ポニーキャニオン、歴史専門の戎光祥出版と業務提携のなぜ 歴史資源を核に地域活性化を狙う?

■異色の業務提携!?

音楽、アニメ、映像、イベント等の企画・制作・宣伝を行う総合エンターテインメント企業であるポニーキャニオンは、日本史や神道文化を題材とする書籍を中心に出版活動を行ってきた戎光祥出版と業務提携を行い、歴史資源を核とした地域活性化事業を協力して行うことに合意したと発表した。

2010年代から地方創生が注目を集めるようになると、従来のコンサル会社などのほか、異業種からも地域活性化などのプロジェクトを推進する事例が増えてきた。ポニーキャニオンは2015年から地域活性化事業を展開。2017年にはエンターテインメント業界初の専門部署「エリアアライアンス部」を創部している。

ポニーキャニオンといえば音楽や映像のイメージがなにかと強いだが、同社は長年の経験で培った実績を活かし、すでに企業府省庁、地方自治体、地域法人案件を2022年度までに400案件以上の事業を受諾、業了しているという。とはいえ、ポニーキャニオンと戎光祥出版が業務提携と聞くと、かなり異色のコラボのように映ってしまう。

■両社のノウハウを活かしあう

戎光祥出版といえば、『中世武士選書シリーズ』や『図説日本の城郭シリーズ』などの歴史書に強みをもち、これまでに500冊以上を刊行している。言うまでもなく、こうした武士や城郭といったテーマは、昨今の地方創生のトレンドであり、観光の面でもクローズアップされることが多い。

戎光祥出版はこれまでに取材や出版で培った様々なノウハウがあるだけでなく、最近では地域の歴史の掘り起こしに力を入れているという。専門の歴史学者を講師として招き、歴史の面白さを一般読者に伝えるべく、歴史セミナーを30回以上開催してきた実績をもつ。一方で、ポニーキャニオンのエリアアライアンス部は地域活性化事業として、岐阜県の大垣市や垂井町などで、歴史資源を核とする事業に取り組んできた。

ポニーキャニオンはその一環として、2022年には歴史専門メディア「歴史人」を有するABCアークと業務提携、2023年には「戦う歴史学者」として、また大河ドラマ時代考証等で人気を博す歴史学者の平山優とエージェント契約を締結している。今回の戎光祥出版との業務提携によって、歴史資源活用における専門性が飛躍的に高まることが期待される。

■歴史を活かせば地方の観光が変わる

歴史は専門性が高いジャンルである一方で、コンテンツとしての魅力は無限にある。日本刀や戦国武将をモチーフにしたゲームは幅広い世代に人気だし、城郭は次々に新刊が各社から出版され、御朱印を模した御城印もブームになっている。大河ドラマも視聴率の低下が叫ばれる一方で、依然として放送中にはSNSが沸騰するほどであり、魅力的なコンテンツであることは変わりない。

このように、歴史はエンターテイメントと親和性が高いのである。そして、地方にはまだまだ埋もれている知られざる武将や城郭がたくさんある。直江兼続のようにそれまで知名度が決して高くなかった武将がドラマを通じてメジャーになった例もあるし、雲海が見られる天空の城として竹田城が有名になると、うちの城も雲海が見られると名乗り出る地方が続出した。

すでにポニーキャニオンと戎光祥出版は、東京都千代田区観光協会による「徳川家康に関する資源を活用した千代田区観光プロモーション事業」や神奈川県小田原市観光協会による「戦国北条フェスティバル」などをともに手掛けてきた。さらに、現在、ポニーキャニオンとビームスが運営に参画している東京都町田市の指定史跡、旧白洲邸武相荘におけるイベント「ヒストリカルサロン」において協働している。

こうした両社のノウハウを総動員し、埋もれている資源を活かし、活用につなげていくことは、地方に人を呼び込む起爆剤になるに違いない。業務提携でどんな独自性の強いコンテンツが生み出されていくのか、今後の展開に注目していきたい。

(文=元城健)

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