森保監督は”ふたつの賭け”に負けた。アジアカップ制覇という目標は脆くも砕け散り…【コラム】

アジアカップに臨んだ日本代表は準々決勝で敗退。優勝という目標は脆くも砕け散った。敗因は複数挙げられるだろうが、個人的にピックアップしたいそれのひとつが守備の弱さである。

準々決勝までの5試合で計8失点。完封試合がひとつもなく、この事実からも守備が上手くいっていなかったことが分かる。とりわけ相手のセットプレーに対する対応が曖昧で、対戦チームのコーナーキックになるたびにヒヤヒヤしたファン・サポーターは多かったのではないか。

未熟さを露呈したのはGK鈴木だ。やはり最後尾が安定しなければDF一人ひとりの負担は増えるわけで、彼の不安定なパフォーマンスがチームに負の影響を及ぼしたとの見方はできる。なかでも気になったのは、イラン戦の54分、GK鈴木が中途半端なフィードしたシーンだ。

相手のプレッシャーもあっただろうが、板倉から受けたボールをダイレクトでどちらかのサイドに蹴ればいいものの、GK鈴木はセンターサークル付近にフィードしたのである。これを跳ね返されて中央突破された挙句、あっさりと同点に追いつかれるのだが、そのきっかけを作ったのは個人的に鈴木のフィードだと考えている。

繰り返すが、あそこでサイドラインを割ってもいいから左右どちらかに蹴っておけば、簡単に失点しなかったはずだ。厳しい言い方をすれば、GK鈴木の判断ミスが招いた失点と表現できる。 矢印がまっすぐゴールに向かう、しかもゴールまで最短距離となる中央のエリアは危険なゾーンである。そこにボールを蹴ってしまっては失点の可能性が高まるのは当然だ。その点で、鈴木の判断はやはり良くなかった。

そのイラン戦、同点に追いつかれたあと、森保監督は勝ち越しゴールを狙うため、久保と前田に代えて三笘と南野を投入した。そこまで守備面で小さくない貢献をしていたふたりを下げ、ある意味攻撃的なメンバーにした。

しかし、この交代で日本はディフェンスのバランスを崩し、劣勢のまま後半のアディショナルタイムに2失点目を喫す。三笘と南野を封じられた点も踏まえれば、森保監督の采配は完全に裏目に出た。

一方で、イランは板倉がイエローカードを受けて以降、このCBの裏を狙うような攻撃を繰り返し、守備面では板倉と冨安のCBコンビから守田と遠藤の両ボランチに良い形でボールが入らないよう中央部分をしっかりとしめた。ガレノイー監督の戦略がピタリとハマった点を見ても、森保監督の悪手が際立つ。

結局のところ、森保監督はふたつの賭けに負けた。GK鈴木の起用とイラン戦での三笘と南野の投入。これが敗因の全てではないが、日本が優勝できなかったポイントだったことは間違いない。

文●白鳥和洋(サッカーダイジェストTV編集長)

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