中国の研究者、使用済み電池で二酸化炭素からギ酸を高効率生成

中国の研究者、使用済み電池で二酸化炭素からギ酸を高効率生成

プロトン交換膜二酸化炭素電解システムとその電気化学的特性を示した図。(資料写真、武漢=新華社配信)

 【新華社武漢2月6日】中国の華中科技大学(湖北省武漢市)は、同大化学・化工学院の夏宝玉(か・ほうぎょく)教授のチームが、二酸化炭素(CO2)から経済価値の高いギ酸生成物への高い効率での変換に使用済み鉛蓄電池を活用できるプロトン交換膜(PEM)CO2電解システムを開発したと発表した。研究成果はこのほど、英科学誌ネイチャーに掲載された。

 夏氏は「CO2の電気分解で得られる20種類以上の生成物の中でギ酸は際立った経済価値を持ち、燃料電池や医薬品分野などで広く使用されている」と説明。高純度のギ酸を効率良く生成できれば、CO2の利用・削減につながるだけでなく、相当な経済的利益を生み出すことができると指摘した。研究チームが約5年かけて開発したプロトン交換膜CO2電解システムで設計したCO2電解装置は5千時間以上連続して安定稼働しており、ギ酸の生成率は93%を超えたという。

 現在の電解触媒によるCO2還元技術で使われる電解液の多くはアルカリ性だが、変換過程でCO2のかなりの部分がアルカリ電解液に吸収されることで電極表面に大量の炭酸塩が堆積し、変換効率の低下を招いていた。研究チームは、酸性電解液の使用で変換効率を向上させる方法を試み、加えて使用済み鉛蓄電池からCO2電解用の鉛系耐食性電解触媒を採取し、多くの触媒が耐食性を持たないため高効率かつ安定した還元反応を起こせないという難題を克服した。耐食性鉛系触媒の新たな反応メカニズムにより、酸性電解質の電気分解プロセスでCO2から生成されるのはギ酸と少量の水素ガスのみとなり、変換効率が飛躍的に向上した。

 夏氏は、これまでのCO2からギ酸への変換では酸化還元反応による陽極の副産物生成に水を使っていたことが電解システムのコア部品であるプロトン交換膜を腐食させ、電解システムの寿命を縮めていたと指摘。水を水素ガスに変えたところ、プロトン交換膜の腐食回避に効果があり、システムの消費電力も削減できることが判明し、電解システムの安定性と寿命も一層向上したと語った。(記者/侯文坤)

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