二階堂ふみのドラマ、韓国語の“心の声”字幕なしで話題に 本気度上がる韓国語熱、今や年配層だけでなく人気言語に…その背景は?

「韓流は年配層に人気」という印象から今や大きく変化。韓国料理店、化粧品、カフェ、食料品、エンタメなどが日本で浸透し、当たり前となりつつある韓国カルチャー。

現在放映中のTBS系火曜ドラマ『Eye Love You』では二階堂ふみさんが演じるヒロインと、チェ・ジョンヒョプさんが演じる韓国人留学生の恋模様が描かれ、放映後は毎週「#eyeloveyou」がXのトレンド1位になるほど。中でもジョンヒョプ氏演じるユン・テオの「心の声」には字幕が付かず韓国語で流れるため、「何て言ってるの?」「理解したい!」と話題になっています。

このように、日本のドラマやバラエティ、歌番組などでも韓国の俳優やアイドルが活躍し、韓国カルチャーが更に身近に感じられるなか、韓国語を学んでいるという声が増えている印象ですが、本当なのでしょうか?

2003年にドラマ『冬のソナタ』をきっかけに第一次韓流ブームと言われてから約20年、世界的人気の無料語学アプリ「Duolingo」と、韓国語学習者が成果を試す「ハングル能力検定協会」の担当者に現在の状況を取材しました。

韓国カルチャーが浸透するなか、韓国語を学ぶ人って本当に増えているの?(いらすとや)

2023年韓国語の人気度は世界で6位、日本国内では?

世界5億人を超えるユーザーを持つDuolingoが、語学学習の動向を調査した年次レポート『Duolingo Language Report 2023』(※1)によると、「世界で最も人気のある言語ランキング」において、韓国語は2020年~2022年7位でしたが、2023年はイタリア語を抜いて6位に。

「今年、韓国語がイタリア語を上回ったことに、私たちも関心を示しました。韓国語は年々成長を遂げてきましたが、今回イタリア語を上回った事によって韓国語の人気度が世界的な現象となっていることが示されました」と、Duolingoの担当者さん。

グローバル調査と国内調査の結果(『Duolingo Language Report 2023』調べ)

国内での韓国語学習者も成長傾向にあり、平均DAU(1日あたりのアクティブユーザー数)が2022年から+52%の成長になっているのだとか。人気度ランキングは英語に次いで2位(英語84%、韓国語25%、中国語13%、フランス語6%、スペイン語4%、ドイツ語4% ※複数回答可)。この国内順位については実は、日本語話者向けの韓国語コースがはじまった2021年からキープしています。

この2021年というのは、BTSの「BUTTER」が大ヒットしK-POPへの注目が急激に高まり、「イカゲーム」によってドラマ人気も上昇するなど、韓国のエンタメコンテンツが世界中で話題になった年。コロナ禍のステイホーム生活で、さまざまなドラマやネットコンテンツを楽しむ人が増えたのも伴って、日本での韓流第4次ブーム真っ最中でもあります。

「韓国のエンターテイメントは若い世代に韓国の文化そして言語を学ぶことを趣味や興味の一貫として成り立たせました。その一例として日本の韓国語を学習する理由として最も多かったのが『興味があったから』(29%)。その次に『人と繋がりを持ちたいから』(27%)でした。これらは、韓国語学習者はキャリアや旅行のために学んでいるのではなく、韓国の文化やエンターテイメント、そしてコミュニティに魅せられて言語を学んでいるということを裏付けています」

世界で最も人気のある言語ランキング(『Duolingo Language Report 2023』調べ)

また、東アジアや東南アジアにおいて、韓国語と日本語は人気上位を争っており、2023年も多くの国で人気言語の1位もしくは2位になったそう。担当者さんは、「特にフィリピンとタイでは日本語の人気が韓国語を上回る中、韓国語が世界的に6位になったことを考えると、この結果はとても興味深く、どこかの地域や国が韓国語の成長に貢献しているわけではなく、世界全体として韓国語の学習者が増えているということがいえます。英語が人気の国などで韓国語が上位に食い込むことはないものの、韓国語学習者は着々と世界的に増えているのです」と話します。

そして、日本国内での人気をキープしている点について、「韓国カルチャーが大きな影響を及ぼしているのは間違いないかと。日本でも『推し活』カルチャーが浸透し、アイドルファンの方、韓国ドラマファンの方々などが推しの言語を理解したいと思うことが自然な流れになっています。韓国語学習を始めたきっかけとして『推しの話す言葉を理解したい』『字幕なしで韓流ドラマをみたい』『ファンミーティングで推しと話したい』などをモチベーションに取り組んでいる人が多いようです」と教えてくれました。

年次調査『日本国内における語学学習に関する調査』(※2)では、英語を選択する人がどの年代でも8割以上と非常に人気である一方で、韓国語では特に世代間の違いがあらわに。

