「FFVII リバース」野村哲也氏インタビュー:新たに描かれるキャラクターや世界観を聞く

スクウェア・エニックスから2024年2月29日にPS5にて発売予定の「ファイナルファンタジーVII リバース」(以下、「FFVII リバース」)。同作のキーマンとなる野村哲也氏(「FFVII リバース」クリエイティブ・ディレクター)へのインタビューをお届けする。

なお、同時に今回の試遊範囲のプレイレビューと、浜口直樹氏、北瀬佳範氏へのインタビューも掲載している。ぜひそちらもあわせてご参照いただきたい。

野村哲也氏

■オーダーに対して、ハマる演技をしてくれた声優さんらにも助けられた

――オリジナル版の「FFVII」から27年が経ちましたけれども、キャラクターデザインやグラフィックスのアップデートについて、オリジナル版と比べてどのような工夫をされましたか?

野村氏:映像作品の「FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN」(以下、「FF7AC」)を制作していたことで、かなりやりやすくなっていたと思います。キャラクターをリアルに表現するには、という点に関しては、「FF7AC」の時にかなり試行錯誤してできていましたし、ファンの方々も受け入れやすい土壌ができていたと思います。なので今回の「FFVII リメイク」シリーズに関しては、何の心配もなく出来ましたね。今となっては、恐らく「FFVII リメイク」シリーズのほうが「FF7AC」よりもキャラクターのクオリティは上がっているのではないでしょうか。

画像は「FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN COMPLETE 4K REMASTER」より

――確かに、「FFVII リメイク」シリーズのクラウドの表情とかには本当にハッとさせられることが多いです。

野村氏:キャラクターの演技とか表情とかそういうものに関して、今作の「FFVII リバース」は「FFVII リメイク」よりもさらに向上していると思います。その辺りはスタッフが「FFVII リメイク」から引き続きやっているというのもあって、技術力が向上していますね。

あと、「FFVII リバース」はストーリーが「FFVII リメイク」よりも「FF7AC」寄りのエモーショナルな出来事が多い内容になっているので、よりキャラクターの描き方は豊かになったかなと思っています。

――クラウドは「FFVII リバース」では5年前と現在とで色々と描く面が変わっていきますが、「FFVII リバース」のクラウドだからこそ意識した点はありますか?

野村氏:モデルは当然5年前と現在とでちょっと変えていたりしますが、一番大きいのはクラウドの声優・櫻井孝宏さんの演技ですね。

先ほども申し上げた通り、「FF7AC」で培ってきたものがすごくあったのですが、それ以降さまざまなタイトルでクラウドが登場しています。櫻井さんには、これらのタイトルでずっとクラウドを演じていただいているんですよね。それもあって、この複雑なキャラクターを熟知していただけていますし、こちらのオーダーに対して、出してくれる演技がすごく、はまるんです。なので、櫻井さんの力も大きいと思います。

――前回のインタビューで、「『FFVII リメイク』では意図的に格好良くて格好悪い、くすっとできるようなシーンを入れていた」というお話でしたけれども、本作で描かれるクラウドの側面で注目して欲しい部分はありますか?

野村氏:5年前のクラウドと、現在のクラウドとの違いというのが分かりやすいとは思いますが、相変わらずクラウドは格好つけているようで格好悪いんで(笑)、そこは引き続き変わりません。

クラウドはティファとエアリスの間でドギマギしている存在ですし、最初にも言いましたけれど、今回の「FFVII リバース」にはエモーショナルなお話が多いので、クラウドの感情の強弱っていうのは、かなり激しく表現されています。

少し前に発表されたトレーラーでも、クラウドが「ティファー!」と叫んでいるシーンがありましたけれど、そのシーンだけでも「あんなに必死になっているクラウドは見たことがない」という声がありましたし、クラウドが運命に翻弄されていく姿っていうのは、今回でより濃く描けているのではないでしょうか。

――ティファはいかがでしょう。注目して欲しい部分はありますか?

