毎年「多い」と聞く気がする花粉の飛散量…実際どうなっている?気象予報士が解説

花粉シーズンを迎えると報道で「今年の花粉は多い!」と聞くことが多く、なんだか毎年「過去最大」などと言われているような気がします。

実際、花粉の量は年々増えているものなのでしょうか?そして今シーズンの花粉はどうなる…??

今回は、気象予報士・防災士・野菜ソムリエとして活躍する植松愛実さんに、花粉の意外なしくみと今シーズンの最新情報を教えてもらいます。

長い目で見ると花粉の飛散量は増えている

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日本人の花粉症の原因となっている植物のうちメジャーな存在であるスギやヒノキは、じつは植えられてすぐに花粉を出せるわけではありません。

だいたい植林されてから数十年で、花粉をしっかりつくってたくさん飛ばせるように成長します(人間にとってうれしい話ではありませんが…)。

日本各地に植えられているスギやヒノキの木は戦後から高度経済成長期にかけて、つまり1950~1970年代に植林されたものが多いですから、おおむね1990~2000年代には花粉を出せる樹齢になっていたことになります。

そのため、たとえば50年前と現代とで比べると、現代のほうが花粉の飛散量は多いのです。

とはいえ、おそらく皆さんが感じている「毎年花粉が多いと言われる気がする」というのは、もちろん50年前と比較した話ではありませんよね。

このカラクリには、「夏の気候」が大きく関係しているのです。

毎年「多い」と言われる気がするワケは?

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スギやヒノキの花粉の飛散量は、その半年前の夏の気候にかなり左右されます。

しかし、夏の気候とひとくちに言っても、同じ日本のなかでも例年よりかなり暑かった地域もあればさほど暑くなかった地域もありますし、雨の量も地域ごとに全然違います。

つまり、花粉の飛散量が例年あるいは前年より多いか少ないかは、地域によってかなり異なるのです。

そして全国放送のテレビ番組やネットニュースは当然ながら、全国のなかでも特に大変な思いをすると予想される地域のために報道することになりますから、ふだんより多く飛散する場所の話題がどうしても多くなります。

そのため、「今年の花粉は多い」という話ばかり毎年聞いているような気がしてしまうのです。

花粉が増える気候とは?

スギやヒノキの花粉飛散量は、その半年前の夏が暑くて、晴れた日が多くて、そして雨が少ないほど多くなります。

日照時間が十分にあって気温も十分高ければ、木々がしっかり花芽(はなめ)をつくることができるからです。

逆に冷夏の年は木々が花芽をつくることよりも枝をしっかり伸ばすことに注力するため、その半年後に飛ばす花粉が少なくなるのです。

なお、夏の天候だけでは実際に飛ぶ花粉の量を予測しきれないため、気象会社や医療機関などが花粉の飛散量予測を出す場合には、冬の間にスギ林やヒノキ林で木々の様子を確認してから発表していることが多いです。

2024年シーズンの花粉はどうなる?

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2024年の花粉シーズンの半年前、つまり2023年夏を思い出すと、もちろん地域差はありますが、全体的に猛暑のニュースが多かったことが思い起こされます。

一方で台風の接近や上陸が例年より少なかったこともあり、晴れの日が多かった地域が多いのも特徴。
つまり、大半の地域で、花粉は例年より多くなりそうです。

ただ、じつは昨シーズン、つまり2023年2~3月頃の花粉シーズンは、関東以西を中心に近年まれに見るほどの大量飛散の年でした。

そのため、「例年よりは多いけど、前年と比べると特別多いわけではない」という地域が多くなりそうです。

花粉の本格的な飛散時期が近づくと、複数の気象会社が毎週最新の予測を発表しますので、ぜひ一番新しい情報を手に入れて対策に役立ててください。

■執筆/植松愛実さん
気象予報士と出張料理人の両面で活動中。気象・防災に関するヒントのほか、野菜ソムリエ・食育インストラクターとしておいしい食材のおいしい食べ方を発信中。インスタグラムは@megumi_kitchen_and_atelier。

編集/サンキュ!編集部

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