中国における「愛国ビジネス」はもううまくいかないかもしれない―シンガポールメディア

3日、シンガポールメディア・聯合早報は「中国の新たな経済状況の下で、愛国を利用したビジネスがうまみを失っている」とする記事を掲載した。

2024年2月3日、シンガポールメディア・聯合早報は「中国の新たな経済状況の下で、愛国を利用したビジネスがうまみを失っている」とする記事を掲載した。

記事は、中国のネット上に「戦馬行動」というIDの人物がおり、以前から情報や画像の切り取りによって企業を日本や外国のスパイと結びつける書き込みによってトラフィックを集めてきたと紹介。最近では江蘇省南京市のショッピングモールを標的にし、商店のガラスに日本の旭日旗が掲げられている主張したが、「旭日旗」が普通の赤い装飾の一部を拡大したものに過ぎなかったことを他のユーザーに暴露され、ネットユーザーのみならず中国の官製メディアからも「このような行為は愛国的ではなく、国にとって有害である」「合法的でコンプライアンスを遵守する企業に故意に手を出し、正常な経済秩序と社会生活を混乱させた者を処罰しなければならない」との批判を浴びたとした。

また、「戦馬行動」のような事例はネット上で後を絶たないとした上で、その背景として、インターネットが長きにわたり「トラフィック至上主義」というゆがんだ傾向にあり、センセーショナルで対立をあおるような映像や文章によってアクセス数が稼げ収益が得られる状況にあること、従来型メディアの衰退に伴いショート動画プラットフォームが発展する中で低質なセルフメディアが増殖していることを挙げた。

さらに、「中国当局にも責任がある」とし、ここ数年、中国政府が展開してきた「戦狼外交」を見て多くの市民がこれを模倣し、かつ政府が一部の過激な言論を黙認してきたことも問題だと指摘している。

記事は、一連のトラブルにおいて企業が自らの正当性を主張する一方で圧力を受けたことで問題の装飾の撤去を余儀なくされていると紹介。「フーリガニズムの前ではやむを得ない。当局から圧力を受けたケースもあるし、事態が拡大して大きな損失を被るリスクもあるのだから」と同情した上で、このまま「戦馬行動」のような連中にネット世論を支配させれば、企業経営や市民の消費を含む中国のビジネス環境に悪影響を及ぼし、外国からの投資がますます遠のく可能性があると指摘、今後中国当局がこのような「愛国ビジネス」を鎮静化させる行動に出ることが予見されるとした。

その一方で「ただ、鎮静化させるだけでは問題解決にはならない。もし本当に純粋な愛国心から『戦馬行動』のような主張をする者がいたら非難すべきなのか、非軍国主義的な日本的要素でディスプレイする店があったらそれは許容の範囲なのか、日本や米国などとの関係はどうあるべきなのか、といった問題を、しっかりと考える必要がある」と指摘した。(翻訳・編集/川尻)

© 株式会社 Record China