Blackmagic Design導入事例:短編映画「The Legend of King Kang-Mi」の場合

Blackmagic Designによると、短編映画「The Legend of King Kang-Mi」が、Blackmagic URSA Mini Pro 12Kデジタルフィルムカメラで撮影され、ポストプロダクションでは、編集、グレーディング、VFX、オーディオ・ポストプロダクション・ソフトウェアであるDaVinci Resolve Studioが使用されたという。

同作品では、バーにたどり着いた凍える追跡者が恐ろしい物語を人々に語り聞かせ、恐怖と疑念を呼び起こす。そして、真に恐ろしいのは誰なのか。

南カリフォルニアにある人気のティキバー、Strong Water Anaheimとのコラボで制作された同作は、「The Zombie King of Balacombe」の続編であり、Strong Water Anaheimのビジネスとユニークなドリンクメニューのプロモーション用に制作されたクリエイティブな短編シリーズの一部である。Strong Water Anaheimの目的は、CMではなく、ブランドを取り巻く世界観を創作することであった。

同社のクリエイティブ・ビジョナリーであるロバート・アダムソン氏がブライアン・ウルリッヒ監督に声をかけたという。

ウルリッヒ監督は、次のようにコメントしている。

ウルリッヒ監督:ロバートが、"キング・カンミ"のアイデアを持ってきました。"カンミ"はチベット語で雪男という意味です。

最初から、このようなイメージが頭にありました。タイトルから、ヒマラヤ山脈の麓で凍りついている船にさっと場面が切り替わります。背景はチベットの漁村です。

ウルリッヒ監督と長年一緒に仕事をしているシネマとグラファーのタウンゼント・ディクセン氏は、早い段階からチームに参加し、独自のビジュアルスタイルを同作に組み入れた。

ディクセン氏:「パイレーツ・オブ・カリビアン」から大きなインスピレーションを得ています。特に、照明を使いさらに様式化されたルックに傾くことを恐れていないところですね。

この作品は、少し不思議でシュールな雰囲気にしたかったので、色やコントラストで遊ぶことは、視覚的なアプローチにとって大きな要素でした。

AカメラとしてURSA Mini Pro 12Kを使用することはすぐに決まったという。

ディクセン氏:私は個人的にPocket Cinema Camera 4Kを所有しており、現場でも数えきれないほどBlackmagicカメラを使用してきたので、このプロジェクトで12Kを使うことが楽しみでした。

12Kセンサーはシャドーを非常にうまく処理できることがわかりました。ビンテージのZeiss Super Speeレンズと組み合わせることで、コントラストを強調し、ダークでムーディーなルックにする自信がありました。

ウルリッヒ監督は、それまでにいくつかのプロジェクトをBlackmagic Designカメラで撮影していたため、この選択に賛成であった。

ウルリッヒ監督:2020年からBlackmagicのカメラを使用しています。使いやすさと柔軟性の高さが気に入っています。

ポスプロのビジュアル・エフェクトで多用途に使用するために8Kで撮影したかったのですが、12Kならセンサーのクロップなしでできることがわかっていました。

タウンゼントと私はPocket Cameraを持っているので、主な撮影が終わった後にインサートショットやピックアップショットが必要になった場合でも、同じ品質で撮影できました。

この作品をURSA 12Kで撮影することは理にかなっていましたし、結果にとても満足しています。

日没時に船を氷の中に配置するVFXのエスタブリッシング・ショットの初期の作業は、撮影現場でディクセン氏が実践的な照明アプローチを採る動機付けとなったという。

ディクセン氏:作品を通して、光の変化を表現したかったんです。

照明スタッフのJD.エリオットと協力して、3つの異なる照明キューを設定し、暖かみのあるハードライトのシーンから始まり、徐々に薄暗い"月明かり"のルックにシフトしていく日没のエフェクトを作成しました。追跡者が悲惨な物語を語る間にますます不気味さが増すため、ストーリー展開にも役立っています。

メインの撮影が終了すると、ウルリッヒ監督はDaVinci Resolve Studioを使用して編集作業に取り組んだ。

ウルリッヒ監督:編集は非常に大変でした。

最終的に、私たちはステージラインを18回超えたと思います。それは計画通りでしたが、編集では、すべての目線が正しく、すべてのカットが機能していることを確認しなければなりませんでした。また照明の変化に伴い、すべてのショットをそれぞれ独自のルックで撮影して、一貫性を保つ必要がありました。この撮影では、「ポスプロで修正する」可能性は極めて小さかったんです。

これまで複数のプロジェクトの編集にDaVinci Resolve Studioを使っていたウルリッヒ監督は、このような複雑なプロジェクトで、ツールとワークフローを自由に使用できると感じたという。

ウルリッヒ監督:Resolveは、一度習得すれば非常に直感的に使用できるツールです。

そしてクリックするだけでFusionやFairlight、カラーページに切り替えて、他の豊富なツールセットをすぐに使用できます。異なるプログラムように書き出したり、ラウンドトリップをする必要はありません。

DaVinci Resolve Studioを使用して同作をグレーディングしたカラリストのグンナー・ゴディング氏は、ディクセン氏が撮影現場で作り出した、緩やかかつ明確な照明の変化を管理する挑戦を楽しんだという。

ゴディング氏:一番の課題は、作品の中で色が変化するタイミングを見つけることでした。

冒頭は非常に暖かくウェルカムな雰囲気ですが、物語が展開するにつれて暗いトーンになり、不吉な物語を反映するように色温度が低くなっていきます。

ゴディング氏はタイムラインレベルで多くのツールを使い、できるだけシンプルで合理的なグレーディングを心がけた。

ゴディング氏:一般的なコントラストレベルを得るために、ミナンスとスプリットトーンのカスタムルカーブを使用し、シャドー調整、色相vs色相カーブ、彩度、ノイズ除去、フィルムグレインも使用しました。

個々のクリップについては、一般的な露出、コントラスト、ホワイトバランス、彩度を調整し、Power Windowを使用して、目を引きたい特定のオブジェクトを調整しました。

ダークでドラマチックなストーリー特有の難しさがあったとゴディング氏は語る。

ゴディング氏:例えば、血塗れの頭部を適切な赤に調整することです。

タイムラインのノードツリーだけでは血の色がトーンダウンして少し暗くなってしまうので、クリップベースのHSL選択ツールを使用して、自然だけれども明るくみえるように調整しました。

ウルリッヒ監督とクライアントであるStrong Water Anaheimは作品に満足しており、Blackmagic Collective FilmFestで最優秀撮影賞を受賞したことは、おまけのようなものであったという。

ウルリッヒ監督:まさに完璧なコラボレーションであり、お互いがより良い作品を作れるよう、後押しし合っていました。

適切なチームで、適切なツールを使って、優れたストーリーを元に作品を作ることが鍵ですね。これらすべてが揃っていたことは、本当にラッキーだと思います。

「The Legend of King Kang-Mi」は2023年度のBlackmagic Collective FilmFestで最優秀撮影賞を受賞した。同作はこちらから視聴可能。

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