福地茂雄さん死去 長崎県の振興に力添え 「誠実」「頼りに」惜しむ声

長崎伝習所の「自分新化講座」で、座右の書への思いを語る福地さん=2014年9月19日、長崎市茂里町、長崎ブリックホール

 長崎大経済学部卒で、アサヒビール(現アサヒグループホールディングス)社長やNHK会長を務めた福地茂雄さんは、学部卒業生でつくる瓊林会の会長を務めるなど長崎とのつながりを重んじ、本県の振興にも熱心だった。訃報が伝わった5日、親交があった人々からは感謝の言葉が聞かれた。
 瓊林会の会長は2001年から7年間務めた。同学年の藤木博さん(89)は、卒業後も福地さんが来崎するたびに食事を囲むなど親交が深かった。08年に福地さんがNHK会長に就任する前には相談を受け、背中を押したという。会長在職中に大河ドラマ「龍馬伝」が放映され、本県の活性化に一役買った。「誠実で偉ぶらない性格だった。まさか亡くなるなんて」と藤木さんは声を落とした。
 瓊林会会長在任中には、学部創立100周年の記念講演に当時の日銀総裁を招いた。同会の里隆光さん(77)は「『さすが福地さん』と感心した。飾らない性格で、あれこれ教えてもらい、頼りになる先輩だった」としのんだ。現会長でTOTO会長の喜多村円さんは「会員にとっての心のよりどころであり、さんぜんと輝く星だった」とたたえた。
 長崎市の「長崎伝習所」では、市民向け連続講座をプロデュース。幅広い人脈を生かし、経済界や芸能界から豪華な講師陣を呼び寄せた。当時の市長、田上富久さん(67)は「次の時代の人を育てるのにも熱心で『長崎を元気にしたい』と快く引き受けてくれた。おかげで長崎の文化度が高まった」と感謝した。
 「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」の世界遺産登録を目指すNPO法人「世界遺産長崎チャーチトラスト」の初代理事長を務め、経済界から後押しした。大石賢吾知事は「本県の発展のため多大なお力添えをたまわった。ご功績に深く敬意を表する」との談話を出した。

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