「神戸の総力を結集した」オペラ、世界的奏者の出演も 神戸市民文化振興財団 2024年度の公演発表

会見に臨んだ神戸市混声合唱団の佐藤正浩音楽監督(左)と神戸市室内管弦楽団の鈴木秀美音楽監督(右)

「神戸文化ホール」(神戸市中央区)を管理運営する神戸市民文化振興財団は、2024年度の公演プログラムをこのほど発表し、神戸市室内管弦楽団と神戸市混声合唱団によるオペラや世界的ソリストらが登場する演奏会などについて内容を明らかにした。

【写真】「創世記」をテーマとしたハイドンの大作で共演する神戸市室内管弦楽団と神戸市混声合唱団

昨年50周年を迎えた神戸文化ホールは3年にわたる記念事業を展開中で、2年目となる今期の目玉は、オペラ「ファルスタッフ」。姉妹カンパニーである神戸市室内管弦楽団と神戸市混声合唱団がタッグを組み、神戸出身者を中心にソリストを集め、企画立案、稽古、本番までの全行程を地元で行う、「神戸の総力を結集した」(関係者)本格オペラ上演となる。

12月21日(土)、同ホールにて開催予定で、神戸市民文化振興財団の服部孝司理事長は「神戸市は公立のオーケストラ、合唱団、ホールがそろった『三位一体』の全国でもまれな自治体。われわれの財産を最大限使い、神戸のクラシック音楽の厚みを増していきたい」と意気込む。

「ファルスタッフ」はヴェルディ作曲の傑作喜劇。タクトを執る神戸市混声合唱団の佐藤正浩音楽監督は、同作を「言葉と音楽がうまく交わってふくらんでいき、心と言葉の融合性、ドラマ性を感じられる作品」と高く評価する。演目として選んだ理由について「アンサンブルオペラ(複数キャストによる重唱のシーンが展開するオペラ)で、楽しく笑えるから」と説明。作曲者最後の作品であることにも触れ、「ヴェルディは悲劇をたくさん書いてきたが、『最後は笑って死ぬんだ』という心意気が表われている」と話した。

神戸市室内管弦楽団は、鈴木秀美音楽監督の指揮で、4月、ベートーベン「交響曲第3番『英雄』」、モーツァルト「交響曲第39番」を披露。6月には日本を代表するピアニスト、小山実稚恵を迎え、ベートーベン「ピアノ協奏曲第3番」などを、11月には世界的チェリスト、ジャン=ギアン・ケラスとともに、近年のコンサートでは滅多に取り上げられないサン=サーンス「チェロ協奏曲第1番」を奏でる。

神戸市混声合唱団は、松下耕が阪神・淡路大震災30年に向けて新たに作曲する「混声合唱、室内オーケストラ、ピアノのための『レクイエム』」を初演(9月)するほか、阪哲朗が指揮する合唱曲プログラムの演奏会(3月)、「NHK全国学校音楽コンクール」の課題曲を取り上げる恒例のコンサート(5月)などを予定している。

発表会見で、能登半島地震などの災害が続く中、音楽が果たす役割について問われた鈴木監督は「皆さんの住む家がない、水がない、電気がないというところに出向いて『音楽を聴かせます』と言っても、それは迷惑でしかない。でもその後少しでも休める場所ができたら、音楽は心の慰めになる」と答え、「昔から言われているように『音楽は喜びの友、悲しみの薬』。早くその薬をお届けできる状況になってほしい」と、言葉に願いを込めた。

公演の問い合わせは神戸市民文化振興財団、電話078-361-7241。

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