初日2番手のルーキー、ペドロ・アコスタ。早くも新パーツテスト実施のポテンシャル/MotoGP公式テスト1日目

 2024年シーズンのMotoGP公式テストが始まると、シーズン開幕の足音がより大きく聞こえるような気がするものだ。2月5日、気温30度を超える蒸し暑いマレーシアのセパン・インターナショナル・サーキットで、23名のライダーが開幕に向けた公式テストに挑んだ。

 公式テスト初日となるこの日、トップタイムを記録したホルヘ・マルティン(プリーマ・プラマック・レーシング)に次ぐ2番手に浮上したのは、ペドロ・アコスタ(レッドブル・ガスガス・テック3)だ。2021年にMoto3、2023年にMoto2クラスのチャンピオンに輝き、2024年シーズン、MotoGPクラスにステップアップした19歳のスペイン人ライダーである。

 アコスタについては、公式テスト前に行われたシェイクダウンテストから注目を集めていた──実際のところ、Moto3時代から注視されていたライダーなので、MotoGPのテスト結果によって、そのポテンシャルを目に見える形で証明した、とも言えるかもしれない。

 アコスタがシェイクダウンテストで記録した自己ベストは、1分58秒189。セパン・インターナショナル・サーキットのオールタイムラップ・レコードが1分57秒491、ルーキーであることをあわせて考えれば、堂々たるタイムだ。

 そしてレギュラーライダーとともに走行した5日の公式テスト初日では、1分58秒220を記録して2番手につけた。テストでは順位が大きな意味を持たないとはいえ、アコスタのタイムと「2番手」には注目して然るべきだろう。

 2023年シーズン終了後に行われたバレンシアテストでは、他のMotoGPライダーに比べて、まだMoto2マシンの走らせ方が残っていた。もちろん、彼はそのテストの2日前までMoto2マシンで戦っていたのだから、むしろそれがMoto2から上がったルーキーの姿というものだろう。ただ、セパンではシェイクダウンテスト、そして公式テスト初日のタイムを見るに、アコスタはすでに、MotoGPマシンへの適応がかなり進んでいるらしい。驚異的な適応能力だ。

 この日のテスト終盤には、アコスタは2024年型に向けた空力デバイスなどのパーツをテストしているのである。通常、ルーキーはテストで「MotoGPクラスの1年生」として、最高峰クラスを戦う1000ccMotoGPマシンの順応に尽力するものだ。

 アコスタが公式テスト初日に新パーツを搭載したマシンを走らせたのは当初からの予定だったのか、あるいはアコスタの高い適応ぶりに、「ならば」とKTMが新パーツへの「評価」を期待したのか……。いずれにせよ、こうした状況からも、アコスタが着々とモンスターマシンを手懐けていっていることが窺える。

 当然というべきか、テスト後に行われた囲み取材では、多くのジャーナリストがアコスタを取り囲んだ。

 アコスタは、パーツテストについて「(新しいパーツのテストが)できてうれしかったよ。彼ら(KTM)がそれを望んだからね」と語りながらも、あくまで今は、自分をいかに向上させるかに注力している、と言った。

「でも、僕はそういうことをあまり考えていないんだ。今のところ、(パーツテスト、開発は)僕の仕事ではないからね。僕は、毎日成長することに集中している。そして、MotoGPマシンに乗るたびに何かをよくしようとしているんだ」

「ペースもよくなってきている。ペースというのは僕にとってすごく重要なんだ。シェイクダウンテストの2日目、だいたいのレースペースである2分00台のペースを刻んでいた。そして今は、1分59秒を切っている」

 じつに地に足のついたコメントだ。アコスタにとって、2番手タイムはさほど重要なことではないようだった──繰り返すようだが、テストでは順位が大きな意味を持たないとしても。

「コース上で遭遇したライダーについていったよ。でも、彼らは僕を引き離していった。だから、誰かの後ろであまり走っていないんだ。でも、ジャック(・ミラー)やアプリリアの後ろについて走れてよかったよ。誰かの後ろで走るときに、風がどう影響するのかを理解するためにね。それについてはいろいろと聞いていたから。ラインよりもそれを知りたかった。というのも、ほかのメーカーとガスガス(KTM)では、ラインがかなり違っているからなんだ」

 アコスタはMotoGPクラスにおけるレースウイークに何が必要なのかを学びながら、それに向けてテストを走っている。それはつまり、チャンピオンシップを戦うために必要なことを、堅実に行っているということでもある。アコスタのテストに取り組む姿勢を見ていると、気が早いかもしれないとしてもこう言いたくなる。「彼の活躍が楽しみだ」と。

公式テスト初日の5日午後は、新パーツのテストにも携わった
シェイクダウンテストでは、テストライダーのダニ・ペドロサの走りから学ぶこともあったという
公式テスト初日終了後、囲み取材でジャーナリストからの質問に答えるアコスタ

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