東京五輪金の伊藤美誠が敗れたワケ 団体戦の切り札、15歳張本美和が見せた急成長と“対中国”への可能性

日本卓球協会は5日、都内で記者会見を開き、パリ五輪に挑む男女候補選手を発表。およそ2年にわたり続いてきた選考レースが終わりを迎えた。

◆伊藤美誠、中国メディアが問題点指摘「技術的、肉体的だけでなく……」 選考レースの不調に言及「現在を裏付けるのは難しい」

■黄金世代トリオ結成ならず

5日のメンバー発表で焦点となっていたのが男女ともに団体戦に向けた3人目の選出。なかでも、選考レースで3位の伊藤美誠と同4位の張本美和の一騎打ちの様相を見せていた女子は、15歳の張本美が逆転で3番手に滑り込む形となった。

この結果には日本だけでなく、ライバルの中国メディアも大きな関心を寄せたなか、2人の運命を分けたものは何か。

五輪2大会連続メダリストで、前回東京大会では水谷隼との混合ダブルスで金メダルに輝くなど、伊藤の五輪や国際大会における実績は日本女子陣のなかでも群を抜く。五輪初出場を決めた早田、シングルス初選出の平野と合わせた“黄金世代トリオ”のパリでの躍動に期待する声も当初は多く挙がっていた。

それでも、伊藤は選考会を通してコンディションが整わず、東京五輪以前の輝きを取り戻せないまま選考レースでは2位平野を捉えることはできなかった。また、かつて強さを見せた“対中国”という面でも研究され、淡白な内容で敗れることも増えた。昨年12月に行われた「WTTファイナルズ」では、東京五輪金の陳夢に対して体調不良も重なり、ストレート負けで準々決勝で敗退した。

■対世界における経験値の上昇

一方の張本美は、2023年後半からは国際大会での起用も増え、世界ランキングもトップ10を視界に捉える成長ぶり。経験値を高めたことでそのポテンシャルを見せ始めた。

昨年9月から行われたアジア競技大会では木原美悠とのダブルスで孫穎莎、王曼昱という“最強ペア”を破り殊勲の銅メダル。早田との“みまひなペア”で全日本選手権を5連覇していた伊藤が選考レース最後となった1月の全日本をシングルスに絞ったのに対し、張本美は平野とタッグを組みダブルスでも経験を積んでいる。

また中国選手に対しても、「WTTファイナルズ」では孫穎莎に対して2ゲームを奪うなど奮闘し、フルゲームの激闘を演じた。16日からは「世界卓球2024団体戦」も控えるなか、“対中国”に対して伊藤よりデータが少なく、かつ経験を積むことでパリ五輪までにさらなる成長も見込める張本美という3番手の存在は、前回東京大会で銀メダルに終わった日本が中国へのリベンジを果たすうえでカギを握る。

団体戦に向けては早田がエースとして屋台骨を担い、五輪経験者で同級生の平野が支える。そこに伸び盛りの張本美という3枚がハマれば、金メダル奪取に向けて道が開けてくるだろう。

ついに終わりを迎えたパリ行きをかけた戦い。伊藤とのし烈な争いを制した張本美が、日本女子チームにどのような作用をもたらし世界の頂へ向けてのラストピースとなるのか。

◆伊藤美誠は「新しいサイクルの到来で状態が低下した」 まさかの五輪単代表落ちに中国メディアも驚き

◆卓球代表 人選異論なしも拭えない違和感 ポイント3番手の美誠落選→2年間の選考レースは何だったのか

(Y.Imoto/SPREAD編集部)

© 株式会社Neo Sports