毎年バレンタイン催事で10万円以上を購入、チョコ好き男性 まさかの脱サラ…意外すぎた転身とは

バレンタインシーズン真っ盛りで、今や自分のご褒美チョコに数万円使う女性も当たり前の光景に。そんななか、毎年10万円以上も購入していた男性は、好きが高じた結果…驚きの転身をはたすことに。その経緯についてお話を聞きました。

オランジェット橋本さん、チョコレート好きで人生が一変することに。自らのブランド「オランジュエル」を立ち上げます

人生が変わるきっかけとなったのは、大阪・梅田の百貨店「阪急うめだ本店」のバレンタイン催事。カカオの生産地にいち早く焦点を当てて、独自の企画が人気となり、2013年度は売上が約10億だったところ、売上を伸ばし続けて2023年度は約29億円に。スイーツ好きにとっては注目の場であり、大量に購入する男性もさほど珍しくない催事へと成長しています。

チョコを追求し続け、たどりついたのは…

珍しいブランドや限定商品などを目当てに、毎年通い続けた結果、男性がたどりついたのは、なんと「オランジェット」!。自ら「オランジェット橋本」(以下橋本さん)と名乗って2019年からインスタを始めて魅力を発信。小規模ながら食べ比べのイベントなども行うようになります。

輪切りのかんきつをチョコレートで半分コーティングしたオランジェット(提供:オランジュエル)

ちなみに、オランジェットとは、かんきつの輪切り・皮(ピール)を砂糖漬けし、チョコレートでコーティングした、フランス生まれのスイーツ(柚子やレモンなどで作られることも)。チョコレート専門店では、おなじみの商品ではあるとはいえ、マイナーな存在。しかも、かんきつのアク抜きから始まり、乾燥など工程・時間ともにかかり、価格は決して安くはありません。チョコレート専門店なら、オレンジの薄いスライスで、300円代〜500円代ぐらいでしょうか。

ピール(皮)を使ったオランジェット(提供:オランジュエル)

そんなオランジェットに、どの品種にどんなチョコに組み合わせるのか、砂糖漬けの方法、乾燥の時間などによって変わる、食感、甘みと酸味のバランスなどの奥深さにどんどんはまって、自らも作るようになった橋本さん。チョコレート検定の「プロフェッショナル(上級)」を取得し、もっとかんきつを知りたいという思いから週末は農業学校へ通い、さらには農業関連の企業へと転職します。

そんななかで、さらなる転機となったのは、世界のチョコレートをセレクト・輸入販売する「トモエサヴール」を主宰するさつたにかなこさんから、「2023年にオランジェットがコーナーとして展開するようで興味がありますか」と尋ねられ、同百貨店で16年間もバレンタイン催事を担当する高見さゆりさんに縁がつながったことです(高ははしごだか)。

はたしてどうなるのか、挑戦的なコーナー

毎年、新しい提案をするために催事でチャレンジングなコーナーを設ける高見さん。これまでに「フルーツ&ナッツ」「お酒」「日本各地の生産者」といったテーマで展開し、2023年度は、国産かんきつの作り手と出会い、生産者の思いを届けたいという思いから「オランジェット」をテーマに。「各ブランドで『オランジェット』を取り扱われているということはニーズがあるということと、近年は国産かんきつを使用し商品化するシェフが増えてきたことに着目して展開をしました」と話します。

阪急うめだ本店の人気催事「バレンタインチョコレート博覧会」を担当して16年目の高見さゆりさん

そこで、「かんきつジェット」と名付けられたコーナーの「先生的存在」として参加することとなった橋本さん。販売予定の50ブランド100アイテムからセレクトして、かんきつチャートを担当し、「やわらか←→しっかり」「甘い←→ほろ苦」とひと目で商品の味が伝わるように考案。またプロデュースしたブランド「daidai」でも参加することとなります。

