ネット通販で泣く人「年間10万件」! 悪徳業者はアナタを知り尽くし、「2段階の罠」仕掛けてくる

「おトクに初回お試し」のつもりで契約したら、高額の定期購入だった!

ネット通販をめぐりトラブル相談が続出しているため、国民生活センターは2024年1月31日、「その申込み、定期購入になっていませんか?もう一度『最終確認画面』をチェック!」という警告リポートを発表した。

悪徳業者はアナタの興味・関心を知り尽くし、2段階にわたって「罠」を仕掛けてくるという。防ぐ方法を専門家に聞いた。

初回のみ2000円のつもりが、5回分6万7000円に

国民生活センターによると、通信販売の「定期購入」をめぐるトラブル相談は毎年数万件以上に達しており、2022年度は約9万8000件だった。

2023年度は2022年12月末現在で約5万5000件だが、2022年度の同時期を上回るペースだから10万件を突破する可能性もある。

男女とも50歳代以上のシニア層が多く、また、女性からは男性の約2倍近く相談が寄せられる。代表的な事例は次のとおりだ。

【事例1】

SNSで初回980円のダイエットサプリの広告を見て、クレジットカード払いで注文した。その後商品が届き、中身を確認したら6箱入っていて、代金も約2万円になっていた。

1箱のみ980円で注文したつもりだったが、申し込む際に「期間限定クーポンプレゼント」を選択したことで、約2万円の商品が3か月ごとに届く定期購入になっていたようだ。

次回以降は解約したいが、事業者の電話番号にかけてもつながらない。どうしたら解約できるか。(2023年7月・60歳代女性)

【事例2】

SNSの広告に「白髪が目立たなくなる」とあるのを見て、事業者の販売サイトに進み、育毛エッセンスをコンビニ後払いで申し込んだ。

支払代金が約2000円であり、いつでも解約可能な定期購入と思っていたが、事業者より商品発送メールが届き、後払い事業者から3本で約1万6000円の請求メールが届いた。

あまりに高額なことに驚き、販売サイトの事業者に電話すると、「5回継続が条件のコース(支払総額約6万7000円)を申し込んでいるので、解約はできない。どうしても解約したい場合は、2回目の代金を支払ったうえで違約金約2万5000円を支払うことになる」と言われた。

そのような契約を結んだ覚えはない。違約金を支払わずに2回目までで解約したい。(2023年7月・70歳代女性)

【事例3】

SNSの広告からアクセスしたサイトでファンデーションを購入した。初回が約2000円と安かったので、定期購入かもしれないと思ったが、2回目以降は解約すればよいと考えて注文し、コンビニ後払いを選択した。

初回の商品が届き、2回目以降を解約するために事業者に電話をかけると、「2回目の商品を受け取らずに解約する場合は、5営業日以内に差額の約8000円を振り込まなければ解約は完了しない」と回答された。

注文時の画面は保存していないが、差額精算が必要だというような注意事項を見た覚えがなく、初回のみで解約できると思っていた。初回の代金もまだ支払ってはいないが、差額精算せずに解約したい。(2023年10月・40歳代女性)

SNS「ターゲティング広告」が、罠の第1段階

J‐CASTニュースBiz編集部は、調査を担当した国民生活センター相談情報部の飯田周作さんに話を聞いた。

――年間10万人近くの人が、それも50歳以上の人生経験豊富な多くの人が「定期購入」をめぐる悪質な商法に引っかかることが理解できないのですが。

飯田周作さん 「初回〇〇円!」というSNSの広告の安さに惹かれてアクセスして、ポチポチとスマホを安易に操作しているうちに、きちんと最終画面で契約内容を確認しないまま送信してしまうケースが多いと思われます。

私たちは業者に対して、とりわけ「安さ」ばかり強調しないで、わかりやすい画面にしてほしいとお願いしているのですが、大手の通販サイトと違った広告がSNSに飛び込んでくるシステムに問題があると考えています。

――どういうことですか。

飯田周作さん 【事例1】では、もともとダイエットに関心のある60歳代女性にダイエットアプリの広告が目に飛び込んできました。【事例2】では、白髪を気にしていた70歳代女性に育毛エッセンスの広告が目に入ってきました。

どちらのケースも、おそらくSNSをいじっている時に、一番上位の目立つところにそうした広告がアップされただと思います。

これは「ターゲティング広告」だと思われます。その人が過去にパソコンやスマホで閲覧した履歴データから、その人の興味・関心を割り出し、その人にマッチした広告をピンポイントでSNSの上位に提示するシステムです。【事例3】の40代女性も、普段から化粧品関連を閲覧していたから、ファンデーションの広告に飛びついたのでしょう。

――つまり、最初から狙われているわけですか。

飯田周作さん その人の利益にあった広告が集中的に入るわけですから、利便性にかなっている面もありますが、ふだん使い慣れた大手のネット通販と違い、初めてアクセスする広告には細心の注意が必要です。

初回の安さに惑わされずに、「定期購入」になっていないかどうか、しっかり確認しましょう。1回だけのつもりで注文しても、「定期購入」が条件になっていて、中には、2回目から分量が多くなったり、高額になったりするケースがよくあります。

また、「定期縛りなし」「いつでも解約可能」と広告ではうたいながら、事実上「定期購入」で、初回の低価格だけ購入して2回目以降を解約すると、高額の違約金を請求される例もあります。

そうしたことは、画面の下まで何度もスクロールしないとたどり着けない場所に、小さく書かれていたりするので、送信する前に、「最終確認画面」でしっかり確認しましょう。【図表1】がそのチェック内容です。

(図表1)「最終確認画面」チェックリスト(国民生活センター作成)

第2の罠は、「特別割引クーポン」

――用心に用心を重ねる必要があるわけですね。ちょっと怖いですが、「最終確認画面」をしっかりチェックすれば、無事、購入の運びになると......。

飯田周作さん いえ、そこに「第2の罠」が待っていることが多いのです。

注文完了直後に「特別割引クーポン発行中」という表示が注文完了画面に表れることがあります。そして、「ご注文ありがとうございました。10分間限定で特別割引クーポンが発行されました。クーポンを利用すると、永続的に10%OFFが適用されます」などと、利用を勧める画面が出てくるのです。

【図表2】がその仕組みです。そのうえ、「残り9分32秒」などとカウントダウンが始まり、利用者を焦らせます。

(図表2)「特別割引クーポン」に誘導されてはダメ!(国民生活センター作成)

――かなり、悪質ですね。クーポンを利用すると、どうなるのですか。

飯田周作さん 「特別割引クーポン」の箇所をクリックすると、最終画面で確認した内容が変わってしまい、定期購入になったりする恐れがあります。最近は、向こうも2段階で騙そうと、手が込んできています。

しかも、サイトの中には、非常に小さい字で「特別割引クーポンの利用でコースが切り替わります」とか、「本コースは4回の受け取りを条件に特別割引が適用になります」などと、何回もスクロールしないと分からないような箇所に明記されているのです。

――ひどい話ですね。こういう悪らつな連中から身を守るにはどうしたらよいのでしょうか。

飯田周作さん 「特別割引クーポン」をクリックしてしまったら、もう1度、「最終確認画面」に戻り、変更されていないかどうか、確認しましょう。それと、「最終確認画面」はもちろん、契約条件が記載されている箇所は小まめにスクリーンショットで保存しましょう。のちのちのトラブルの交渉の時に役立ちます。

私は、スマホで取引する時は、どんなケースでもサクサクとスクリーンショットで保存することにしています。取引が無事終わったら、削除すればいいので、容量の負担にはなりませんから、みなさんにおススメします。

(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)

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