【衆院予算委】首相の姿勢問われる(2月6日)

 政治とカネ問題に対する不信感を、岸田文雄首相はどの程度深刻に受け止めているのだろうか。自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を巡る5日の衆院予算委員会での答弁で、岸田首相は政治改革の具体的な方向性を依然示さなかった。内向きの慎重答弁に終始し、国民の疑念に正面から向き合う姿勢が伝わらなければ、改革への主導力が疑われる。新年度予算案をはじめ、能登半島地震への対応など重要課題が待ち受けている。もっと危機感を持って対処すべきだ。

 立憲民主党の岡田克也幹事長らは裏金の実態解明と、疑惑を持たれた自民党の派閥幹部らの責任をどう追及するかをただした。しかし、党の聞き取り調査を待って説明責任を果たす、などと述べるにとどめた。

 党所属の全議員を対象に裏金受領の有無を確認するアンケートを週内に実施し、来週早々に取りまとめる考えも示しはした。今国会は政治改革が焦点なのは分かっていたはずだ。議論を深め、国民の納得する形で政治とカネの問題に決着をつけなければ、予算案や他の審議に影響が及びかねないのは明らかだ。裏金問題への対応はあまりに鈍くはないか。

 使途の公表義務のない「政策活動費」を巡っては、政治活動の自由を挙げる場面が繰り返された。「(今回は)政治資金パーティーが問題であり、政策活動費ではない」といった趣旨の発言には驚くばかりだ。不信感はそもそも政治資金の使い方、在り方全般に向けられているのではないのか。事態を矮小[わいしょう]化して済む次元ではないはずだ。

 野党はもちろん、与党の公明党も独自の改革案を打ち出している。5日の衆院予算委で問われた岸田首相は、自民党政治刷新本部の中間取りまとめを持ち出すだけで、具体論を語ろうとはしなかった。

 共同通信社の全国電話世論調査では、中間取りまとめによっても自民党は「信頼回復できない」が8割強に達した。政策活動費については、9割近くが使途の公開を求めていた。最大与党が動かなければ改革は進まないのが国会審議の現実としてある。岸田首相が猛省と信頼回復を口にするだけでは始まらない。改革への実行力をきちんと示してほしい。(五十嵐稔)

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