清水建設/メタバースに建物再現、遠隔地から臨場感高く諸検査

清水建設は施工中の建物をリアルに再現した仮想空間に入り、遠隔地から建物の諸検査が実施できる「メタバース検査システム」を開発した。建物の3Dスキャンモデルと設計BIMデータを融合したメタバース(3D仮想空間)、両者の整合性を確認するチェックツールで構成。VR(仮想現実)ゴーグルを着用することで建物内を自由に歩き検査が行える。
メタバース検査システムは日本建築センター(BCJ)の指導と積木製作(東京都黒田区、城戸太郎社長)の協力を得て開発した。
清水建設は2019年からBIMデータを活用した建築確認申請や中間・完了などの諸検査に取り組んでいる。既にAR(拡張現実)技術を使いタブレット端末で検査を遠隔化するシステムを開発済み。BCJから評価を得ているが、視野の制約をなくし臨場感を高めることが課題だった。
メタバース検査ではクラウド上の建築確認を受けたBIMデータと施工中建物の空間をスキャンした3D点群データを結合し、メタバースを構成する。
VRゴーグルを装着するとメタバースに入れ、コントローラーの操作で建物内や周囲の任意場所へ瞬時に移動できる。鳥瞰(ちょうかん)など現実にはない任意の視点から諸検査が可能。遠隔地からアバターとして仮想空間上の関係者との音声会話や、クラウドからダウンロードした工程写真、各種検査報告書などの書類データ確認も行える。
整合確認を行うツール「xRチェッカー」がBIMデータと点群データの整合を即座に自動計測し、設定した許容値を超えた差分を色分けで表示する。実際の施工物件で検証を行った結果、改善点が認められるものの、BCJから「実用に寄与できる」との評価を得ている。
同社は「遠隔検査の普及に弾みをつける試金石になる可能性を秘めている」と手応えを感じており、将来的にシステムを一般公開し、国内の建築生産の効率化に寄与していく考えだ。

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