アジアカップで準々決勝敗退に終わった日本代表。
敗れた相手がランキング的にほぼ同等のイランだったとはいえ、昨年からの快進撃を考えると物足りない結果、そして内容だったと言わざるをえない。
そんな今大会において、評価を上げた5名の日本代表選手を紹介する。
冨安健洋
今大会の日本代表において紛れもなくベストプレーヤーだった冨安健洋。彼の鬼神のごときプレーが、結果で報われることを多くの人が願っていたに違いない。
2018年にA代表デビューを飾った当時から圧倒的な能力でピッチに君臨。常にチームの中心的存在だった25歳だが、カタールワールドカップ以降はさらに一皮むけたと言えるだろう。
吉田麻也という偉大な存在がいなくなったこともあってかリーダーとしての振る舞いが目立ち、周りに与える影響力を自ら行使する場面が増えている。
吉田が付けていた22番を今大会から受け継いだこともその覚悟の表れ。もしかしたら次のワールドカップまでの間にキャプテンマークも遠藤から冨安の手に渡るかもしれない。
毎熊晟矢
今大会、日本代表を救った選手の一人。初のビッグトーナメントで毎熊が見せたプレーは、Jリーグでプレーする多くの日本人選手に勇気と希望を与えるものだった。
昨年から不動だった菅原由勢がまさかの不調に陥ったなか、3戦目のインドネシア戦に先発すると、まるでJリーグの試合でプレーしているかのように自然な形で右サイドを支配した。
その存在感が際立った一方で、おそらく最後のイラン戦の出来には何一つ満足していないだろう。バーレーン戦から中2日でのフル出場。らしさも見せたが、とくに後半は今の限界を知る場にもなったに違いない。
欧州組が数多くプレーする日本の試合には、海外のスカウト陣が熱い視線を送っていたはず。毎熊が今後どのような決断を下すか注目される。
旗手怜央
鎌田大地と田中碧を欠いた今回のアジアカップ。中盤のリンクマンとして守田英正にかかる負担が増大するなか、その役割を担える素養を見せたのが旗手怜央だ。
五輪代表時代を含め、マルチロールの“便利屋”として考えられることが多かった旗手。しかし川崎フロンターレからセルティックを経て、中盤の主役になれるだけの戦術眼を身に付けつつある。
サプライズ的に招集された今大会では、2戦目のイラク戦に途中出場するとコーナーキックで遠藤航のゴールをアシスト。続くインドネシア戦とバーレーン戦には先発してみせた。
残念ながら右足ふくらはぎの肉離れで戦線離脱を余儀なくされたが、「彼が健在であれば…」と思わせるだけのプレーを旗手が見せたことは日本代表にとって確かな収穫だった。
中村敬斗
三笘薫が怪我を抱えたまま招集された今大会。世界的ドリブラーの復帰を多くの人が待ちわびていたが、中村敬斗の存在がその時間を長く感じさせなかった。
大会まで1試合1点のペースでゴールを積み重ねていた23歳は、初戦のベトナム戦でいきなり大仕事。前半終了間際に値千金の逆転弾を叩き込み、A代表で54年ぶりとなる「デビューから6試合で6ゴール」を達成した。
あのスーパーゴールのように、中村は強力な武器を持つがゆえにそれを生かすための関係性を作る上手さが光る。左サイドバックを筆頭に周囲に判断を促す余白のあるプレーが特徴だ。
三笘に中村、そしてパリ五輪世代にも三戸舜介と、魅力的なタレントが揃う左サイドはしばらく日本代表の強みとなりそうだ。
上田綺世
昨年まで激しいポジション争いが展開されていたFWだが、アジアカップを終えて上田綺世が頭一つ抜け出したことは間違いない。
今大会5試合出場で4ゴール。とくにバーレーン戦では、1点差に追い上げられた直後の追加点でチームに安堵をもたらした。またセットプレーでの高さも攻守において効いていた。
とはいえ、プレー全体を見れば「今季まだ1点しか決めていないフェイエノールトの控えFW」に過ぎないのも事実。さらに上に行くためには周囲と“つながり”を作るための技術と判断力が必要だ。
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エースストライカーと呼ばれる存在になったからこそ、これからが勝負。下の世代には楽しみな大型FWが多いだけに、彼らの目標となり続ける存在になってほしい。