【マレーシア】ファミマも不買運動の対象に[商業] 伊藤忠、イスラエル社と協力終了

イスラエルによるパレスチナ自治区ガザへの地上侵攻で人道危機が深刻化する中、マレーシアでは米欧企業への不買運動が発生し、日系企業にも影響が広がっている。不買運動の対象となっているコンビニエンスストア「ファミリーマート」は5日、ファミリーマートを展開する伊藤忠商事がイスラエルの軍事企業との協力覚書を近く終了するとし、イスラエルを支援しているわけではないとする声明を発表した。

オフィスビルに入居するファミリーマートの店舗=6日、クアラルンプール(NNA撮影)

伊藤忠の子会社で防衛装備品の供給などを担う伊藤忠アビエーション(東京都港区)は昨年3月、イスラエルの軍事企業エルビット・システムズと協力関係を結ぶ覚書を交わした。マレーシアではこれを受け、交流サイト(SNS)でファミリーマートの不買運動を呼びかける投稿が拡散。また、日本政府が昨年10月末にイスラム組織ハマスの工作員らへの制裁を決めたことにより、日本ブランドであるファミリーマートの不買運動を呼びかける声が一層強まった。

ファミリーマート・マレーシアは今月5日に声明を出し、「日本のファミリーマート本社から伊藤忠アビエーションがエルビット・システムズとの覚書を終了すると報告を受けた」と説明。「ファミリーマート・マレーシアは、暴力行為や殺害を支持していない。イスラエルに貢献や寄付をしたり、協力関係を結んだりもしていない」と強調した。

伊藤忠の鉢村剛副社長は5日の決算記者会見で、伊藤忠アビエーションとエルビットが結んでいる協力関係の覚書について、今月内をめどに終了すると発表した。国際司法裁判所(ICJ)が1月、イスラエルに対し、ジェノサイド(民族大量虐殺)を防ぐための措置を取るよう命じたことにより、エルビットとの取引が国際的な批判を浴びる懸念を払拭するための判断とみられる。

鉢村氏は、覚書は防衛省の依頼に基づき日本の安全保障に必要な自衛隊の防衛装備品の輸入が目的だったとし、「イスラエルとパレスチナの紛争に一切関与するものではない」と説明した。

マレーシアでは、地場食品加工大手QLリソーシズ(QLR)が、ファミリーマートをフランチャイズ(FC)展開している。同社の2023年の年次報告書によると、同年3月末時点でファミリーマートを357店、キオスク型の「FMミニ」を70店、カフェ業態の「ファミカフェ」を16店展開している。

■マクドナルドやスタバも

マレーシアやインドネシアといったイスラム教徒(ムスリム)が多い東南アジアの国々では、多くの人がパレスチナに連帯を示し、イスラエルと関係の深い米欧企業への不買運動が広がっている。

マレーシアでは、米国を象徴するファストフード大手マクドナルドやコーヒーチェーン大手スターバックスが不買運動の対象となっており、客足が減っている。

地元メディアによると、マクドナルド・マレーシアとライセンス契約を結ぶ地場ゲルバン・アラフ・レストランが、不買運動を呼びかける親パレスチナ団体ボイコット・ダイベストメント・サンクション(BDS)マレーシアを提訴。600万リンギ(約1億8,700万円)の損害賠償を求めているとされており、対象企業と不買運動を呼びかける団体との間で対立が深まっている。

ファミリーマートの店内=6日、クアラルンプール(NNA撮影)

© 株式会社NNA