特撮モノなのに「物価高で火薬が使えない」→「ええい、肉弾戦だ!」 袋叩きに流血…『ウルトラマンレオ』で“トラウマ回”が多い理由

予算がなくて、火薬も使えないし、模型もバンバン壊せない…

1974年に放送された『ウルトラマンレオ』は、今年放送開始50周年を迎えます。これまでのウルトラマンシリーズではスペシウム光線などの光線主体で戦っていましたが、同作では肉弾戦で敵に立ち向かうという新たな試みが見られました。そんな異色作『ウルトラマンレオ』では、ファンの間でトラウマ回と言われるエピソードが存在します。本記事では数あるトラウマ回から前半に放送された3つを見ていきます。

まずは同作の第1話「セブンが死ぬ時!東京は沈没する!」を見てみましょう。出身地の獅子座L77星を滅ぼされたレオが、故郷に似た惑星・地球に移住するところから始まります。レオの故郷を滅ぼしたマグマ星人と双子怪獣の魔の手から地球を守るため、戦いに挑むウルトラセブンでしたが、必殺技アイスラッガーも通用せず苦戦するのでした。絶体絶命のピンチに追い込まれたセブンが、双子怪獣に脚を折られてしまう場面は特に衝撃的です。

この場面を見たファンからは「セブンの足の骨が砕ける音が今も耳に残っています」「右膝下を砕かれて双子怪獣に袋叩きにされるセブンの姿は今でもトラウマ」といった声があがっており、初回から大きな衝撃を与えたことが伺えます。

第1話でのトラウマぶりが冷めやらぬなか、第3話「涙よさよなら…」でも驚きの場面が描かれています。同話に登場するツルク星人は、レオに挑戦するべく連夜凶行を重ねていました。話中に登場する少年・梅田トオルと妹のカオルの父親も犠牲になってしまいます。幼い兄妹の前で父親は胴体を真っ二つにされてしまい、断面から血が溢れる場面は子ども向けの番組とは思えないほどの演出です。

ネット上では「通り魔として人を襲うツルク星人が怖かった」「子どもの前で父親が殺される場面はトラウマ不可避」などの声が視聴者からあがっています。同話を見た筆者も、サスペンス番組を間違えて見ていたと勘違いするような戸惑いを感じたことを鮮明に覚えています。

さらに第6話「男だ!燃えろ!」では、主人公・おおとりゲンが所属する宇宙パトロール隊「MAC」の隊員・白土純の婚約者である洋子が殺される場面が描かれています。宇宙ステーションに勤務していた白土隊員が、洋子と共に地球にやってきます。2人はゲンと一緒に車に乗って休暇を楽しむのでした。会議に参加する白土は一足早く車を降り、洋子はゲンの運転で自宅へと向かいます。

自宅へ向かう途中2人が乗った車をカーリー星人が襲撃します。ゲンはカーリー星人から洋子を逃がそうと奮闘しますが、巨大化したカーリー星人によって洋子は踏み殺されてしまうのでした。この展開に「車の後ろから追いかけて来るカーリー星人が怖かった」「女性だけを狙って殺害するカーリー星人は今もトラウマ」など、恐怖を感じた視聴者の声が見られた。

ちなみに『ウルトラマンレオ』が放送された1974年は、第1次オイルショックによる不景気が避けられない時期で、物価上昇が急激だったこともあり、特撮番組の制作に費用をかけられないという背景があったようです。そのため火薬類の使用が制限され、肉弾戦でのバトルシーンが多かったのではないでしょうか。また、前作『ウルトラマンタロウ』が高い人気を得ていたため、後継作品としての重圧もあったと考えられます。

前作と比較される重圧と、制限された予算のなかで如何に面白い作品を作るか考え尽くした結果にたどり着いたのが『ウルトラマンレオ』の演出かもしれません。そんなレオの雄姿を放送開始50周年を機会に、改めて楽しんでみてはいかがでしょうか。

(海川 まこと/漫画収集家)

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