救急車で搬送されて「入院」しなかったら7700円 出動件数が過去最多になった松阪市で新たなルール適用へ 三重

三重県松阪市では2024年6月以降、市内3つの基幹病院に救急搬送された患者のうち、病院が緊急・重症でないと判断した場合に7700円が徴収されることになりました、そのワケとは?

全国的に増加傾向が止まらない救急車の出動件数。

松阪地区広域消防組合では、2023年に救急車の出動した件数は1万6180件で過去最多に。

20年前から倍増しています。

さらに人口1万人あたりの出動件数も全国の同規模の消防で最多です。

こうした状況の中、松阪市では2024年6月から市内3つの総合病院に救急搬送された患者のうち、軽症患者に対して選定療養費として7700円の支払いを求めることを決めました。

これらの病院に救急搬送され、入院に至らなかった「軽症患者」からは7700円が
徴収されることに。

7700円は国が定める「選定療養費」で、200床以上の大きな病院を他の医療機関からの紹介状を持たずに受診する際に徴収されるもので、これまで3つの基幹病院では救急搬送は対象外でした。

救急車に関するルールが変更されることに対して市民は…。

(松阪市民)
「とりあえずタダだから呼んでおこうというのも、かなり多い。それが減るのでいい」
「金額的には少し高いように思うが仕方がない」

このままでは助かるはずの命も…

ルール変更に至った理由は「救急車の適正利用」はもちろん、地域の救急医療の深刻な現状があります。

(松阪地区医師会 平岡直人会長)
「3つの病院の医師を疲弊させないよう守っていくことも医師会の1つの責任。普段の医療を利用する場合に、まずは『かかりつけ医』にかかるのが基本」

実際、3つの基幹病院に救急搬送された人のうち、入院しなかった人の割合は平日昼間が49.4%、休日夜間は62.9%と高く、松阪市は「このままでは助かるはずの命が助からない」と危惧します。

(松阪地区医師会 平岡直人会長)
「決して救急車の有料化を目的にしているわけではない。この地域の救急体制をきちんと守るために選定療養費の徴収を厳格化しただけ」

そもそも「選定療養費」は医療体制を維持するために国が義務化したもの。

救急搬送患者への適用も伊勢赤十字病院などの先例があります。

名古屋の医師も今回のルール変更の広がりを予想します。

(名古屋大学病院 救急科 山本尚範 医師)
「高齢社会で医師や看護師が、かなり疲れていて回らなくなっていく。本当に必要な時に救急車を呼んでも、病院に行けないということが生じている。選定療養費を使う医療機関が増えていく可能性は十分にある」

ルールは変更する一方で、松阪市は「緊急の場合に救急車を呼ぶことをためらわないで」と呼び掛けています。

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