もしキリストが生きていたら――変貌したキリスト教を描いた断罪アドベンチャー「ジ・インクイジター」オンラインプレビューイベント

Kalypso Media Japanが1月11日に実施した、2024年2月8日に発売予定のPS5/Xbox Series X|S/PC用ソフト「ジ・インクイジター」のオンラインプレビューイベントの模様をレポートする。

ポーランドの作家、ヤチェク・ピエカラ氏の「I, the Inquisitor」の世界観を元にした断罪アドベンチャーとしてリリースされる「ジ・インクイジター」。

今回のオンラインプレビューは、開発を担当するThe DustのマーケティングマネージャーPiotr Siemaszko(ピヨトル・シーマズゴ)氏によるプレゼンと、QAスペシャリスト・サウンドデザイナーのKonrad Giedrys(コンラッド・ゲドリス)氏によるゲームプレイという形で行われた。

Piotr Siemaszko氏
Konrad Giedrys氏

■生き返ったキリストが復讐を説く衝撃的な世界観

本作の最大の特徴は、誰もが知っている「キリスト教」の“もしも”を題材とした世界観にある。本作においては、イエス・キリストは十字架にかけられた後復活し、自らを迫害した人々への復讐を説いている。結果キリスト教は、不信仰者を容赦なく断罪する慈悲なき暴力の宗教と化している。

主人公であるモーディマー・マダーディンは、そのキリスト教に属する「異端審問官」と呼ばれる存在。吸血鬼の仕業とされる殺人事件の捜査のため、主な舞台となる都市・ケーニヒシュタインを訪れたところから物語はスタートする。

舞台となるケーニヒシュタインは、ドイツに存在する本作オリジナルの架空都市で、開発においては、16世紀のヨーロッパの建築を参考にしたという。モーディマーが最初に訪れることになるケーニヒシュタインの市場では、剣を手にしたキリストの石像という、現実と異なる歴史を歩んだことを感じ取れる意匠がいくつか見られる。

異端審問官であるモーディマーの持つ特殊な力が、隠された真実が脳裏に浮かぶ「幻視」と、重要な手がかりの場所を示す「祈り」の二つ。

今回のプレゼンでは、本作の重要な人物である処刑人・ローランドが商人から不気味な仮面を買おうとした際、幻視によって商人が嘘をついていることを見抜いたモーディマーは、祈りの力で幻視で見た手がかりである犬の首輪を入手するまでの流れが披露されていた。

なお、ケーニヒシュタインの街は、かなりの広さで作られているが、街全体を表示するマップのようなものが存在しない。

これは意図されたもので、街のいたるところに設けられた標識と、モーディマーがつけている日誌をヒントに、プレイヤーに向かうべき場所を見つけ出してもらいたいからだそうだ。ファストトラベル機能は存在するが、利用するには街の中に隠されたトンネルの入り口を最低2か所以上見つけ出す必要がある。

■パリィも重要なアクションバトル。異端審問官ならではの特殊なアクションも

ストーリーの謎解きや捜査といったアドベンチャー要素が強い本作だが、時折アクション形式のバトルが発生することもある。

今回のプレゼンでは、裏路地に入り込んだ時に襲いかかってくる野盗を剣で撃退する最初の戦闘と、狂気に支配されたローランドとの戦いが公開された。

モーディマーは本来、戦いはあまり得意ではないそうだが、強攻撃と弱攻撃、ガードといった、剣を使った様々なアクションは使用できる。

剣のモーションはかなり豊富で、敵の剣をガードで受ける際には、振られた方向にあわせて身体の向きや受ける刃の向きを変えたり、かなり細かい部分まで拘って作られている。パリィのシステムも存在し、パリィが成功した瞬間は一瞬動きがスローになる演出も気持ちよく、アクション面もしっかりと作り込まれている。