30代以降では各年代10~15%の人が韓国語を選択する中、20代では26%が、さらに10代では37%が韓国語を学習。まだ語学学習をはじめていないものの意欲がある層に対し、どの言語に興味があるかを聞いた質問でも、20代の45.3%、10代の52.4%が「韓国語に興味がある」と回答し、こちらも他世代に比べ、圧倒的に高い数値となっています。

Z世代&ミレニアル世代での韓国語人気が顕著に(『Duolingo Language Report 2023』調べ)

学習者のレベルがUPした結果…

SNS上では、韓国語学習者が進学や就職のためや、その成果を試すために「ハングル」能力検定(ハン検)や「TOPIK(韓国語能力試験)」に挑戦している様子がX(旧Twitter)では散見されます。受験日にはトレンドワードに上がることもしばしばです。

「ハングル」能力検定は、学習初歩の方から通訳案内士などの資格取得を目指す方まで、幅広い層の日本語母語話者が受験。1993年から実施されており、現在までに60回実施され延べ52万人以上の出願があります。2022年10月からは韓国語学習初心者に向けたオンラインでの入門級試験も開始しました。

そこで、受験者の推移や資格取得の利点、韓国語学習のポイントなどについて、ハングル能力検定協会(東京都千代田区)事務局の鄭 誠根(チョン ソングン)さんにお話を伺ってみました。

――受験者数の推移は?

1993年の第1回検定で2010名の受験者から始まった当検定ですが、コロナ前の2019年には春季9307名、秋季10924名と、2004年以降は10000名を超える方々に受験していただいています。コロナで春季試験の実施できなかった2020年でも秋季には13772名、2021年にも春季13321名、秋季14540名と多くの方に受験いただきました。2022年と2023年は受験者数としては横ばいではありますが、学習を始めた方々のレベルが上がってきていて中級レベルの受験者数が増加しています。

――なるほど、中級が!

試験は初級5級から上級が1級まで準2級を含めて6段階で実施されていますが、初級4級と中級3級が増加しています。

――継続して学習されていることが伺えますね。ちなみに、2023年の出願者の傾向は?

直近の第60回データでは、職業別受験者数は大学生30.5%、会社員29.3%、主婦11.1%、その他学生(専門学校生など)7.6%、高校生6.9%、公務員4.0%、教職員1.7%、その他6.2%となります。近年は高校生も増加しているようです。

年代別には20代35.9%、10代22.6%、40代13.3%、50代12.0%、30代11.1%、60代以上5%となります。ごく少数ですが10代未満の受験者もいらっしゃいます。

――幅広い年齢層の方が出願されているのですね。オンラインでの入門級試験で、より門戸が広がった印象です。

オンライン試験は、コロナの少し前から準備していました。コロナの蔓延に伴い試験実施ができない状況となり、年に2回しか実施されない当検定にとっては受験者の資格取得の機会がなくなってしまうことにどうにか対応しようと、準備中だったオンライン試験を2020年に本試験に適用し、初級のみオンライン試験を実施したことが始まりです。

その後、この本番運用されたオンライン試験システムを活用するため、また勉強を始めたばかりの方でもその学習段階の成果を目に見える資格という形で付与することで、学習のモチベーションアップやさらに上の級へのチャレンジのきっかけとしていただきたく、オンラインでの入門級試験を開始しました。こちらは反響が大きく、たくさんのお声をいただいています。

日本語話者にとって韓国語は始めやすい?

――コロナ禍以降、更に韓国語人気が増しているように感じます。

一般的には2023年は「韓流20周年」といわれていました。当検定が1993年から実施された後、いくつか受験者の増加につながるきっかけがありました。韓国ドラマ、K-POP、コスメ、食文化など第〇次韓流といわれたきっかけです。

少し前までは「近くて遠い国」といわれていた日韓が、今では若い世代のみならず幅広い世代で相互の文化的交流が盛んになり、特定のジャンルだけではない様々な分野で関心と理解が高まっています。街中でハングルを目にする機会も増え、相互の社会が成熟してきた中で、流行ではない定着した文化としての交流が学習者の増加につながっていると思います。

――協会が受験をおすすめする利点は?

