トリニータの社会貢献活動、成果を「見える化」 大分FCと帝京大が実証実験【大分県】

大分トリニータのホーム戦会場に設けられたSROIの検証ブース=昨年9月、レゾナックドーム大分

 サッカーJ2の大分トリニータを運営する大分フットボールクラブ(FC)は、帝京大経済学部経営学科の塚本拓也准教授(39)の研究室などと共同で、クラブの社会貢献活動の成果を貨幣価値に置き換えて「見える化」する実証実験に取り組んだ。昨年9月のホーム戦イベントを調べた塚本准教授は「かかった費用の15倍以上となる3千万円相当の社会的収益があった」との分析結果を示した。

 調査は▽古着回収の益金で購入したワクチンを発展途上国に届ける「古着deワクチン」▽ユニバーサルスポーツ体験▽世界の体操体験▽海洋ごみ対策を学ぶ―が対象。いずれも県外企業などと実施した。参加者や主催者の満足度、対価などを聞き取り、社会貢献活動を貨幣価値に換算する「SROI(社会的投資収益率)」の手法で算出した。

 その結果、参加者(301人)に提供した価値総額を60万円、主催者側のブランドイメージ構築や協働による関係強化などの直接的効果を計870万円と見積もった。インターネットを介した事前告知、結果報告などを広告換算した間接的効果(約2150万円)と合わせ3024万5980円相当の効果があった。

 総費用(約199万5千円)に対するSROI値は15.16倍で、効果が費用を大きく上回った。

 SROIによる社会貢献活動の検証はJ3の松本、今治などで実施しているもののまだ少ない。塚本准教授は「評価を数値化することでチームと協働する団体が増え、活動の幅が広がる。サポーターやステークホルダー(利害関係者)も成果をより実感できるようになり、つながりが強くなる」と期待する。

 Jリーグは地域密着の理念に基づき、J1~J3計60クラブが教育や健康、まちづくりなど幅広い地域課題に地元企業・団体や行政と一緒に取り組む社会連携活動「シャレン!」を進めている。一方で、評価は「社会に貢献した」という感覚的な受け止めにとどまり、可視化されていないのが現状だ。

 大分FCの水島伸吾事業推進本部長(45)は「数値的にも大きな成果を上げていることが分かった。ステークホルダーとともに積極的に活動を推し進めたい」と話した。

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