野村氏:ティファは見た目と違って、本心をグッと奥に隠す女性ですから、「FFVII リバース」ではどうしても耐える姿が多くなりますね。

そんなティファの奥底にある悲しみは、今回の「FFVII リバース」で描かれます。彼女がどういう立場及び立ち位置でクラウドに関わっているのかという部分は「FFVII リメイク」ではそんなに分からなかったと思うんですけれど、今作でよりティファの立ち位置が見えてくると思います。

――ティファと言えば、猫を飼っている話が出てきましたね。

野村氏:あれは多分、野島さん(野島一成氏)の趣味ですよね(笑)。ティファが小説「Traces of Two Pasts」の中で猫を飼っていて、ニブルヘイムの事件が起きた時にティファが愛猫を抱えてずっと隠れていたという描写があるんですよね。

最近では野島さんはX(旧Twitter)にいつもモルモットの写真をアップしていますけれど、当時確か「猫が飼いたい」と話していた気がするんですよ。そういう思いもあったんじゃないかと思います(笑)。

――あら、野村さんも猫飼われているんですね。

野村氏:はい、飼っています(笑)。

――ティファの部屋にキャットタワーとかもあって、猫ちゃんへの愛情を感じました……。そういえばティファが割と早々に「5年前クラウドはいなかった」と言い出すのもちょっと驚きました。オリジナル版のティファとはちょっと描き方が違うのかな、とも思ったのですが。

野村氏:本質的にはティファは変わっていなくて、今回は物語を動かすために少しタイミングを変えたり、オリジナルで描いていなかった場面が描かれたりもしています。あのトレーラーでの言葉も誰に語ったものなのかは本編で確認していただければと思います。

クラウドとティファの物語の根幹に来るのはニブルヘイムのことになるんですが、今回はその出来事も描かれますし旅の中で心情を推し量ってもらうために、ふたりの関係性も奥行きのある描き方になっています。

――ではセフィロスについてお伺いしたいと思うんですけれども、セフィロスは常にその背を追いかけるような目標のような立ち位置になるのでしょうか。

野村氏:セフィロスはオリジナル版よりも圧倒的に登場場面が増えています。ティファ同様にニブルヘイムの出来事に起因しますが、それが描かれることによって、より深く人物像が見えて来ます。オリジナルにないシーンがセフィロスには多々ありますし、オリジナル以上に彼の存在が浮き彫りになると思います。

今回、クラウドもそうなんですけれど、5年前のセフィロスと現在動き回っているセフィロスではほぼ別人くらいキャラが違いますが、そこは森川智之さんが長年演じてくださっているので、もう勘所としてかなりセフィロスというキャラクターを分かってくださっていたのが、本当に細かい表現とかもしてくださって、こちらとしても非常に助かりましたね。

――セフィロスという存在を知っていても、思わずゾクっとする演技がたくさんありました。

野村氏:ちなみにセフィロスは、オリジナル版だと逆に得体のしれなさっていうのが一種セフィロスの怖さになっていたんです。ずっと追ってはいるけど、どんなやつなんだっていうところを重視していたんですけれど、今回は登場場面が増えたことで、得体のしれなさから、徐々にセフィロスはもっと狂言回し的な存在に寄ったと思います。

――セフィロスはそんなに登場場面が増えているんですか?

野村氏:そうですね。今回、「FFVII リメイク」以上に登場シーンが多いです。操作もしますし、至る所に出てくるので。

――確かにそうなると、得体がしれないという感じではなくなりますよね。

野村氏:セフィロスの怖さっていうのは、僕は失いたくないんですよ。あんまりにも普通に登場して、プレイヤーの皆さんがセフィロスに何も感じなくなっちゃわないようにというのは、すごく気にはしています。

今回は過去のセフィロスが出ますが、オリジナル版をプレイされている方ならセフィロスがどういう風な存在かは知っているでしょうけれど、今作から入られる方や「FFVII リメイク」から入られてきた方に、セフィロスは何なんだというのがある程度わかるものが「FFVII リバース」でもありますから、そこを丁寧に描くっていうのは一番気をつけていたところですね。

過去の意外なセフィロスの一面も含めて、セフィロスが現在こうなってしまったところだとか、とにかく怖さは常に自分の中では重視しているところです。

――なるほど……。ところでこれはすごく気のせいかもしれないのですが、グリンを見た瞬間「植松さん(植松伸夫氏)……?」と思ったくらいだったんですけれど、カメオ出演されているとかではないですよね?(笑)

野村氏:それは気のせいですね(笑)。

――ですよね(笑)。

グリン

■ジュノンが共和国という設定になったのは……

――では世界設定の方についてですが、ジュノンが共和国だったという設定は本作で初めて出てきたかと思うんですけれども、世界設定が他にオリジナル版と変わっている場所はありますか?