販売されているオランジェット、あまりにも種類が豊富なのでチャートにて可視化。写真は2024年版

とはいえ、あまりにもピンポイントな商品だけに、「お客様が来てくださるのか不安の方が大きかったです」と振り返る両者。しかし始まれば、「たくさんのお客様にお越しいただき商品の準備が間に合わずでした」(高見さん)、「衝撃でした。バラ売りで好きな味を選ぶ人、ダダッとさまざまな商品を買う人、好きなブランド目当てに買う人、こんなにも隠れファンがいたのかと! うれしいと同時に驚きの方が大きかったかもしれません」(橋本さん)と、人気企画となり2024年にもつながることとなったのです。

ちなみに今年、「かんきつジェット」コーナーで数種を買い求めた20代吹田市の女性にたずねると「去年も来て、そのときはほとんど売り切れでしたが、今年は買えました。チャートがあり、タイプ別に並んでいるので、自分の好みを選ぶことができるのがいいですね」と答えてくれました。

「オランジェット」のコーナー、オレンジ味のチョコや、焼き菓子などもそろいます

ややハードルが高かったであろうオランジェットの、好みのタイプを見分けられることで、手に取りやすくなったこと。オレンジとチョコの組み合わせはケーキや板チョコなどでも人気とあってポテンシャルはあり、それが一堂に会するのが画期的だったことが伺えます。

「いつかと思っていたけれども…」

将来的に、自身のブランドを立ち上げたいと思っていた橋本さんでしたが、2024年度の展開を踏まえて2023年6月に退職して独立。今年の1月20日、バレンタイン催事開幕とともにブランド「oranjewel(オランジュエル)」が初めてお披露目されることとなりました。

2024年の阪急うめだ本店の「かんきつジェット」コーナー、多様なブランドがタイプによって陳列されています

国産かんきつの魅力を伝えたいという思いから各地の農家をたずねて、品種にもこだわり、2022年に出会った静岡県河津町の生産者・土屋さんが作る「ニューサマーオレンジ」や、和歌山の「春峰(しゅんぽう)」などを厳選。さらに、組み合わせるチョコレートにも注目です。

「Oranjewel Collection 2024」は4種入り、3204円。河内晩柑日ピール×ベトナム65%(5本入り)、ニューサマーオレンジ×アルアコ72%、長門ゆずきち×ピウラ70%、春峰×セントゥールドプロヴァンスバジリック。各種単品でも販売

「春峰(商品1枚594円)であれば粒が際立っていて食感を活かしたい、しかしその魅力が強くてなかなか合うチョコがなく。そこでバジルの香りが広がるものを選びました」と、フランスの老舗「ショコラトリーモラン(A.MORIN)」のセントゥールドプロヴァンスバジリックという、チョコレートファンから厚い支持を得る高級チョコレートをチョイス。

ほかにも、京都のオーガニックチョコレートブランド「COCO KYOTO」や、カカオと含蜜糖だけで作る「開成チョコレートラボラトリー」など、合わせるブランドはあまりにも多様です。

チョコレート専門店であれば、自社のチョコレートを使用することとなりますが多様なブランドと掛け合わせることができるのも、ここならでは。毎年10万円以上かけて培ってきた知識があってこその「オランジュエル」と言えます。「自分でブランドを立ち上げるだなんて、まだまだ先と思っていたら。想像以上に早まりました」と笑う橋本さん。まさかバレンタイン催事でこんなに人生が変わるとは。2月14日までは「阪急うめだ本店」に出店、以降はイベントなどを中心に出店し、ゆくゆくはECショップも視野に入れて活動していく予定だそうです。

■阪急うめだ本店 https://www.hankyu-dept.co.jp/honten/
■オランジェット橋本さんInstagram https://www.instagram.com/orangette_hashimoto/

ビジュアル含めて好きすぎて、登場した「オランジュエル」のアクセサリー

(まいどなニュース/Lmaga.jpニュース)

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