはしなかった」

「しかし今後について、我々はどのようにコミュニケーションを行うか? タイミングは? チームを最善の形で守るにはどうすればよいだろう? そして、ふたりのドライバーと一緒に、あまり気まずい思いをせずに成功するために、この2024年をどうすれば守ることができるだろうか?」

 ウォルフはハミルトンの決断に失望するか、傷ついたかと尋ねられたが、「いや、傷つくようなことはない。私は冷静さを保ち、2024年シーズンをどう管理していくのが最善か、そして今後どうあるべきかを決める必要があるからだ」と答えた。

「私が非常に好ましく思っている人物がいなくなるわけではない。彼はチームを変わるだけだ。契約を締結するにあたっては、我々はそれが起こり得ることを強く意識していた」

「タイミングは意外だったかもしれない。私にとって予想外の出来事だった。そしてF1では、機敏性と状況の変化を受け入れることが重要だと私は考えている」

トト・ウォルフ代表(メルセデス)

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