野村氏:まだ世に出ていないところが「FFVII リバース」の中でも当然ありまして、3作目に回したウータイだとかは結構変わっているんですね。

神羅の強大さというのは「FFVII リメイク」の中である程度伝わっていると思うんですが、神羅に対抗していたウータイとは一体どんな国なのか、神羅と対抗し得るほどの力を持っていたという部分はしっかり描かないとな、ということもあって、説得力があるようにするために3作目に回しているんですけれど、実はジュノンの設定とかも全てそのあたりに紐づいています。

――なるほど。唐突に湧いて出た設定というわけではないんですね。

野村氏:この辺は野島さんが、ジュノンが共和国的なものじゃないとお話にリアリティが出ないとか、こことここの関係性がこうじゃないととか、色々悩まれていましたね。ゲーム自体がディティールが上がってよりリアルに見えてきたことや、オリジナル版ではそんなに触れていない部分とかをちゃんと設定しないと、整合性が立たないんですよ。世界の構造をリアルに設定した一環が今回のジュノンでもあります。

――「FFVII リメイク」と「FFVII リバース」とは直接関係はないのですが、先ほども少し話題に上がっていました「FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN COMPLETE」が2週間限定で劇場公開されている真っただ中ですが、19年経っての劇場公開になりましたね。まさかの劇場公開で驚きました。

野村氏:僕もびっくりして、「なんで?」となりました(笑)。2020年に「FFVII リメイク」が出て、その1年後の2021年に「FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN COMPLETE 4K HDR REMASTER」が発売されたんですよね。僕は今頃上映してもお客さんもあまり入らないんじゃ、くらいの気持ちだったんですけれど、想像以上に皆さん喜んでくれていたので、「なんで?」と(笑)。

――私は札幌在住なんですが、札幌の劇場もとてもにぎわっていましたよ。やはりファンの皆さん、大きなスクリーンで見たかったんだと思います。

野村氏:そうなんですね。こんなことならもっと大々的に施策もして、上映していればよかったかなと。本当に、こんなに反響があると思っていなかったので。

「FFVII リメイク」から入ってきてくださった方には微妙にネタバレしているんですけれど……そこがちょっと心配ではありましたね。でもこんなに喜んでいただけて、良かったです。

画像は「FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN COMPLETE 4K REMASTER」より

――では最後に発売を待ちわびているファンにメッセージをお願いいたします。

野村氏:「FFVII リメイク」から何年もかかりまして、大変お待たせしました。オリジナル版の頃からずっと追ってくださっているファンの方もいらっしゃいますし、「FFVII リバース」から興味を持ってくださった方もいらっしゃいますし、入り口はそれぞれ違っても、「FFVII リバース」は楽しんでいただける内容になっていると思います。

今回の「FFVII リバース」は広大なワールドマップをいかに楽しんでもらうか、自由に自分なりの楽しみ方を見つけてもらうかというところに、重点を置いており、ここから新しい遊びが始まるでしょう。

まだ「FFVII」を知らない方や、ちょっと興味を持ってくださる方も、「FFVII リバース」からプレイしていただいても大丈夫なようになっておりますので、ぜひ遊んでいただけると嬉しいです。

ストーリーとしても、オリジナル版を知っている方も「この先どうなるの?」となるようなストーリーになっています。なので、そこはオリジナルのファンの方も、「FFVII リメイク」シリーズから入ってきた方も、同じように楽しめるはずです。色んな方に触れていただきたいので、よろしくお願いいたします。

――ありがとうございました。

(C) SQUARE ENIX CHARACTER DESIGN: TETSUYA NOMURA / ROBERTO FERRARI LOGO ILLUSTRATION:(C) YOSHITAKA AMANO


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