岡崎は和洋の魅力ある建築の宝庫。建築ツアー:フランスの著名な建築家編

皆さん、こんにちは!CEC ambassadorの廣瀬です!CECで行ったツアーについての内容や感想をお伝えします!
今回は、フランス建築界で高い評価を受けているフィリッペ・シャンバレッタさんに、京都の建築の魅力をご紹介する特別なツアーをご提供いたしました。
ツアーでは、シャンバレッタさんのリクエストにお応えして、京都の歴史的な建造物や現代的な建築物を巡りました。

建築家:Philippe Chiambarettaさんとは。

Philippe Chiambaretta(フィリッペ・シャンバレッタ)さんは、フランスを拠点とする世界的に有名な建築家です。フランスのÉcole nationale des ponts et chaussées(国立土木学校)とボストンのマサチューセッツ工科大学で建築を学んだ後、パリのリカルド・ボフィル建築事務所の国際部門を指揮しました。パリ・ベルヴィル建築国立学校を卒業した後、建築事務所PCA-STREAMを設立しました。現在、建築の様々な分野に精通した100人以上の優秀なメンバーとともに、現代の社会の問題に応えるような建築作品を多く生み出しています。」
PCA-STREAM:https://www.pca-stream.com/en/

日仏:建築家による建築家の為のツアー

今回の京都のモダン建物と庭園についてのご案内を細部にわたりプライベートツアーを実施していただいたのは、京都市京セラ美術館のディレクターで、学芸員・一級建築士でもある前田尚武さんです。前田さんは、「建築の日本展」「モダン建築の京都」など、多くの建築展を手がけて成功させてこられました。
フィリップさんは、旅行中、お一人で色々な建物を見て回られていましたが、ツアーでは、ただ見るだけでなく、新しい発見もできるように、平安神宮から始まり、ロームシアター京都、無鄰菴、京都市京セラ美術館というコースを組みました。逐次通訳は私、廣瀬が行いました。

左:前田さん 右:シャンバレッタ氏 ロームシアター京都にて

伊藤忠太:平安神宮 庭園の白砂はフランス建築にも影響

平安神宮会館で美味しい朝食をとられた後、美しい庭園を散歩されていたシャンバレッタさんに合流し、まず、平安神宮の歴史について前田さんが解説。
前田さん曰く、日本建築の庭園の白砂は薄く広がる水を表現しているとのこと。
シャンバレッタさんはこれに対して「フランスにこれを模して作った建築がある」と、感嘆の声をあげられました。
シャンバレッタさんは、設計者である伊藤忠太がこのような壮大な建築を大学院生の時に手がけたということにも驚きの表情を見せられました。

ロームシアター京都:ル・コルビュジエの遺伝子を引き継ぐ前川國男

次に向かった先はロームシアター京都です。この建築は日本を代表する建築家・前川國男が設計したもので、日本にもファンが多いフランスのル・コルビュジエという有名な建築家に学び、ル・コルビュジエの建築の要素がロームシアターの各所に現れています。

無数に立つ柱は、広々とした空間を演出するル・コルビュジエのピロティの技術が使われている特徴の一つです。

この「ピロティ」に関して、シャンバレッタさんが面白いエピソードを披露してくださいました。

ピカソは、コルビジェと親交があり会食をし飲みすぎた際にピロティを支える柱に放尿し、「ピロティはこのためにあるんだ」と主張したそうです笑。

前田さんがさらに建築についての説明をしてくださりました。ロームシアターの手すりは、日本の木造建築をイメージして創られ、さらに手すりの先はル・コルビュジエの作品を模した「牡牛の角」を連想させるつくりになっているそうで、いかにル・コルビュジエのことを尊敬していたか想像してしまいます。

シャンバレッタさんは、同じフランスの建築家として、前川國男とル・コルビュジエのコラボ、和と洋が重なり合う建築の説明を聞き、日本とフランスの文化が融合した素晴らしい建築で感慨深いとおっしゃられていました。

コルビュジエの「牡牛の角」を連想させる前川國男建築を見上げるシャンバレッタ氏

無鄰菴:小川治兵衛の庭園に隠された驚きの秘密

ロームシアター京都から歩いて5分ほどで、無鄰菴に着きました。
無鄰菴は、明治維新を率いた維新の三傑である山縣有朋が住んでいた邸宅です。
茶の間ではこの邸宅のオーナーであった山縣有朋について前田さんから興味深い話を聞きました。山縣有朋は、当時の政治家としては珍しく、茶道にはあまり興味がなかったそうです。その代わりに、造園に造詣が深く、自分が造らせた庭園で客人をもてなし、政治の話でいたとか。
庭園は、近代日本庭園の先駆者とされる作庭家・小川治兵衛がつくったもので、東山を借景にした小川治兵衛の手法にシャンバレッタさんも感動されていました。
ここで、前田さんからクイズ!「この小川の水はどこから来ていると思いますか?」
庭園には小川が流れているのですが、これには驚きの秘密がありました。シャンバレッタさんは、「モーターとポンプで循環させているのではないでしょうか?」と答えました。
答えは!「この小川の水は琵琶湖疏水の水で、滋賀県からトンネルで引いてきているんです!信じられますか?」自然と流れているような水の音や光景は、見ていてとても癒されました。

左:無鄰菴入り口 中央:東山を借景にした小川治兵衛の庭 右:写真中央の円形の石から庭を眺める

新旧が見事に調和した京セラ美術館の建築

最後に前田さんがお仕事をされている京都市京セラ美術館に向かいました。

この美術館建築は、前田健二郎の原案による帝冠様式と呼ばれる和洋折衷の建築です。
遠くから眺めると銅板の屋根によって和風に見え、近づくと日本建築の特徴的な深い軒がないため屋根が見えなくなり洋風に見える不思議な建築です。
シャンバレッタさんは、この建築のユニークさに興味深く見入っていました。
実は、この建築はフランク・ロイド・ライト設計による、旧帝国ホテルライト館(現在は、明治村に移築)にも影響を受けているそうで、シャンバレッタさんも「旧帝国ホテルと似ているところがあるね」と言っていました。
美術館のリニューアールと新館は、国内のルイ・ヴィトンの店舗を手がける青木淳氏と西澤徹夫氏のデザイン監修によるモダンな建築です。
シャンバレッタさんは、新旧が見事に調和した建築に感心していました。

ツアーを終えると、シャンバレッタさんからは「非常に楽しく、京都の建築の魅力を良く理解することが出来た学びあるツアーだった」とお褒めの言葉をいただきました。

シャンバレッタさん、また是非、京都にいらしてくださいね。
前田さん、ありがとうございました!

CECアンバサダー:廣瀬亮 大学:同志社大学 学部:法学部 出身地:ドバイ

Special Thanks : 前田尚武さん 一級建築士/学芸員。京都市京セラ美術館企画推進ディレクター。京都モダン建築祭実行委員。

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