地域活性化に貢献した団体・個人に贈る総務省の2023年度「ふるさとづくり大賞」で、地元農産物の加工や販売を手がける長崎県大村市の「シュシュ」が最優秀賞(内閣総理大臣賞)に輝いた。野菜や果物をアイスなどに加工して販売するほか、グリーンツーリズムにも積極的な同社。山口成美社長(63)に活動の源泉や受賞の意義を聞いた。
-設立の経緯は。
大村市福重地区は以前からナシ狩りやブドウ狩りが盛んだったが、安定した所得のためにも一年中魅力ある地域にしたいと地元農家で考えた。2000年に「おおむら夢ファーム・シュシュ」(同市弥勒寺町)を開業。地域をまるごと売り込もうとしてきた。一大産地ではないが、だからこそ地産地消で一番旬のものを食べられる。
-受賞に際し「創造性に富む活動」と評価された。アイデアの源は。
これ以上農業を衰退させたくない。例えば、アイスを売っているのは牛乳を売るため。年々牛乳が飲まれなくなってきたが、それを無理に飲ませるのではなくアイスにした。プリンを作るのは牛乳と卵を、ドレッシングを売るのは野菜を食べてもらうためだ。さらにこの地に足を運んでもらい、農業の魅力を再認識してほしいと思っている。
-経営を続ける工夫は。
時代の流れに敏感に対応する。「こうあるべき」ではなく求められることに柔軟に応じる。当初は焼き肉をしていたが、牛海綿状脳症(BSE)の影響を受けバイキングに変えたところ、余りがちな旬の食材を生かせた。「大変」な時は「大きく変わる」時だ。
-受賞はどのような意義があると思うか。
私たちは大企業ではなく一般人。(全国の人に)「あんな田舎の人たちでもできたんだから、自分たちにも可能性がある」と自信を与えられるのではないか。「うちには何もない」と言っていても、種をまかなければいつまでも何もない地域のままになる。
-地元大村は今後どうなっていくべきか。
大村は長崎空港があるのに素通りされ、何もない町とよく言われる。だが、人口が増えているのは魅力があるから。食も豊かで恵まれているのに、地元の人がそう思っていない。移住者の視点も取り入れ、地域をまるごと売り込み盛り上げれば、さらにすてきな町になる。受賞により大村が全国的に注目されるので、もっと元気を発信していきたい。