イースタン二冠も一軍では防御率7.16 2019年ドラ1右腕・宮川哲はヤクルトで再起を期す

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“特殊球”に熱視線

長かったオフも終わり、12球団の春季キャンプがスタート。3月29日の開幕に向けて各チームが本格的に動き始めた。

なかでも大きな注目を集めるのが、新戦力の話題だろう。ヤクルトでは昨オフにトレードで加入した宮川哲が髙津臣吾監督が見守る中でブルペン入り。持ち味の力強い速球とカーブでアピールした。

特に独特の軌道を描くカーブは指揮官にインパクトを残した様子。宮川が操るのはいわゆる「パワーカーブ」と呼ばれるもので、球速も一般的なカーブよりもやや速め。昨年の一軍での投球バリエーションを見てもストレートの次に多いのがカーブで、右腕の生命線と言えるボールだ。

掴みは上々、あとはこのアピールをどれだけ継続することができるか。ブルペンはもちろん、これから増えていく実戦の中で結果を積み上げていくことが求められる。

ドラフト1位から4年で迎えた“崖っぷち”

宮川は東海大山形高から上武大、社会人の東芝を経て2019年のドラフト1位で西武に入団した。正確に言うと、1巡目の指名で佐々木朗希を外した後の再入札だから、いわゆる“はずれ1位”。それでも1年目から49試合に登板して防御率3.83。2022年には45試合の登板で防御率2.59と、3年間で通算123試合に登板してブルペンを支えた。

迎えたプロ4年目の昨季は開幕一軍入りを逃すと、チーム事情もあって先発に挑戦。6月1日の交流戦・阪神戦でプロ初先発を果たし、5回1失点の好投でプロ入り後初となる先発での白星を掴む。

ところが、翌週の中日戦では一転して5回6失点と乱調。再び二軍降格となり、それから約2カ月後にめぐってきた一軍復帰戦のオリックス戦も4回もたず4失点で敗戦投手に。9月25日のオリックス戦も3回途中2失点で降板と、プロ初先発勝利の後は苦しい投球が続いた。

イースタンでは最優秀防御率(2.45)と最高勝率(.750)の二冠に輝いたが、本人は「一軍で獲らないといけないので、悔しい気持ちの方が大きい」と正直な気持ちを吐露。オフにはプロ入りから背負ってきた背番号15を與座海人に譲ることとなり、新年も迫る12月21日にはトレードでヤクルトへの移籍が決まった。

新天地での再起にかける

急転直下の移籍となったが、右腕は「チャンスだと思っていますし、それを生かすことができるのは自分だと思うので、やってやろうという気持ち」と前向きな言葉を残して所沢を旅立った。

所属がどこであれ“崖っぷち”は変わらない。ヤクルト入りに際しても「やることは変わらないので、しっかりと自分の仕事ができるようにと思っています。環境は変わりますが、チャンスだと思って頑張っていきたいです」と意気込みを述べ、「先発なら二桁勝利、中継ぎなら勝ちパターンに入れるようなピッチャーを目指して頑張っていきたい」と具体的な意気込みも口にしている。

ヤクルトは昨季のチーム防御率が3.66で、これがリーグ最下位。もっと言えば12球団ワーストの成績であり、先発も中継ぎも新たな力が待たれるところ。その点、どちらも経験がある宮川の存在は頼もしい限りだろう。

昨秋のドラフトで指名されたルーキーや新外国人選手らと比べると注目度では劣るかもしれないが、“新戦力”として開幕一軍入りを目指す立場は同じ。すでに日本のプロ野球での経験を積んでいて、悔しい想いを味わっているという部分はむしろアドバンテージと言えるかもしれない。

“崖っぷち”を力に変えて、新天地で飛躍のチャンスを掴むことができるか。好スタートを切った宮川哲の再出発を見守りたい。



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