ボスであるローランド戦では、「聖なる灰」と呼ばれる特別なアクションが使用可能に。「聖なる灰」は、異端審問官のみが使用を許された特別なパウダーで、体力の回復、目眩まし、毒など状況に応じて様々な異なる効果を発揮する。

本作のボス戦は難易度高めに設定されており、適切な回避やガード、パリィを行えなければ厳しい戦いを強いられることになるという。ローランドはガード不可の攻撃を繰り出してくることもある上、最初のHPゲージを削りきったところに、第2のゲージが現れて再び戦いになるようで、かなりの強敵となりそうだった。

なお、現実世界(後述する<非=世界>以外でのバトル)においては、体力ゲージにあたるUIが存在しない。変わりにダメージを受けると、画面の両端から血しぶきのような表示が出る演出になっており、この血飛沫の濃さが現在受けているダメージ量を表しているという。

■生者と死者の世界の狭間<非=世界>には危険が満載

本作に登場する中でもっとも危険な場所が、<非=世界>と呼ばれる、生者と死者の狭間の世界。異端審問官の中でもモーディマーだけが入れる世界で、<非=世界>内に存在する死者の記憶を集めることで、真実を知るための手がかりを入手できる。

<非=世界>には、「ケガレ」と呼ばれる不気味な影のような敵が徘徊しており、小型の影であれば攻撃して倒すことも可能。しかし、絶対にモーディマーでは敵わない巨大なケガレが登場することもあり、その場合は祈りの力を使って気配を消し、隠れながら記憶のかけらを探し出す必要がある。

また、<非=世界>に登場する敵はケガレだけではないようで、プレゼンでは「黙示録の四騎士」と呼ばれる存在からの攻撃を受ける場面も。上空から降り注ぐ矢の攻撃に対しては、モーディマーが使用できる離れた地点に瞬間移動するスキル「転移」が効果的だという。

ただし「祈り」や「転移」といったスキルを使うにはエネルギーに相当する「聖力」が必要となる。この「聖力」は<非=世界>におけるHPゲージの役割も兼ねており、<非=世界>内に存在する「光明の泉」で回復することができる。泉の周囲はケガレも近寄れない安全地帯でもあり、ケガレに見つかって追跡された場合に避難する場所にもなる。

プレゼンではその他にも、逃げながら姿を隠すローランドを探し出すかくれんぼ的なバトルや、夜中に大聖堂に忍び込み、閉ざされた扉を開けるためパズル的なギミックを解除するシーンも公開された。バトルとストーリーだけではなく、アドベンチャーとして様々な要素が盛り込まれているようだ。

プレゼン終了後には、質疑応答の時間も設けられたので、最後にその一部の回答を紹介する。

まず日本版の表現規制について、国内向けに販売されるPS5版は、レーティングがCERO「Z」となり、人体の分離欠損表現の修正、性的表現の一部変更や削除などが行われている。それ以外のプラットフォーム(Xbox Series X|S/PC)は、レーティングは「IARC 18+」となり、海外版と同様の内容となっているそうだ。

また、本作のストーリー中には結構な頻度で選択肢が出現するが、すべての選択肢がストーリーに何らかの影響を与えてくるという。小さな影響を与えるものと大きな選択を与えるものの2種類が存在し、後者はちょっとした会話の変化に留まらず、その後のストーリーや結末に変化をもたらすことになるそうだ。

モラルを守るのか、モラルに欠けた行動をするのか。選択の結果、モーディマーを善人にも悪人にもできる、自由なロールプレイができる点も、本作の魅力でもあるとピヨトル氏は語っていた。

キリスト教が復讐と暴力の宗教と化す、あまりにもインパクトの強い世界観と、本格派のアクションアドベンチャーが融合した本作。宗教が登場するゲームは数多くあれど、実在の宗教にここまで踏み込んだゲームは、なかなかお目にかかれる機会はないだろう。独特の世界観に興味を持ったなら、是非プレイしてみて欲しい。

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