「感染症対策には水が欠かせない」…専門医が被災地で感じた避難所のリスク「2次避難するしかない所もあった」 能登半島地震

避難所に設置された仮設トイレ。断水のため、流すための水が溜められている=輪島市(川村英樹さん提供)

 鹿児島大学の感染症専門医の川村英樹さんは1月13日以降、災害時感染症支援チーム(DICT)の一員として、石川県に入っている。避難所などで発症する恐れのある感染症対策を助言し、災害関連死の防止に努める。被災地の現状や課題を聞いた。

 -活動内容は。

 「石川県庁で新型コロナウイルス、インフルエンザ、ノロウイルス、破傷風などの感染症のリスク評価をした。集団感染が起こると、特に高齢者は命に関わる。志賀町の避難所も見て回った」

 「避難所管理のために全国から応援に来た支援者や役場の保健師、DMATなどの医師らから相談を受けて対応した。マスクや手指消毒液があるか、食事が清潔に取れる環境があるかといった状況を確認。水がない中での手の洗い方を助言したり、インフル陽性者の周囲にいた人のケアをどうするかを考えたりした。検査態勢の整備も課題だった」

 -断水が続いている。

 「上下水道が使えない所があった。水が出ないと衛生環境が悪化する。歯みがきができないと、口腔内環境が悪化し感染症のリスクになる。水を飲むことを控えると、ぼうこう炎といった尿路感染症の恐れもある」

 -被災地の感染症対策の現状は。

 「『水が使えない』『人が密集する』という悪条件がそろい、かなり深刻な状況だった。避難者は日中は片付けなどで出払うが、夜は避難所に集まるため、密閉、密集、密接する3密の状態になる。呼吸器感染症は3密の環境で、リスクが非常に上がる」

 「感染症の流行期後に発生した東日本大震災や熊本地震に比べ、1月はこれから感染症がはやる時期。災害関連死を予防するためには感染症対策が必要だが、石川ではどうしようもない所も出ていた。2次避難が最優先で進められたが、住み慣れた土地から離れる不安からか、避難が進まない課題もみられた」

 -鹿児島で気を付けられることは。

 「水がなくて手が洗えない場合はおしぼりで汚れを落として、アルコールで消毒する方法がある。マスクや消毒液を準備しておくことは大切だろう」

 「能登半島の高齢化やインフラの状況は、鹿児島の大隅半島の南側に近いものを感じた。今回のように2次避難するしかないケースは鹿児島でも十分ありうる。市町村をまたがることも想定され、県が事前に広域で避難できる仕組みを強化していくことが求められる」

〈関連〉「感染症対策に水は欠かせない」と話す川村英樹さん=鹿児島市の鹿児島大学

© 株式会社南日本新聞社