資格試験なのでもちろん大学や高校での単位認定、社会人の方は就職や転職などで活用できる証明となるものとして受験していただいていますが、特に日本では趣味や独学の方でもご自身の学習進度のレベルチェックや実力の証明として受験いただいていることが特徴だと思います。

今はあらゆる情報がリアルタイムで配信されるため、推し活ではライブ、コンサートなど推しの言葉をその場で理解したいという強い思いに応えるために、学習の手段として受験を目標にされる方もたくさんいらっしゃいます。また韓国語に関わる仕事がしたい方や、韓国で就職したいという方も多く、資格取得が目標でなく、資格を取ったその先に明確な目標がある学習者が確実に増えたと感じます。その目標達成のために受験を学習の手段として活用されることが、受験の利点であると考えています。

ハン検用の公式ガイド『トウミ』や公式テキスト『ペウギ』をamazonなどECサイトや書店で販売中(「ハングル」能力検定試験Xより)

――韓国語の面白さや学習のポイントを教えてください。

韓国語は日本語と語順や発音が近いものが多く、始めやすい言語だと言われています。韓国語も漢字語が7割といわれるほど漢字圏の言語であるため、日本人にとっては学習に有利な言語です。今は書店にとても多くの学習書籍が並んでいるので、ぜひ書店で実際に手に取ってご自身の学習スタイルに合った本を選んでいただきたいと思います。

またオンラインやSNSにもたくさんの学習情報があふれていますが、特に学習の初期にはお近くの語学学校やスクールで基礎をしっかりと学ぶことがレベルアップの近道だと思いますので、ぜひ良い先生とめぐりあうことがポイントです。独学の方も、ぜひ好きなジャンルや興味のある分野(韓ドラ、K-POP、韓国料理など)から始めていただくことで習得が早まるでしょう。

――韓国語をこれから学ぼうとしている方、学んでいる方へメッセージをお願いします。

言語を学ぶことは相互理解のはじめの一歩です。韓国でも日本への関心は高く、日本語を話す方々はとても多いです。これから学ぼうとしている方は新しい言語を学ぶことで新しい自分の発見や人生を豊かにすることにつながるはずなので、ぜひその第一歩を踏み出してみてください!

また、学習を続けている方にとって今は韓国語の活用先がどんどん増えています。「インバウンドの旅行客に韓国語で道案内ができた」「韓国に旅をして韓国語で交流ができた」という体験は忘れられない経験になるでしょうし、韓国語で仕事をするということも難しいことではありません。

韓国語には「시작이 반이다(シジャギ パニダ)」という「始めてしまえば、半分成したも同様だ」という意味のことわざがあります。すでに半分以上を成しとげた皆さんを「ハングル」能力検定は常に応援しています!

2024年「ハングル」能力検定試験ポスターは、韓国で人気の“ニュートロ”な雰囲気に(提供:ハングル能力検定協会)

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BTSメンバー全員が兵役の任務に就き、SNS上では2025年予定の完全体カムバックまでに「韓国語を頑張る」といった宣言も多く見られます。コロナ禍(以前)からの韓国語学習の継続や意欲をつぶやいている方もたくさんいますが、今回の取材では、Z世代・ミレニアル世代での人気も顕著となっているようで、ますます韓国語の人気が増していくことが期待できます。2024年、韓国エンタメの面白さを満喫しつつ「今年こそは!」と新たな語学学習をスタートしてみるのはいかがでしょうか。

(※1)Duolingo Language Report 2023調査概要
本調査は2022年10月1日~2023年9月30日までの間にDuolingoで言語を学習した学習者の情報が含まれています。データは学習者のプライバシーを確保するため、国別集計は、国際的に認知された独立した自治体に基づいています。年齢と学習の動機に関するデータは自己申告であり、13歳未満の学習者はすべての分析から除外されています。また、学習者のプライバシー保護の観点から、Duolingo学習者数が5000人未満の国はランキングより除外しています。

(※2)日本国内における語学学習に関する調査概要
調査対象:Duolingoユーザーに限らない母国語が日本語である、各都道府県男女100名 調査期間:2023年11月10日~11月15日 調査方法:インターネット調査 有効回答人数:4700名

【Duolingo関連情報】
ゲーム感覚で学習できるように設計されている世界で最も人気のある語学アプリ。日本では英語、中国語、韓国語、フランス語の4か国語を提供しており、今後学習可能な言語数を増やしていく予定。
■Duolingo Language Report 2023調査 https://drive.google.com/file/d/1M3ArpAPofs6fbLZ3Dstcadzk1EMYoCEo/view
■X https://x.com/Duolingo_Japan?s=20
■TikTok https://www.tiktok.com/@duolingojapan?lang=ja-JP

【ハングル能力検定協会関連情報】
2024年の試験スケジュールは、第61回「ハングル」能力検定試験6月2日(日)、第62回11月10日(日)。オンラインでの入門級試験は7月下旬と1月下旬の年2回実施。各試験の出願期間など詳細は公式サイトやSNSで確認を。
■HP https://hangul.or.jp/
■Instagram https://www.instagram.com/hangul_kentei/
■X https://twitter.com/hangul_kentei
■TikTok https://www.tiktok.com/@hangul_kentei

(まいどなニュース/Lmaga.jpニュース特約・太田 真弓)

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