【漫画】高校一年生の春、初恋の人と再会ーー純粋な感情が交差するSNS漫画の続きが気になる

高校一年生の春、初恋の人と再会したーーそんなのモノローグから幕が上がる物語『君との日々を縫うように』が2024年1月にXで投稿された。同級生の少女に恋心を抱く少年は、とあるコンプレックスも抱いていた。しかし彼女とのやり取りの中で、少年の思いは次第に変化していく。

本作は作者・甘雲むうさん(@mou_illust)が過去に描いた作品をリメイクした漫画だという。本作を創作したきっかけ、この物語のつづきについてなど、話を聞いた。(あんどうまこと)

ーー本作を創作したきっかけを教えてください。

甘雲むう(以下、甘雲):本作は3年前に描いた短編漫画をリメイクした作品です。過去の作品をSNSに掲載したら漫画の編集者さんからお声がけをいただき、漫画賞に応募するための作品として過去作をベースに本作を描き上げました。

私は自分が描きたいシーンをダラダラと描いてしまい、作品全体のページ数が伸びてしまうことが多くありました。漫画賞では作品のページ数に制約があるので、必要なシーンや重要なところだけを丁寧に描き切ることを意識して本作を描きました。

ーー印象に残っているシーンは?

甘雲:物語のクライマックスで牧生さんが話す「周りにどう思われても/好きなことをしてる時の自分のこと、わたしは好きだな…って。」という台詞は、歩くんの心に一番刺さった台詞であり、本作で最も重要なシーンなので印象に残っています。

また物語の序盤で牧生さんのことを「…………薔薇のつぼみ…みたいな人。」と歩くんが話したあとに描いた、周りのクラスメイトたちの時間が止まる1コマも思い入れがあります。少女漫画でよく見かけるシーンとして私も表現してみたいと思っていたので、自分の作品に取り入れることができてよかったです。

ーー作中ではたびたび「バラ」が登場していました。

甘雲:過去に描いた作品からカットした部分ではあるのですが……歩くん家のお花屋さんに牧生さんが入る際、人見知りであることから彼女の頬が赤くなってしまうシーンがありました。そんな牧生さんを見て、歩くんは彼女への印象として赤いバラを想起しました。

ただ牧生さんの初々しさや小柄な姿から、歩くんはバラの「花」ではなく「つぼみ」という言葉で彼女を表現しました。バラはお花屋さんでも人気な花ですし、個人的にも好きな花なので、牧生さんのイメージに合うかと思い彼女を表すモチーフとしてバラを選びました。

また物語の中盤で歩くんはお花屋さんが似合わないとクラスメイトに言われてしまいます。不意な一言で傷つくことは“心に刺さる”といったイメージがあるので、歩くんの心情を表現するためこのシーンでもバラをつかい、指に棘が刺さる描写を入れました。

ーー本作のラストシーンを描くなかで意識したことは?

甘雲:ラストシーンは本作をつくるうえで最初に考えていたシーンであり、すごく悩んだシーンでもあります。作中に登場する歩くんの友人が話していたように、歩くんから告白をする結末も候補としてあったのですが、この2人の関係としては少し急展開かと思い……。

本作のテーマは歩くんが抱くコンプレックス、周りから見て自分には花が似合わないという思いを解消し、歩くんが少し前向きになれるというものでした。そのため牧生さんの言葉で前向きになれた歩くんが、自分家のお花屋さんに誘うという結末で幕を閉じました。

牧生さんの返事を描かなかったのは読者の方に「続きを読みたいな」と思ってもらいたいと思ったからです。

ーーこの物語のつづきについて、教えてください。

甘雲:本作の題材となった過去作も含め、この物語は同人活動として描いていたものを本にまとめており、2冊分の続きを描いています。ただ、この作品をもっと良くして、商業的に連載できればいいなと思っています。

本作では歩くんと牧生さんが少し仲良くなれたというところで終わっていますが、文化祭を一緒に過ごしたりなど、2人にとって青春の1ページとなるシーンもたくさん描きたいです。もしも商業的に連載することが叶わなくても、同人作品として2人の物語を描いていきたいという思いがあります。

ーー今後の目標を教えてください。

甘雲:自分が1番好きなことで周りの人に喜んでほしい、ということが目標です。作品に登場するキャラクターのことが自分は好きですし、自分が好きなキャラクター・作品で読者の方に甘酸っぱい青春時代を思い出してもらったり、ほっこりとした気持ちになっていただけるような漫画を描いていきたいです。

(取材・文=あんどうまこと)

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